この世ならざるものを見る #2

僕は手提げ袋から買ってきた食材を取り出し、次々とテーブルの上に並べていく。


「まあ、驚くのはまだ早いよ」


僕の心を見透かしたように、アイリシアが少し悪戯っぽく微笑む。


「何か手伝えることはありますか?」


僕が尋ねると、アイリシアは「いや、ないね」と即答する。

あまりにそっけない返事に虚をつかれ、言葉に詰まる僕を尻目に、アイリシアは手際よくエプロンを身に着ける。


僕は諦めて、ダイニングの椅子に腰を下ろす。


アイリシアは棚から皿を二枚取り出し、キッチンの調理台に置く。


「危ないから少し離れていたほうがいい」


不穏な警告と共に、彼女は肉の包みを開く。


彼女は肉塊に向かって裏表に塩コショウを強めに振った後、掬い上げるように手をかざす。


ふわり、と肉塊が宙に浮く。


まるでダンスを踊るかのように、空中でくるくると回転を始める。


「これはスフィア・エアロだよ」


アイリシアがこともなげに言う。


その次の瞬間、猛烈な炎が目の前に立ち現れ、僕は文字通り椅子から転げ落ちる。


燃え盛る炎の球体の中で、二つの巨大な肉塊がくるくると回り続ける。

先ほどの優雅なダンスから一転し、逃げ場のない業火の中で必死にもがいているかのような地獄絵図だ。


しばらくして炎がふっと消えると、そこには完璧な焼き加減のステーキがステーキが現れる。


表面は香ばしく焼け、肉汁が静かに滴りそうだ。


アイリシアはゆっくりと手を下げ、ステーキをそれぞれの皿の上に見事に着地させる。


「ふふ、驚いたかい?」


尻餅をついたままの僕に、アイリシアが悪戯っぽく笑いかける。


驚きすぎて、声も出ない。


その後は買ってきた付け合わせの野菜も同じように魔法で調理をする。

野菜は回転するうちに手際よく一口大にカットされ、次に現れた水球の中で踊るように洗われると、その水はアロー・ハイドロとして流し台に射出される。

そして、先ほどよりはいくぶん穏やかな炎の中で、あっという間に火を通される。


本当に瞬く間に、豪華なステーキが完成する。


確かに僕が手伝う余地など、どこにもない。

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