エルフが魔法の歴史を語る #2

「君は、仕事を探しにいくのかい?」


アイリシアの問いに、僕は現実へと引き戻される。


「はい。とりあえず、いくつかお店を回ってみようかと。ところでこの街に、仕事を斡旋してくれるような場所はありますか?」


昨日のアイリシアの話ぶりからして、そこまでの施設は望めそうにないが、駄目元で尋ねてみる。


この世界で金策といえば、まず思い浮かぶのは冒険者ギルドだ。

クエストの達成報酬や、討伐したモンスターの素材売却が主な収入源となる。

しかし、剣を握ったこともなく、魔法も使えない僕にとって、それはあまりに縁遠い世界の話だ。


前の世界では営業職に就いていたが、足で稼ぐような時代ではなかったこともあり、飛び込み営業の経験はない。

それでも、店に入って話を聞くくらいはできるだろう。


一番の期待は、昨日足を運んだ「なーまんのだいどころ」だ。

あれだけ大きな店であれば、働き口の一つや二つ、あるかもしれない。

電卓もレジもないこの世界で会計を任されるのは荷が重いが、商品を棚に並べるような裏方の仕事なら、僕にもできるはずだ。

あるいは、外商のような仕事があれば、前の世界の経験も少しは役に立つかもしれない。


たとえ「だいどころ」が駄目でも、町は寂れつつあるとはいえ、まだ他にも店は残っている。


問題は、求人の張り紙があるわけでもなく、そもそも人手を欲しているのかどうかすら、外からでは窺い知れないことだ。

だからこそ、ハローワークのような施設があれば、そこへ行くのが職を得る一番の近道だろう。


「職を探すなら、商工会議所へ行ってみたらどうだい? 何かあるかもしれない」


商工会議所は初めて耳にする言葉だ。


しかし、アストラル・オーブの中で、商業ギルドの存在は語られており、おそらくその関連施設なのかもしれない。


この世界には冒険者ギルドと商業ギルドという二つの大きな組織があり、それぞれが強い影響力を持っている。

農業や漁業、鍛冶といった専門ギルドも存在するが、先の二大ギルドに比べればその規模は小さい。


ギルドの中でも商業ギルドは、他のギルドが生み出す産物を一手に引き受け、流通を司るため、その権威は絶大だ。


その商工会議所が商業ギルドの関連施設なのだとすれば、職業を斡旋する窓口が設けられている可能性はある。


「何かあるかもしれない」という彼女の含みのある言い方からして、過度な期待は禁物だということも伝わってくるが、他に当てのない僕にとっては十分すぎる情報だ。


「ありがとうございます。行ってみます」

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