第33話 天満宮①

 私は自分の部屋の机に座っていた。決めた。私はサクラに自分の気持ちを伝える。もう、ただ見ているだけなんて嫌だ。夜景を前にしたサクラの笑顔を見たときにそう強く思った。私はサクラの特別になる。サクラが私と一緒にいてくれる、じゃ駄目なんだ。私から行動しないと今の関係は変えられない。一生サクラとは友達のまま。そしてまたいつかサクラとお付き合いをする男の人ができて、そのまま結婚までするかも。そんなの嫌!考えたくない!サクラの特別な人は私でありたい。でもどうすればいいんだろう。今度サクラと二人で遊びに行くときに伝える?それは違う気がする。こんなことならさっきちゃんと言えばよかった。夜景も相まってロマンチックな雰囲気だったし。いやいや、私の心の準備はできていなかったし。駄目だ、私の中で変にハードルが上がってる。ここまで来たらちゃんとしたい。雑な感じにしたくない。じゃあどうするんだって話だけど、まったく思いつかない。あぁ、どうしよう。


 月曜日の昼休み。今日は四人でラウンジで昼食を取っていた。サクラは夜景の写真をフウカちゃんとケイコちゃんに見せている。


「めっちゃ綺麗じゃんー」


「アザミと二人で見に行ったの!」


「本当に綺麗だね」


「二人で夜景なんてロマンテックですなー」


「…そ…そう?」


相変わらず三人は楽しそうに会話をしていた。私も三人の輪に入っていった。


「でも夜景に限らず、ここの神社自体が凄かったんだよ。なんか空気もいつも違う気がして。ねぇ、サクラ」


「…う…うん…」


サクラに同意を求めたけど、サクラの反応は薄かった。あれ?サクラはそうでもなかったのかな。サクラはやっぱり夜景が一番思い出に残ったのかな。


「もしかして、サクラすごくはしゃいでいたから、逆に何も覚えていないんじゃない?」


「そ…そんなことない!凄かった!覚えてる!」


ちょっとからかっただけなのにサクラは慌てていた。その様子が可愛かった。もしかしたら今になって、はしゃぎすぎたって恥ずかしくなっているのかも。


 ってかそうだ。今日サクラはバイトだから四限目が終わったらケイコちゃんとフウカちゃんに相談してみよう。私はケイコちゃんとフウカちゃんに話しかけた。


「ケイコちゃんフウカちゃん、四限目の講義が終わったら一緒にお茶しない?」


「えぇ!私は!?」


サクラが大声を出した。サクラのこんなに大きい声は初めて聞いたかも。私はサクラの方を向いた。


「サクラはバイトでしょ?」


「うーん…」


サクラはすごく落ち込んでいた。もしかして行きたいカフェがあったのかな。私はサクラに話しかけた。


「サクラが時間があるときにまた一緒にカフェに行こう?」


「本当!?約束だよ!」


サクラが笑顔になった。サクラ嬉しそう。やっぱりまた行きたいカフェがあったんだ。サクラに明るい表情が戻ったので私は改めて二人に聞いた。


「それで、ケイコちゃんとフウカちゃんは今日大丈夫?」


「私は大丈夫だよ」


「私もー」 


「よかった。どこに行く?」


「また私の家でいいよー」


「また!?フウカの家!?」


またもやサクラが大声を出した。


「うん、前行ったの」


「アザミが…フウカの家に…」


サクラが羨ましそうにフウカちゃんのことを見ていた。サクラってそんなにフウカちゃんの家に行きたかったの?でも…


「サクラは駄目ー」


フウカちゃんがサクラに言い放った。フウカちゃんの家に行ったらフウカちゃんとケイコちゃんの関係がバレちゃうかもしれないし。多分だけど、ケイコちゃんの家もそうなんだろうな。でも理由も言わずにサクラだけ入れないってなるとサクラが傷ついちゃうかもしれない。


「二人がよければ私の家にする?」


「アザミの家!?」


サクラが大声を出して羨ましそうに私を見た。私の家でもそんな顔をしてくれるんだ。もしかして、サクラは友達の家で遊びたいのかな。そんなサクラの表情を見ていなかったケイコちゃんは私に返事をした。


「またアザミちゃんの家に行けるんだ」


「また?」


「またー?」


今度はサクラとフウカちゃんから睨まれた。これって、もしかして今修羅場?私はサクラとフウカちゃんにそれとなく説明をした。


「そ…そのー、ケイコちゃんは私が風邪を引いていたときにお見舞いに来てくれたの」


「ふーん」


サクラはまだ私を睨んでいた。サクラがめっちゃ拗ねてる…これ本気だよね。ケイコちゃんは必死にフウカちゃんに目で訴えていた。誰かの家は駄目だ。


「そ…そうだ!スタパ新作出てたし、大学近くのスタパにしよ!」


「そうだね!フウちゃん、スタパにしよ!」


私の提案にケイコちゃんも乗っかってきた。


「…ケイが言うならー」


フウカちゃんの顔はまだ不貞腐れていたけど納得はしてくれた。フウカちゃんには後であのときのことをちゃんと話すとして、まさかサクラがあんなに友達の家に行きたがるなんて。


「…じゃあ、私そろそろ三限目に行ってくるねー」


私が席を立とうとするとサクラに袖を掴まれた。


「どうしたのサクラ?」


「…私も、アザミの家に行きたい」


サクラは呟くように言った。だからどんだけ友達の家に行きたいの!


「うん、約束!じゃあまた四限目でね!」


「うん!」


サクラに笑顔が戻った。そんなに楽しみにしてくれるんだ…サクラがいつ来てもいいように今日家に帰ったら部屋を掃除しておこう。

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