第19話 アウトレットモール③

 サクラは楽しそうに私の前を歩いている。私は足取りが重い。おしゃれをするのがこんなに恥ずかしいなんて。


「アザミー?」


私との距離が開いている事に気づいたサクラが私の元まで小走りで戻ってくる。


「アザミ早くー」


「サクラ、一回休憩しない?私そろそろ…」


「主役がそんなんでどうするの!もうっ」


そう言うとサクラが私の手を握り次の店に向かって歩き出した。私はサクラに手を握られて一気に鼓動が早くなった。


「ちょ…え、手!」


「ほら行くよー」


サクラは構わず私の手を引いた。サクラが私の手を握ってる。サクラはただ、乗り気じゃない私をリードしてくれてるだけってことはわかってる。けど…そんな簡単に手を握ってこないで。私のことをこれ以上振り回さないで。それでも私はサクラの手を握り返していた。悪いのは絶対私なんだけど、それでも、サクラのせいだよ…


 「アザミ、次はこれを着てみてね」


いつの間にか店に着いていて、サクラは服を選び終えていた。


「わかった」


私はサクラと顔を合わせられないでいた。私はサクラから服を受け取り、逃げるように試着室に入った。今までで一番すぐに試着室に入れた。とにかくいったん落ち着きたかった。友達同士で手を繋ぐのは当たり前のことじゃん。私が特別に感じてるだけ。よくないよ。ちゃんと友達をしなくちゃ。この程度のことで動揺しててどうするの。私は考え事をしていたけど、サクラから受け取った服を着ようと服を手に取った時に違和感を感じた。何これ…パーカーの着丈が短い気がする。サクラサイズ間違えてない?ん?こっちは黒のタイトなミニスカート。まさか…もちろん、サクラに選んでもらったんだからちゃんと着るよ?でも…


「サクラ…」


私が名前を呼んだからサクラは私が着替え終わったと思って明るい口調で私に返事をした。


「アザミ着替えた?見せてー」


私は試着室のカーテンを開けられないでいた。まだ自分で自身の姿を確認できていなかったから。これは絶対に先に自分で確認しなくちゃ。私は鏡で自分の姿を確認した。やっぱり…


「アザミ?」


「…嫌」


私は暗い口調でサクラに答えた。


「何が嫌なの?」


サクラは何で私が拒んでいるのかわからない様子で聞いてきた。


「こんな格好は見せられないよ!」


私は思わず大きい声を出した。サクラはそんな私に対して突っ込んだ。


「何でよ!」


「だって恥ずかしすぎる!」


これだけは人に見られたくない!


「いいからいいからー」


サクラは勝手に試着室のカーテンを開けた。


「待っ…」


勝手に試着室のカーテンを開けられて、私は固まってしまった。


「めっちゃ似合ってるじゃん!…アザミってギャルだったんだね」


「一回もこんな格好したことないよ!」


サクラに褒められはしたけど恥ずかしさが勝った私はその場に座り込んだ。恥ずかしい…パーカーなんて少し腕を上げたらおへそ見えるし…このスカート短すぎるし…


「アザミはなんでも似合っちゃうな。次は何着てもらおう…」


「まだ終わらないの!?」


もう私は羞恥心でメンタルが限界だよ…


 サクラが一通り満足したため、私たちは野外に置かれたベンチに座って休憩していた。結局あの後も結構試着させられた…恥ずかしすぎる。サクラは楽しそうに私に聞いてきた。


「アザミはどの格好が一番好きだった?」


「どの格好も初めてで私には選べられないよ…」


「どれも似合ってたよ。でもそっか、じゃあ今日は何も買わない?」


サクラは何も選ばなかった私に少し残念そうな顔をした。もしかしたら私が何も買わないと思ったのかもしれない。私は残念そうにしているサクラに答えた。


「え?全部買うよ」


「えぇ!?本当に!?」


私の答えにサクラは驚いてた。私はサクラにちゃんと説明した。


「だってサクラが私のために選んでくれたんだもん。最初から選んでくれたものは全部買うつもりだったよ」


「でも、いくらセール中でも全部買うならお値段が…」


サクラは自分で選んでいて、どれくらいの値段がするかわかっているから、目を泳がせて私の心配をしてくれた。そんなサクラの様子が可愛くてつい軽口を叩いた。


「私におしゃれしてって言ったのにサクラじゃーん」 


それにどうせバイト代の使い道がなくて三年間ずっと貯金に回してたし。むしろサクラのためにお金を使えるなら嬉しいくらいだよ。私はベンチから立ち上がった。


「じゃあお店に買いに行くからサクラは待ってて」


私が一人買いに行こうとすると急いでサクラもベンチから立ち上がった。


「いやいや!私もついていくし、荷物持ちくらいはするよ!」


「別にいいのに」


「それくらいはさせて!」


「ありがとう」


私たちは今日着た服を買いに、行ったお店を回った。


 私もサクラも両手に紙袋が一杯だった。これ全部私の服なんだよね。


「…流石にいっぱいだね」


私は思わず言葉を漏らしてしまった。しかしサクラは笑って言葉を返した。


「アザミ大丈夫だよ!全部可愛かったから!」


「ありがと」


私はサクラの言葉に喜んでいた。今日はサクラからたくさん可愛いって言ってもらえちゃった。


「アザミ、せっかくだしクレープでも食べて休憩しようよ」


「いいね」


「クレープ屋さんはあっちだよ」


サクラはクレープ屋がある方へ歩き出した。私はサクラに私の荷物を両手一杯に持ってもらっていることに申し訳なさを感じた。 


「サクラごめんね。たくさん荷物持たせちゃって」


サクラは首を振って笑ってくれていた。


「いいのいいの。私がアザミにお願いして買ってもらったんだもん。さっきも言ったけどこれくらいさせて」


「重たくなったたらいつでも私が持つからね」


「これくらい平気だよー」


今日はサクラに振り回されっぱなしだったな。でもそれは前よりも距離が縮まったってことなのかな。私が早くこの距離感に慣れないと、私たちは友達なんだから。


「あっ!観覧車うごいてる!アザミ後で一緒に乗ろうよ」


サクラが声を上げたから、サクラの視線の先を見てみると、クレープ屋の隣にある観覧車が動いていた。あれってオブジェじゃなかったんだ。サクラと観覧車に二人きり…想像しただけで照れちゃう。私、サクラに変なことしないよね。私からの返事がなかったからサクラが不思議そうに私の名前を呼んだ。


「アザミ?」


自分の考えを振り払うように私はサクラに返事をした。


「うん!一緒に乗ろうね!でも先にクレープを食べようよ」


「そうだね!」


サクラは観覧車を楽しみにしているのか、嬉しそうにクレープ屋に向かっていた。何を考えてるの私!こういう考えが駄目なんだって。しっかりしようよ私…

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