雪に埋もれた魔法のランプ

夕日ゆうや

雪に埋もれた魔法のランプ

 この世には魔法のランプというものがある。


 その人の願い事を叶えてくれるというランプだ。


 だが、その所在は今も分からないままだ。


「くくく。ここに例のランプがあるというのだな?」


「はい。最新式のハイブリッドお茶目AIストリップハイパーアストラルレーダーがありますから」


「くくく。それはお前が開発してくれたからな。俺様の願いを叶えたさいにはお前にも褒美をやろう」


「ありがたき幸せ」


 部下一号はペコリと恭しく頭を下げる。


 船が南極大陸に横付けすると、俺様たちは一気になだれ込む。


「野郎ども、さっさと見つけるんだ!」


 俺様は子分どもに言い聞かせる。



◇◆◇



「おかしら! なにかありますぜ!」


「おう! よこせ。……ってお前は?」


「僕はコマリ! さらっていくぜ!」


 コマリはそう言うと魔法のランプをかっさらおうとする。




 が、俺様の敵ではない。


「がたいの良さでは俺様が上だ。それにランプは俺様を求めている!」


 そう言って俺様はコマリから奪う。


 その膂力でコマリを樹木に叩きつける。


「いててて。あっ」


「子分ども、こいつを縄でつないでおけ!」


「ははっ!」


 俺様は魔法のランプを手にし、ニタニタと笑みを浮かべる。


 俺様は船へと戻る。


 しかし、どうやってランプの魔人を呼ぶことができるのか。


 文献によると、磨くといいらしい。


 俺様も試しに磨いてみる。


 するとどうだろう。


 もくもくと煙りと一緒に魔人が現れる。


「おお。あんたが魔人か!」


『そうだ。何か願い事を叶えてやろう』


「天下統一! 俺様の世界にしたい!」


『よかろう。そなたの願い叶えよう』


 魔人が声を張り上げると、世界の絶望の声が聞こえてくる。


「こ、こんなの!」


 コマリが悲鳴を上げる。


「こんなのってないよ! まるで命をすりつぶす音じゃないかっ!」


 コマリのいう音は聞こえぬが?


 俺様はふんぞり返り、子分に言う。


「ようし。俺様の国へと戻るぞ」


「「「ははっ!」」」


 子分どもが従うと、俺様は西にある拠点へと戻る。


 一ヶ月も船旅をしていると陸が恋しくなるな。


「さあ、どうだ?」


 入港した瞬間、矢が飛んでくる。


「オデロは帰れ!」


「ちっ。まだ俺様を敵とみなすか!」


 オデロ、俺の名を知っておいてむざむざ殺されにきたか。


「魔人よ。あいつを殺せ!」


「あいよ」


 魔人はそのふわふわな煙りで相手を窒息させる。


「そんな――っ」


 コマリは絶望の声を上げる。


 子分達もなにやらざわついている。


「何をしている貴様ら。ここからさらに歩くんだぞ!?」


「おれたちはいったいいつまで働き続ければいいんだ!」


「こんなのっておかしいよ!」


 そこからは一変、俺様の魔法のランプを奪い合うことになった。


 俺様は巨漢を活かし、相手にボディアタックを食らわせる。


 吹っ飛んだ子分が他の子分を巻き添えにする。


「ははは。裏切るやつはみんなこうだ!」


 そう言って魔人に耳打ちをする。


「了解」


 魔人は感情のない声でぎろっと睨む。


 周囲にいた子分が死んでいく。


 そうして反発する者は一人残らず消していく。


 俺様はそうして生きてきた。


 これまでも。これからも。


 俺様が一番なんだ。


 俺様が一番正しいんだ。


 それを証明するために力が必要だった。


 そして俺様は見つけた。


 魔法のランプの魔人を。


 これで、もう俺様の時代だ。


 すべてが俺様の者だ!




「魔人よ。ずいぶんと静かじゃないか?」


「ええ。残りはあなた一人です。他は全員殺しました」


「……そんなバカな……。俺様のメシは誰が作る? 城は?」


「全て自分でなさればいい」


 呆れ返った魔人はもうランプから現れない。


「くそったれ! なんの役にも立たないじゃないか!」


 魔法のランプを叩きつけると、俺様はひたすらに走る。


 俺様は人々から崇められて、メシと踊りを楽しみ、城で暮らすんだ。


 その夢が、途絶える……?





 死した者には口なし。



 だがコマリだけは生き延びた。


 コマリは抵抗もせず、最初に魔法のランプの魔人を呼んだからだ。


「さ。もう分かったろう」


 魔法のランプは永久凍土。雪の下に埋めた。


 雪に埋もれた魔法のランプを見つけるのは難しいだろう。


 コマリは知っていた。


 全てを。


 オデロに魔法のランプが渡れば人類が滅びると。




 もう誰も死んで欲しくない。


 コマリの願いは、ちゃんと魔人に届いていた。


 オデロが倒れる頃、死んだはずの世界中の人々はゆっくりと目を覚ます。




 オデロだけが排除された世界で、僕はまた生きる。


 欲のままに生きるのではなく、欲と一緒に生きる。


 それが僕にとってのだ。

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