第35話 天満宮③

 今日はお互い行き方が違いすぎるから現地集合にしていた。私は今はバスに乗っている。私はいつも通り約束の一時間前に着きそうだった。浮かれるのはいつまで経っても変わらないな。バスが目的地に到着したから、私はバスを降りて待ち合わせ場所の参道前の鳥居に向かった。するとすでにサクラが待っていた。


「サクラ!?」


「アザミー!」


アザミは笑顔で手を振ってくれている。もしかして私、待ち合わせの時間を間違えた?私は急いでサクラの元まで走った。


「ごめん!私時間間違えてた?」


「違うよ!私が早く着いちゃっただけ。あっ、でもさっき着いたばっかりだから全然待ってないよ!」


もしかしていつも私が先に着いていたからサクラに気を使わせちゃったかな。


「アザミ行こ!」 


「うん」


サクラは今日も楽しそう。それにしても…私は辺りを見渡すと参拝客で一杯だった。


「やっぱり人が多いね」


「はぐれないようにしないとね」


「そうだね」


「アザミ、はぐれないようにしないとね!」


サクラは同じ事を一回目よりも大きい声で言った。


「サクラ、聞こえてるよ」


人が多いから私の声が聞こえづらかったのかな。するとサクラは自分の右手を前に出した。


「手、繋がないの?」


なんで!?もしかしてはぐれないように?サクラは全然手を引っ込めないし。これもう私に拒否権ないじゃん。本当にサクラは簡単に手を握ろうとしてくる。


「それじゃあ」


私は自分の左手でサクラの手を握った。


「へへへ」


サクラも私の手を握り返してくれた。サクラはそのまま歩き出した。


「アザミ、せっかく来たし、お餅は食べよう」


「名物だしね」


周りを見ると名物のお餅を売っているお店がたくさんあった。お店が多すぎて、どこで買えばいいんだろう。


「サクラ、どこで買う?」


「どのお店が有名か分からないから一番近いあそこで買おうよ」


「そうだね」


私たちはこの場から一番近くにあったお店でお餅を一個ずつ購入した。購入しているときにサクラは握っていた手を離した。まあ、手を繋いだままだと支払いができないし、お餅も食べづらいしね。私たちはお餅を受け取って店から少し離れた場所で食べた。


「やっぱり美味しいね」


サクラは美味しそうに食べていた。


「うん、美味しい」


私も言葉を返した。お餅は焼き立てでほかほかだ。そして外はパリッとしているのに中はモチモチしていて、あんこが甘くて美味しい。一個がそんなに大きくないからすぐに食べ終わっちゃった。サクラを見ると、サクラも食べ終わっていた。


「お餅も食べたし、お参りに行こうか」


「そうだね!ん」 


サクラは私に確認することなく再び私の手を握り歩き出した。え?今日ずっと手を繋いで歩くつもり?私は嬉しいけど。


「うわっ!」


サクラが急に声を上げた。


「サクラどうしたの?」


サクラは私を見ながら興奮気味に話しかけてきた。

「アザミ!いちご最中大福だって!絶対美味しいやつだよ!」


「さっきお餅食べたばっかりだよ」


「アザミー」


サクラは訴えるような目で私を見てきた。サクラはずるいな。そんな可愛い顔してこないでよ。もう食べるしかないやつじゃん。


「サクラ、買おうか」


「やった」


私たちはいちご最中大福も一個ずつ購入した。


「アザミ美味しいね!」


「うん、甘くて美味しい」


いちごが丸ごと一個使われてるだけでも絶対美味しいのに、この最中と粒あんのあんこも大福に合わさって美味しい。


「ってサクラ!今日は食べ歩きに来たんじゃないよ!」


「そうだったね、早く就活祈願に行こ!」


サクラは当たり前のように私の手を握ってきた。サクラにとって今日はそういう気分なんだね!


「あ…」


サクラは今度はせんべい屋を見ていた。


「サクラー」


私は呆れた声でサクラの名前を呼んだ。もうお餅と大福を食べてるんだよ。


「アザミ、参道には誘惑がいっぱいだね!」


そう言うとサクラは私と手を繋いだまませんべい屋まで歩いていった。


「ちょ…サクラ引っ張らないで」


「すいませーん。梅七味のおせんべいと明太マヨの串を一本ください」


「ありがとうございます!」


「サクラ!」


サクラはそのまま注文をしていた。今日のサクラ強すぎない!?サクラは注文した品を受け取り、まずはせんべいを二つに割って片方を私に渡してきた。


「アザミ、まずはおせんべいを半分個」


「ありがと…」


わざわざ二つに割ってくれたら、もう食べるしかないじゃん。私は渡されたせんべいを食べた。


「辛っ!」


私は思わず声に出していた。私には七味が辛すぎる…やっぱり私、辛いのが苦手だ。


「アザミ苦手だった…?」


サクラを見るとシュンとしていた。私は急いでフォローをした。


「でも美味しい!このおせんべい美味しいよ!」


「よかった!おせんべい美味しいね!」


私の感想に満足してくれたのか、サクラに笑顔が戻った。今後は辛い食べ物も食べれるようにしなきゃ…


「アザミ、串も美味しいよ!」


サクラは串を自分で持ったまま私の口に近づけてきたから、私は串を手に取って残りを食べた。


「本当だ、モチモチしてて美味しい!」


しかしサクラの顔を見るとムッとしていた。


「サクラ?」


「今のはあーんじゃないの?」


「しないよ!?」


何なのもう…今日のサクラは私のことをずっと振り回しすぎだよ。


「サクラ、流石にもう本殿に行こう?」


「うん…」


サクラはまだムッとした顔をしていたけど手を握ってくれた。ムッとしてても手だけは繋ぐんだ。


「アザミ楽しいね!」


サクラはいつの間にか笑顔に戻っていた。


「サクラ、今日の目的忘れてないよね?」


「へ?」


サクラは気の抜けた返事をした。


「今日は就活祈願に来てるんだよ。私たちどんだけ食べるの」


「アザミと食べ歩きするの楽しいよ!」


サクラはずっと笑顔だった。あー、今日のサクラは食べ歩きにテンションが上がってるだけだな。

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