第25話 植物園④
「登りきったー」
「サクラ見て、一番上の段に250って書いてあるよ」
「私たちは運動部か!」
「入り口はあっちみたい」
「早く行こー」
私たちは入り口に向かった。入り口の外に券売機があり、そのままチケットを購入した。
「サクラここでチケットを買えるよー。あれ?チケットに動植物園入場券って書いてる」
「どっちも入れるんかい!」
サクラの渾身のツッコミだった。でも、私も全力でツッコミたい気分だ。動物園の方からなら長い階段を登る必要はなく、簡単に中に入れたじゃん。
「動物園の方から来ればよかったね」
「本当だよー。アザミ、こうなったら動物園も行こう」
「賛成ー」
「とりあえず早く中に入っちゃおう」
「そうだね」
植物園の中に入ると目の前は工事中だった。よく見るとバラ園リニューアル中と書いている。
「って…入ってそうそうめっちゃ工事中じゃん」
サクラが呆れた様に言葉を投げた。
「バラ園が工事中みたい」
「嘘でしょー、まあ、奥まで行ってみようか」
「そうだね」
バラ園が工事をしているだけで、植物園には入れるみたいだったから私たちは園内を歩いた。元のバラ園は大きかったのか、すごく広い面積で工事をしていた。ここ全部バラ園だったのかな。完成していたら凄かったんだろうな。私が工事をしている方を見ているとサクラは突然指を差した。
「アザミ、あっちに展望台カフェがあるらしいよ」
サクラが指を差した方を見ると案内の看板が建っていた。
「本当だ、ここカフェあるんだ」
サクラは真面目な顔をして私に訴えてきた。
「ねぇアザミ、私たち上り坂を15分も歩いた後に250段の階段を登ったんだよ。これは甘いもの食べても問題ないよね」
「異議なしー」
「それに太らないでしょ!絶対!」
「うん、絶対太らない!」
「あっちに温室があるみたいだし、先にそれを見てから行こうか」
「そうだね」
私たちはカフェへ向かう道を素通りし、植物園の奥にある温室の方へ向かった。
温室の中に入ると当たり前だけど、湿度が高い室内になっていた。
「蒸し蒸しするー」
サクラの言う通り、熱いっていうより蒸されている感じがした。蒸し暑いだけでなく、室内のほとんどが緑で覆われていた。
「部屋中緑色でぎっしりだね」
「本当だねー。ひゃっ、頭に植物が当たった!」
「サクラの今の反応可愛い」
サクラが可愛らしい声を出して両手を頭に乗せた反応が可愛くて無意識に声に出していた。私にからかわれたと思ったのか、サクラは怒った顔をした。
「もうっ!植物に当たっちゃうしアザミもっとくっつこ」
サクラはそう言って私の腕に自分の手を回し体をくっつけてきた。私の左半身にサクラの体が密着していた。
「サクラ…近い…」
これはもうカップルの距離じゃん。手を握るのとは違いすぎるよ…
「仕方ないじゃん。アザミは嫌なの?」
サクラが普通の顔をしながら言っていたため、私は否定できなかった。
「…嫌じゃない」
「じゃあ早く行こー。ここにずっとはいられないよー」
サクラはそのまま私にくっつきながら先に進んだ。サクラにとってはこれも友達に対しての当たり前のスキンシップなんだろうな。私はサクラのこの距離感にいちいち動揺していたらいけないのに。
「サボテンってこんなに種類あるんだ。なんか可愛い。アザミもそう思わない?」
「…うん、可愛い」
ずっとこのままでいたいな。駄目だよ。それは友達が思っちゃいけない。私はサクラと友達でいるんだから。一通り室内を見た私たちは温室から外に出た。
「外に出ると涼しいなー」
サクラは温室から出るとあっさりと私の腕から手を離した。私がそれが虚しく感じた。
「アザミ、カフェに行こー」
サクラはカフェがある方へ一人で向かっていく。サクラが先に行っちゃう。私の前を歩いていく。駄目、私を置いて行かないで…私の隣にいて…
「アザミー?」
私がついてきていない事に気付いてサクラが後ろを振り返った。
「ごめん!すぐに行くから!」
私は小走りでサクラの方へ向かった。サクラの顔が見れない。今サクラの顔を見たら多分泣く。友達でいることってこんなに苦しいの?
カフェに入り注文を済ませた私たちは席に座っていた。
「アザミは何にしたのー?」
「私はアイスコーヒーだけ」
「デザートは頼まなかったの?」
サクラは目を大きく見開いた。
「うん。さっきまでじめじめしているところにいたからかな。デザートの気分じゃなくなっちゃった」
正直今は何も喉を通る気がしない。
「そうなんだ」
「番号札三番の方ー」
「あっ、行ってくるね」
「うん」
サクラはレジで注文した商品を取りに行った。余計なことを考えるのはやめよう。今はただ楽しもう。せっかく二人きりなんだから。サクラがカフェラテとハニートーストを持って帰ってきた。
「美味しそう、いただきまーす。美味しい!」
サクラは幸せそうにハニートーストを食べている。ふふ、可愛い。
「はい、アザミ」
サクラが一口サイズに切ったハニートーストを刺したフォークを私に渡してきた。
「え?」
「ハニートースト美味しいよ。一口だけでも食べてほしいな」
「…いただきます」
私はサクラから手渡されたフォークを手に取り、ハニートーストを食べた。
「美味しい?」
サクラが微笑みながら聞いてきた。
「美味しい…」
「でしょー」
サクラは満足そうにまたハニートーストを食べ始めた。一度は距離を置こうって決めたのに。ケイコちゃんとフウカちゃんに話を聞いてもらって、それでもサクラとは友達でいたいって思ったのに。全然サクラのこと、友達として見れない。こればかりは時間が解決してくれるのかな。いや、私は二人の時間をもっと作ることを頑張るって決めたんだ。私はサクラとは友達でいるんだ。嫌われずにこれからも一緒にいたいから。
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