第32話 神社🌸

 私は図書館でレポートを書いている。何で今どき手書きのレポート何だろう。パソコンでしたい。コピペ対策なのかな。でも、手書きのせいでさらに時間がかかっている気がする。全然終わらない。


 突然アザミの声が聞こえた。隣を見るとアザミが座っていて、驚いて大声を出してしまった。アザミには慌てて注意をされちゃった。なんでアザミがここにいるのかを聞いたら、既に五限目の講義が終わって私と連絡がつかなかったからって言っていた。私は急いでスマホを確認すると確かにアザミからメッセージが来ていたし、時間も六時を過ぎていた。レポート用紙と三冊の参考文献しか見ていなくて気付かなかった。私は急いでアザミに謝ったけど逆にアザミは私に温かいココアをくれた。しかも私がレポートが終わるまで待ってくれるとまで言ってくれている。アザミが私にプレゼントをくれたことに本当に嬉しくなった。アザミには既に待たせているのにさらに私のせいで待たせるわけには行かなかったから、私はすぐに片付けた。


 駅に向かっていると、アザミが私が帰ったと思ってしまったからと謝ってきた。その言葉に私の足が止まった。アザミはなんでそんなことを言うんだろう。アザミは優しい。甘えてばっかりの私にだって優しくしてくれる。私はアザミの優しさに救われている。けど、アザミは私がどれだけアザミに感謝しているか、全くわかっていないのかもしれない。今までは、アザミは遠慮しているだけだって思っていた。でも違う。アザミは自分が人から求められていないって思っているんじゃないの?そんなの悲しいよ。私はアザミのことが大好きだ。アザミは言葉に出しても信じてくれないかもしれないけど、それでも言葉に出さないと絶対に伝わらない。私はアザミと一緒の時間を自分から投げ出すことは絶対にしないよ。これからも絶対に、信じて。


 本当に夜景が綺麗。目の前がキラキラしていて、別世界みたい。ずっと見てしまう。高いところにいるからかな、星も見える。しかも今日は満月だ。夜景を見ているとアザミに呼ばれたから、アザミを見ると、アザミに月が綺麗だねって言われた。だから私は、それは有名な告白だよって返そうとした。でも言えなかった。だって、アザミの顔が美しかったから。表情は真剣そのもので、私を真っ直ぐに見ていた。私はアザミのその表情に目を奪われた。顔が熱い。ドキドキが止まらない。体が動かない。私はアザミにそうだね、とだけ返した。さっきまであんなに夢中だったのに、もう夜景のことが気にならない。アザミのことしか考えられない。アザミは普通な感じで、そろそろ帰ろうって言ってきたから、私たちは何事もなくそのまま帰った。


 家に着いてからもドキドキが止まらない。さっきのアザミの言葉、月が綺麗だねって、どういう意味で言ったんだろう。あの後、アザミは結局いつも通りだった。アザミはそのままの意味で感想を言っただけ?ただの私の勘違い?でも、アザミのあの表情が頭から離れない。あのときのアザミの表情はカイトに告白されたときの表情とは全然違う。だからアザミのあの言葉は告白じゃない。アザミはそんなつもりでは言っていない。なのにカイトの、照れながら、私の顔を見ずに、目が泳ぎながら言われた、俺と付き合ってくれない、って言葉よりも、アザミのさっきの一言のほうが私の胸に刺さった。やっぱり私にはさっきのアザミの言葉は告白の意味が含まれているとしか思えない。だったらいつから?私には全然わからない。やっぱり私の勘違いだ。そんなはずないもんね。それにアザミはアウトレットモールの観覧車で結婚したい人がいるって言っていた。アザミには既に好きな男の人がいるんだよ。


 不意にいつかアザミに聞かれた言葉が頭に浮かんできた。サクラって同性愛って大丈夫なの。なんで今思い出したんだろう。今思えば不自然な気がする。あの時はドラマの話をしていただけ。しかも話題は風間くんだったはず。せめてあの会話の流れだと、BL大丈夫なの、ってなる気がする。アザミはあえて同性愛って聞いたってこと?アザミは私のことが、恋愛的な意味で好きなの?もし本当にそうだとしたら、私はアザミのことをたくさん傷つけてしまっているかもしれない。そういえばアザミが風邪で一週間大学に来なかったのって、アウトレットモールに行った次の日からだった。考えれば考えるほどアザミは私のことが好きなんじゃないかって思ってしまう。


 違う、そこじゃない。アザミが私のことを好きかどうかは私が考えることじゃない。私が考えないといけないことは、私がアザミのことをどう思っているのかっていうこと。私がアザミのことを恋愛対象として見ているかどうか。私はアザミのことをどう思っているんだろう。アザミは友達で、女の子。やっぱり私にとって、アザミは友達だ。でももう、アザミのことを意識している自分がいる。もし本当にアザミが私のことを恋愛的な意味で好きだとして、私は嫌な気持ちではない…と思う。それでも今の私にはアザミと付き合っている自分が想像できない。だからちゃんとアザミと向き合おう。アザミが私のことを好きではなくても、私がアザミのことを好きなのかどうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る