第36話 天満宮④
サクラがまた足を止めた。
「あ、有名なカフェだ。ここにもあるんだ。パフェ美味しそう…」
サクラが私の顔を見た。
「サークーラー」
「アザミ、一緒に食べよ?」
サクラはまたしても訴えるような目をしてきた。だからその顔で訴えてくるのは反則だって。
「…二人で一個ならいいよ」
「本当?やった!」
サクラは足早に店内に入り、抹茶生チョコパフェを一個注文してから、私たちは席に座った。
「アザミ私お手洗い行ってくるね」
「いいよー」
アザミは店内のお手洗いに行った。私は店内を見渡した。落ち着いた雰囲気の内装だな。私の気持ちも自然と落ち着く。今日のサクラは参道スイーツにはしゃいでいる。前までの私だったら、今日はすごく苦しくなってたんだろうな。いや、それにしても今日のサクラは私のことを振り回しすぎだよ。しばらくサクラを食べ歩きに誘うのはやめよう。今日も食べ歩きには誘ってないけど!考え込んでいるとサクラが戻ってきた。
「アザミごめんお待たせ」
「私は待ってないよ、まだパフェも来てないし…」
「お待たせしました、パフェはこちらに置きますね」
店員さんが注文した品を机に置いた。
「サクラタイミングバッチリじゃん」
「アザミ美味しそうだね」
私は机に置かれたパフェを見た。
「そうだね。でもでかくない?二人で一個にしててよかったね」
「アザミから食べる?」
「サクラから食べていいよ。私は残った分でいいよ」
「ありがとう!いただきまーす!」
サクラはパフェを食べ進めた。パフェにはたくさん抹茶の生チョコが乗っている。あ、抹茶アイスもあるんだ。生クリームも添えられてる。下には抹茶のゼリーがぎっしり詰まっているな。その上にあるのははバニラアイスかな。流石にいろいろ食べた後に一人でこのパフェを一個食べるのは無理だよね。
「美味しい!」
サクラは笑顔でパフェを食べていた。前からまたカフェに行きたがってたもんね。
「アザミ、はい」
サクラはスプーンでパフェをすくってそのまま私の口元に近づけた。嘘でしょ、まさか…
「サクラ、私はこっちのフォークで食べるよ。それにサクラが食べたい分だけ食べてからでいいから」
私がフォークを手に取ろうとすると、サクラは私の手を静止して、拗ねた顔をしながら私を見てきた。
「…アザミさっきもあーんで食べてくれなかった」
「あーんは恥ずかしいよ!」
「はい」
サクラは私の口元からスプーンを動かそうとしなかった。さっきから私に拒否権がないな…もう食べるしかない…私はそのままパフェを食べた。
「美味しい?」
「…美味しいです」
「よかった!」
サクラは満足して笑顔になった。本当に美味しいけど、それ以上に恥ずかしい…すると再びサクラがパフェをすくってスプーンを私の口元に近づけてきた。
「はい、アザミ」
「サクラ!?」
「アザミの分は全部私が食べさせてあげる」
私はサクラのあーんからしかパフェを食べれないの!?
「アザミー」
サクラの手は微動だにしない。
「分かったから!食べるから!」
やっぱり一人一個にしておけばよかったかも…
私たちは本殿の前にいた。
「なんか風情があるね」
サクラは本殿に見入っていた。サクラの言うとおり、趣深い感じがする。祀られているのは鏡かな?それにしても、やっと本殿だよ。参道でサクラがあんなにはしゃぐなんて思わなかった。ほぼずーっと私と手を繋いでいたし、あーんまでされるし。流石にサクラも境内に入ってからは手を離したけど。やっぱり参道スイーツにテンションが上がっていただけかな。今日はサクラに振り回されっぱなしだったけど、楽しかったな。サクラの笑顔もたくさん見れたし。まるでデートをしてるみたいで…私は自分で思ったことに引っかかった。デート?そっか、私は今日、サクラとデートができたみたいで楽しかったんだ。決めた。次に行きたい場所。
就活祈願を済ませた私たちは改めて境内を歩いていた。
「アザミ!あっちにまた動物の像があるよ」
サクラの指を差した方を見ると確かに像があった。
「サクラ、近くで見てみようよ」
「そうだね!」
私たちは象に近づいた。象は鹿の像と牛の像があった。
「牛の像は夜景を見に行った神社にもあったよね」
サクラに話しかけるとサクラは赤面していた。
「夜景っ!あー、牛の像はあったね」
何で今赤面するの?やっぱり夜景ではしゃいでいたことが恥ずかしいんだ。
「アザミ!あっちに遊園地があるみたいだよ!」
私でもサクラが今、話を逸らしたことが分かった。今日はサクラに振り回されたから少しいじわるをしてもよかったけど、それはしなかった。
「でもここにある遊園地はお子様向けだから、私たちが遊ぶのは無理じゃないかな」
「そうかなー、でも子どもの邪魔になったら駄目だもんね」
サクラは納得して遊園地に向かうことはしなかった。
引き続き境内を散策していると休憩所があったから、私たちはそこで休憩することにした。私たちは置かれていたベンチに腰掛けた。サクラは私に話しかけた。
「菅原道真は私たちの就活を応援してくれるかなー」
「サクラはスイーツの神様にべったりだから菅原道真は助けてくれないんじゃない?」
「えー、じゃあ自分で頑張る…」
サクラが落ち込んでしまった。私は笑って言葉を返した。
「冗談だよ。菅原道真もお菓子が好きだったみたいだし、逆に応援してくれるんじゃない?」
「本当?やった」
私の言葉を聞いてサクラも笑った。私の鼓動が早くなっていくのが自分でもわかる。これは緊張から?それとも怖さから?でも、私は逃げない。私はサクラの顔をしっかり見てから話しかけた。
「…サクラ、明日も空いてる?」
「うん、空いてるよ」
サクラの予定が空いていることがわかり、私の鼓動が更に早くなる。それでも私は言葉を続けた。
「明日も二人でお出かけしようよ」
「本当?いいね!どこに行く?」
サクラが嬉しいそうに笑っている。その顔も今から言う言葉で変わってしまうかもしれない。それでも私は行き先を変えない。
「水族館…」
「え…」
行き先を聞いてサクラの表情が固まったのが分かった。私は構わず趣旨を説明した。
「今度は代わりの人としてじゃなくて、私と水族館に行ってほしい…私とデートをしてほしい」
サクラとちゃんとデートがしたいって思ってから、行き先は水族館以外はなかった。私はちゃんとサクラにデートって言った。私だけが思っていても駄目だから。サクラにも意識してほしかった。他の行き先だと冗談だと捉えられるだろうから。まだサクラからの返事はない。やっぱり駄目?でもここで冗談だよーって、誤魔化したくはない。サクラの反応が怖い…私はサクラの顔を見たまま動けなかった。
「いいよ」
サクラが返事をした。え…今なんて…サクラは改めて答えた。
「アザミ、私とデートしよう」
サクラは真面目な顔をしていた。サクラは深く考えていないんだと思う。それでもいい。サクラもデートだと少しでも思ってくれたなら。明日、私はサクラに自分の気持ちを伝える。
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