第41話 家
私はリビングのソファに座っている。全く落ち着かない。今からサクラが家に来るからだ。サクラには迎えに行くって言ったのに、家で待ってくれてていいって断られちゃった。もしかしたら私が家に上げないかもしれないって思っているのかも。サクラと交際を初めて二カ月経って分かったけど、やっぱりサクラって重いよね。私はそんなサクラも可愛いって感じるけど、多分サクラに自分が重いって自覚はない。これまでサクラの家には何回も行ったけど、私は恥ずかしくてなかなかサクラを家に呼べなかった。サクラは最初のうちは何も言わなかったけど、ついに私の家に行きたいって言い始めた。だから今日、せめてママがいないこの日にサクラを家に呼んだ。ママは絶対に茶化してくるに決まってる。今日はママは朝から友達と出かけるって言っていた。なのに…
「何で家にいるの!」
ママは台所に立ちながら笑いながら答えた。
「別にいてもいいでしょ」
「今日は友達と出かけるんじゃなかったの!?」
「その友達が風引いちゃったから仕方ないでしょ。何?私がいたら駄目なの?」
「…駄目」
まずい。ママは多分もう家から出ない。今からでもサクラに断る?いや、それだとサクラが怒る。私はママにお願いをした。
「ねぇママ。今から今日の夜ご飯のお買い物に行ってくれないかな?」
ママが私を怪しむように見ている。
「そんなに私に家にいてほしくないの?ん?アザミその右手の…」
ママが話している途中にインターホンが鳴った。サクラもう来ちゃったの!?私が出ようとしたけどママが先にモニターを確認した。
「あらぁ!サクラちゃんじゃない!」
ママが嬉しそうにそう言うとそのまま玄関まで行ってドアを開けた。最悪だ。私はリビングのソファから動けないでいた。
ママとサクラはすぐにリビングにやって来た。
「サクラちゃん!ゆっくりしていってね」
「ありがとうございます。あ、これよければ」
「えー、サクラちゃんお菓子まで持ってきてくれたの!別に気を使わなくてよかったのに!」
ママのテンションは見ているこっちが恥ずかしいくらい高い。サクラは私の隣に座った。
「アザミお待たせ」
「サクラごめんね、騒がしい親で」
ママの方を見るとコーヒーの準備をしていた。途中でチラチラこっちを見ていたけど。コーヒーを淹れ終えたママはサクラからもらったお菓子も一緒に机に並べた。
「二人ともこっちに座って座って」
「はい」
サクラはママに言われるがまま机に座った。私も仕方なく机に座った。
「やっぱり椅子はもう一脚買った方がいいかしら」
「別にいいよ…」
だからママがいるときにサクラを家に呼びたくなかったのに。ママは机のそばに立ったまま私たちに話しかけた。
「それで今日は結婚挨拶?」
私は思わず咳き込んだ。サクラの顔を見るとキョトンとしていた。私はすぐにママに強く言い返した。
「だから!ママはなんですぐにそういう話になるの!」
ママは私の右手とサクラの右手を交互に指を指して話を続けた。
「だって、二人は付き合っているんでしょ?薬指のそれってペアリングじゃないの?」
ママに指摘されて私は思い出した。いつもは家では外していたけど、今日はママは家にいないし、サクラが今から来るからって付けていたんだった。
「サクラちゃんもアザミでよかったの?私は嬉しいけど」
「はい、アザミだからお付き合いをしています」
サクラは照れることなくママに向かって堂々と宣言した。それは嬉しいけど。ママの方を見るとニヤニヤしていた。
「サクラちゃん、どっちから告白したの?」
「アザミからしてもらいました」
「サクラは何でも答えなくていいから!」
ママからの質問になんでも答えるサクラに私は赤面しながら注意をした。ママは嬉しそうな顔をしていた。
「アザミもよかったわねー。高校生の時から好きだった子とお付き合いできるなんて」
「もう!余計なことは言わなくていいから!」
私がママに言い返していると隣でサクラが私のことを見ていた。
「サクラ?どうしたの?」
「アザミって高校生のときから私のこと好きでいてくれたんだ、嬉しい」
サクラがあまりに可愛い顔をして言ってきたから、私は照れてしまった。
「ちょっとママはケーキでも買ってくるわね、サクラちゃんそれまでゆっくりしてくれてていいからね」
「そんな、ありがとうございます」
私は少しでもママが外出してくれることに安堵した。するとママはまたニヤニヤしてきた。
「私、一時間くらい帰ってこないから、アザミの部屋でならしててもいいわよ」
「え…」
サクラは顔を赤くしていた。私はママの言っている意味を理解し強く言い返した。
「ここではしないよ!」
私の言葉を聞いてさらにママはニヤけた。
「ここでは、ってことは、既にしてるのねー」
「あ…」
自分の失言に気付いて私も赤面した。黙ってしまった私とサクラを見てママは元気よくリビングのドアを開けた。
「じゃあ行ってきまーす」
しばらくして玄関の鍵がしまった音がした。私はサクラの顔が見れず、下を向いたままサクラに話しかけた。
「サクラ…その…騒がしい親で本当にごめんね」
するとサクラの右手で顔を上げさせられた私はそのままサクラに唇にキスをされた。私の唇からサクラの唇が離れると、私は思わずサクラに大声で言ってしまった。
「ここでするの!?」
サクラはいつもの口調で言葉を返した。
「ううん、しないよ。でも、キスは我慢できなかった」
「…そうなんですね」
私は恥ずかしくなって下を向いた。サクラは私の左手の上に自分の右手を添えてきた。私はサクラの顔を見るとサクラは真剣な顔をしていた。そしてサクラが口を開いた。
「アザミ、さっきアザミのお母さんが結婚挨拶って言ってたでしょ。私、アザミとは結婚もしたいって思っているよ」
真剣に私のことを見るサクラに私は照れてしまった。
「こんな時にプロポーズしないでよ…」
サクラは少し笑って私に言った。
「本当のプロポーズの時も私からするから待っててね」
「…待ってる」
サクラは再び私の唇にキスをした。私は付き合ってからもサクラには振り回されてばかりだな。でも、毎日が幸せ。あのとき海で、私の自分勝手な考えでサクラに二人でもっと楽しい思い出を作ろうって言ってしまったけど、今ではサクラと楽しい思い出がたくさんある。これからももっとサクラと二人で楽しい思い出を作っていくんだ。
アネモネは何色に染まる ぜんざい @zenzai-448
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