エルフにアストラル・オーブを語る #6

「次にガレイドが狙うのは、コンバージ・ジェムです」


コンバージ・ジェムは、ごく小規模ながら属性極を発生させ、周囲の属性の流れを強制的に収束させることで、あらゆる属性効果を無効化する力を持つ。


ユーラがこの地を分け隔てる際、その影響で大きく乱れた属性の流れを整えるために、ミタスから与えられたアイテムだ。


ガレイドは当初、「ユーラから神託を受けた」という大義名分を掲げ、教団からコンバージ・ジェムを穏便に入手しようとする。


だが、教団内部の内輪揉めにより、交渉は決裂。


結局は強奪という強硬手段に出る。


そしてユーラ教団の施設内で、モフモフとガレイドは激突する。


コンバージ・ジェムにより、こちらの魔法やスキルが次々と無効化される特殊状況下での戦闘だ。


プレイヤーのジョブによって戦術が大きく変化するのだが、特にメイジなどの魔法職にとっては地獄のような戦いとなる。


大抵のプレイヤーは戦闘職にジョブチェンジして戦う。


でもその代わり、魔法職でこの戦闘を乗り切るとアチーブメントが解放され、属性効果全体に五パーセントのボーナスがつく恩恵を受けられる。


そしてここでも、モフモフはガレイドを取り逃がしてしまう。


二つのホーリー・レリックを手に入れたガレイドは、ついに螺旋階段の入口の結界を破り、奈落へと降りていく。


「そこでモフモフは、女神エステラから『セレスティアル・アイ』という能力を授かり、その力でガレイドを追跡することになります」


「セレスティアル・アイ……。なんだいそれは?」


「モフモフはオムニ・ガイドを持っていないので、螺旋階段の入口の位置を知ることができません。その代わり、ガレイドを追跡することで場所を特定するんです。そのために与えられた力で、星々の視座から目標を見つけ出す、というものです」


ゲーム的には、マップ上にガレイドのマーカーが表示されるだけの機能だ。


教団施設を出た後しばらくはマーカーが移動するのだが、ある時点から動きがピタッと止まる。


止まっている間も、プレイヤーは自由に行動できる。


いくらクエストをこなそうが、モンスターを乱獲しようが、プレイヤーが追いつかない限り、ガレイドがアストラル・オーブを奪うような狼藉は働かない。


アイリシアは低く唸る。


「その話は初めて聞くよ。その力は、エステラ様の神託を受けた者だけが知り得るものなのだろうね」


「おそらく、その通りだと思います」


アイリシアは深く息を吐く。


「それを君が知っているというのは、どうにも釈然としないものがあるね」


「あくまで、僕が知る物語の中での話、ということです」


「いや、それはわかっている。わかっているけど……君の話はどうも本当のことにしか思えないんだ」


アイリシアは、カップに残っていた冷めた紅茶を静かに飲み干す。


そして僕のカップに視線を落とし、「もう一杯飲むかい?」と穏やかに尋ねてくる。


「はい、いただきます」


僕はカップの底に残っていた最後の一口を飲み干す。


彼女はテーブルに鎮座する銀色のポットへ、そっと手を伸ばす。


指先が滑らかな表面に触れ、一瞬静止した直後、ポットの注ぎ口から、ゆらりと白い湯気が立ち上る。


魔法で温め直したのだ。


ゲーム本編では描かれることのなかった生活のディテール。


こんな些細な日常にまで魔法が息づいていることに、僕は新鮮な驚きを覚える。


アイリシアは僕のカップに、熱を取り戻した紅茶を注ぎ、続けて自分の分も満たしていく。


芳醇な香りが、再びあたりに漂う。


「話の腰を折るようだけど」


彼女が切り出す。


「昔から、神話にはどうにも不可解な点があると感じていてね。特に、転生に関することなんだけど……」


その言葉は、僕の興味を強烈に惹きつける。

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