第34話 天満宮②

 四限目の講義が終わり、サクラは不服そうな顔をしながらバイトに向かった。私たちはサクラを見送ってから大学から一番近いコーヒーショップに行った。


「私の家でもよかったのにー」


店内の席に座るとフウカちゃんが私に言ってくれた。それはもうサクラはいないからって意味だと思う。フウカちゃんが私のために気を使ってくれているのは嬉しいけど、あの様子のサクラに、また誰かの家に行ったのがバレたときが怖かった。


「ううん、ここで大丈夫だよ」


「それでアザミちゃん、何か私たちに相談したいことがあるんだよね」


ケイコちゃんはいきなり核心を突いてきた。まあ、流石にわかるよね。


「アザミちゃん大丈夫ー?ここだと周りの人にも見られちゃうよー」


フウカちゃんが優しさから私を気遣ってくれた。


「大丈夫。今日相談したいことは…」


話している途中に私のスマホから通知音が鳴り、思わず画面を確認するとサクラからだった。


「サクラ!?」


「サクラちゃんから連絡が来たの?」


「内容はー?」


私は声に出ていたから、二人からもサクラからどんな連絡が来たのかを聞かれた。私は内容を確認する。


「えっと…新作見せてって…サクラそんなに新作が気になってたんだ」


なんでもない内容で安心した。それにしても、フウカちゃんの家に行っていなくてよかった。ここでやっぱりフウカちゃんの家に行ってるんだって返したら絶対サクラに怒られていた。ちょっと飲んじゃってるけど大丈夫かな。私がドリンクを机に置いて写真を撮っているとフウカちゃんが話しかけてきた。


「アザミちゃんー、ちゃんと自分の顔を見せてサクラを安心させてあげなよー」


「フウカちゃんからかわないで!」


「私も自撮りを送ってあげたほうがいいと思うな」


「ケイコちゃんまでー!」


二人に促され、私は渋々新作を片手に自撮りをして、その写真をサクラに送った。


『新作すごく美味しいよ!』


私がメッセージを送るとすぐにサクラから返信が返ってきた。


『アザミの自撮り可愛い』


返信すごく早いし、サクラもからかってくるなんて!

「サクラから返信来たー?」


フウカちゃんがニヤニヤしていた。


「サクラにもからかわれたよ!」


自撮り恥ずかしいのに…


「それでアザミちゃん、どんな相談?」


私が恥ずかしがっているなか、ケイコちゃんが話を戻した。そうだった。今日は二人に相談しに来たんだった。私は深呼吸をしてから二人に相談した。


「私、サクラに自分の気持ちを伝えようと思ってるの」


「そうなんだ」


さっきまでと違って、二人とも真剣に聞いてくれている。私は話を続けた。


「私はやっぱりサクラの特別になりたい。もう思うだけはやめる。私から行動しないとサクラの特別にはなれないから」


「そっか」


そこまで話した後私は頭を抱えた。


「でも伝え方がわからないの!どこで、どうやって伝えたらいいのー!」


二人の顔を見るとキョトンとしていた。その後すぐにフウカちゃんが口を開いた。


「えー?普通に伝えたらー?」


「フウカちゃん!そんな当たり前のように言わないで!それは無理だよー。もう私のなかでハードルが上がってるのー」


「じゃーサクラの家に行って伝えたらー」


「フウカちゃんそれも無理!サクラの家なんて私のメンタルが持たない!」


あたふたしている私を見てケイコちゃんが優しく声をかけてくれた。


「伝え方は人それぞれだもんね」


「…二人はどうやって付き合ったの?」


参考になるかもしれないから私は二人に聞いた。でもケイコちゃんの顔が真っ赤になっていた。


「ケイコちゃん?」


私はケイコちゃんに声をかけたけど、フウカちゃんが私の質問に答えた。


「私の実家でケイから告ってきたよねー」


「ちょっ…フウちゃん!」


ケイコちゃんがフウカちゃんの顔を見た。フウカちゃんは構わず話し続けた。


「ケイが私に残りの人生全部私にちょうだいって言ってくれたんだよー」


「フウちゃん!なんで言っちゃうの!」


「ケイが私に黙ってアザミちゃんと浮気した罰だよー」


「浮気じゃないよ!さっき説明したでしょ!」


赤面しているケイコちゃんと対照的にフウカちゃんは目を細めてケイコちゃんを見ていた。

ケイコちゃんは家で告白したんだ。私は家で伝えるのは無理だよ。どうしよう。考え込んでいるとフウカちゃんが私に話しかけてきた。


「まずはアザミちゃんからサクラを遊びに誘ってあげなよー。何かきっかけが生まれるかもよー」


フウカちゃんに言われて私はハッとした。確かに、私からサクラを誘ったことないや。


「アザミちゃん、ゆっくりでいいんだよ」


ケイコちゃんはさっきまで赤面していたのに今は真剣な顔で私を見てくれている。ケイコちゃんの言うとおりだ。私は自分の気持ちを伝えることばっかり考えて焦っていたのかも。そんななか伝えても、きっとサクラには私の想いは伝わらない。まずはサクラと楽しい思い出を作ろう。私はサクラの笑顔が見たいんだから。


「二人ともありがとう!私少しずつ頑張るよ」


「いつでも相談にのるよ」


「…」


フウカちゃんが何やら考え込んでいた。フウカちゃんどうしたんだろう。


「フウカちゃん?」


私がフウカちゃんに声をかけるとフウカちゃんは自分のスマホを構えた。


「せっかくだし、アザミちゃんのこともっと助けてあげるねー。はい二人とも私に寄ってー」


言われるまま私とケイコちゃんはフウカちゃんに寄ると、フウカちゃんは私たち三人で自撮りをした。


「フウカちゃん急にどうしたの?」


するとサクラから電話がかかってきた。電話なんてどうしたんだろう。


「さっきの写真、サクラに送っといたー」


フウカちゃんは私がサクラから電話が来たとわかっているのか、私にそう伝えてきた。それがサクラからの電話と関係あるの?


「もしもしサク…」


私の言葉に被せる様にサクラが話してきた。


「アザミ!明日は私とスタパに行こ!二人で!絶対!」


「え?うん、いいよ」


「約束だよ!二人でだからね!」


「わかったよ。サクラバイト頑張ってね」


「うん!また明日!」


サクラは勢いよく話すだけ話して電話を切った。今の電話は何だったんだろう。


 昨日約束した通り、私はサクラと一緒にコーヒーショップに来ていた。


「アザミ!私たちも写真撮ろう!」


サクラがいつになくご機嫌だ。何かいいことがあったのかな。自撮りに限らず写真に映るのは恥ずかしくて苦手なんだけどな。


「アザミもっと寄ってー、撮るよー」


サクラの顔が私の顔にくっついてる…流石に照れちゃうよ…サクラはそのまま自撮りをした。


「アザミありがとー!」


サクラは笑顔だった。サクラが満足してくれたのならよかったけど、やっぱり自撮りはすごく恥ずかしい。いったんそれは置いとこう。頑張れ私。


「ねぇサクラ、今週の土曜日空いてる?」


「空いてるよ」


サクラの予定が空いていることを確認してから私はサクラにバレない様に深呼吸をした。


「そろそろ私たち就活が始まるし、就活祈願に行かない?」


私の提案にサクラは目を輝かせた。


「行く!二人でだよね!」


「サクラがよければ、二人で行きたいな」


「やった!」


サクラが嬉しそうにしてくれた。自分から誘うことがこんなに緊張するなんて。でもまずは一歩前進。

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