第17話 アウトレットモール①

 私は恐る恐る体重計に乗った。体重計を見ると昨日より1キロ近く体重が増えていた。やっぱり太ってる。明日からお昼はサラダにしとこう。私はさっきのカフェの時間を思い出していた。やっぱりあのボリュームのパンケーキを二人で二つは多いよ。正直一つ食べるだけでもかなり無理をしたし。それに結局スモアラテの飲み方は分からなかった。もったいないから取り敢えず飲み干したけど、飲み方合ってたかな。裏で定員さんに笑われてないかな。とりあえず後でスモアラテの飲み方を調べておこう。


 それにしても、サクラと二人きりの時間が今日で最後じゃないなんて。サクラから二人の時間を約束してくれるんなんて。サクラの中の私の存在が少しだけでも大きくなったのかな。だったら嬉しいな。だからって浮かれちゃ駄目。あくまでサクラにとって私は友達。二人でってのもただ気の合う友達と遊びに行くってだけ。私もサクラとは友達として接するんだから。ちゃんと私はサクラの友達の中の一人に過ぎないことを自覚しないと。二人での時間が前よりも増えただけで満足じゃん。それ以上何を望むの。


 火曜日の二限目の講義中にサクラに真面目な顔をされながら告げられた。


「私はアザミに物申したいことがあります」


「あの…なんでしょうか?」


わざわざ講義中に真顔で言われたから思わず身構えてしまった。私何かサクラに嫌われるような事をしちゃった?


「アザミいつもジーンズにTシャツ」


「へ?あ、うん。それがどうしたの?」


思っても見なかった事を言われて私は思わず気の抜けた声になってしまった。サクラは尚も私を真顔で見続けている。いや、これは真顔というより納得をしていない表情だろうか。


「アザミ、そのコーデおしゃれのつもりで着てないでしょ」


「うん、そうだけど」


私が簡単に答えた事に不満だったのか、サクラは、講義中のため、声は抑えていたけどそれでも訴えるように私に話してきた。


「もったいない!アザミは可愛いんだから絶対おしゃれしたほうがいいよ!」


まさか服装のことを突っ込まれるなんて思わなかった。確かに服装に気を回してないけど。でも、サクラに可愛いって言われるとお世辞でも照れちゃうな。しかし、おしゃれのことが分からない、いや、逃げてきた私はサクラの期待にどう応えたらいいかわからなかった。そのためサクラには正直に答えることにした。


「私おしゃれのことは分からないし、服もそんなに持ってないよ?」


「じゃあ買いに行こう!」 


「別にいいよ…」


サクラからのお誘いにも関わらず私は否定した。だって私がおしゃれしても似合うわけないから。しかしサクラはそんな私を強引に誘った。


「駄目です。次の休みに一緒にアウトレットに行くよ!」


「そんな…私のためなんて申し訳ないよ」


「今セールで安くなってるから!」


「…わかりました」


結局私はサクラの圧力とサクラとまた二人でお出かけができることの誘惑に負けて了承してしまった。私がおしゃれしても似合うわけないのに。サクラの時間を無駄にしちゃうよ。でも、また休日に二人になれるのは嬉しいな。


 金曜日のお昼休み。サクラは二限目が休講になってそのまま帰っちゃったから、一人でラウンジでお昼を食べていた。私はサクラがいないことより、明日のことを考えて気分が下がっていた。いよいよ明日がサクラとアウトレットに行く日。今は憂鬱な気持ちのほうが勝ってるかも。なんとかサクラのお買い物にならないかな。私がおしゃれをするなんて想像できない。


 「やっぱりアザミちゃんいたー」


私が一人考え込んでいるとフウカちゃんの声がした。声がした方を向くとフウカちゃんとケイコちゃんがいた。また一緒にいる。本当に二人は仲良しだな。私は座ったまま二人に声を掛けた。


「フウカちゃんケイコちゃんどうしたの?」 


「アザミちゃん、私たちも一緒にお昼いいかな?」


「え、もちろんだよ」


「やった。フウちゃん座ろ」


「んー」


二人はそう言って私のいた席に座った。三人でお昼なんて初めてだな。ケイコちゃんは私の今日のお昼の少量のサラダを見て目を丸くした。


「ってアザミちゃんお昼それだけ!?」


「うん。ちょっとダイエットしなくちゃ」


「アザミちゃんは十分細いよー」


「いやいや、太っちゃったの」


「でもその量のサラダだけって、健康に悪いよ」


「そうかな?」


二人が私の事を心配してくれているのがわかった。よく見るとケイコちゃんもフウカちゃんも自分のお弁当だった。二人は確か一人暮らしだよね。まさか毎朝自分で作っているのかな。


「二人は自分で作ってるの?」


気になった私は思わず二人に聞いていた。私の質問にはフウカちゃんが答えてくれた。


「いやー、ケイだけー。ケイが私の分も作ってくれるのー」


「だってフウちゃんほっといたら栄養食バーしか食べないじゃん」


「いつもありがとー」


二人の反応から冗談でもなく、今日だけでの話でないことも感じ取れた。ケイコちゃんってフウカちゃんの分までお弁当作ってるんだ。ケイコちゃんって何だか頼れるお姉さんみたいな感じだけど、本当にそうなんだ。


「ケイコちゃんすごいな。私なんて自分の分すら作れないよ」


「一人分作るのも二人分作るのも変わらないよ」


「ついでじゃなくて私のために作ってくれてるくせにー」


「もー!フウちゃん!」


フウカちゃんに指摘されてケイコちゃんは恥ずかしそうにしていた。二人とも友達なのに距離が近いな。羨ましい。私もサクラとこんな距離感になれる日が来るのかな。…それは私次第でしょ。いつまでも変な期待を持ってるからサクラと気の置けない関係になれないだけだ。って、私は今ケイコちゃんとフウカちゃんと一緒にいるのにサクラのことを考えている。私は考え事をしたくなくて二人に話しかけた。


「ケイコちゃんは料理ができてすごいね」


「そんなことないよ。簡単なものしか作れないよ」


「私は何も作れないよ」


「私もネットでレシピを見ながらだよ」


「私も簡単なものから始めようかな」


私がケイコちゃんと話していると横からフウカちゃんが私に語りかけてきた。


「アザミちゃん、サクラは甘いものに目がないよー」


「えっ!」


サクラのことを考えないために会話をしていたのに、話題が急にサクラの事になって思わず私は赤面した。フウカちゃん、なんでここでサクラの話題になるの!でも確かにサクラって甘いものが好きなんだろうな。行きたいカフェがたくさんあるって言ってたし。


「本当にサクラ甘いもの好きだよね。私それで太っちゃったし…」


「そっか、二人でパンケーキ食べに行ったんだよね?どうだった?」


「すごい大きいパンケーキを二人で二つ…」


「あー、それは太るねー。サクラっぽいなー」


「アザミちゃんは楽しかった?」


ケイコちゃんにそう聞かれ私は流れる様に正直に答えてしまった。


「うん、楽しかったよ」


「それはよかった」


二人は私の答えを聞いて笑ってくれていたけど私はすぐに自分の失礼さに気づいた。私の馬鹿!二人がいなかったのに楽しいとか無神経すぎるでしょ。私は急いでフォローを入れた。 


「今度はみんなで行こうね」


「そうだね。でも私たちに気を使わないでいいよ。アザミちゃんがサクラと楽しむことが一番だよ」


私、ケイコちゃんに気を使わせちゃった。やっちゃった。でもここで私が何言っても逆効果だよね。一人で勝手に落ち込む私を他所にフウカちゃんが会話を続けた。


「アザミちゃん、サクラに手作りのプリンでも作ってあげなよー」


私は話題が変わった事に安堵してしまった。フウカちゃん、話をそらしてくれたのかな。二人に申し訳ないよ。…ん?フウカちゃんの言葉を遅れて理解した私は思わず声が大きくなった。


「プリン!?わたしが!?」


「サクラ喜ぶよー」


フウカちゃんは笑っている。サクラの友達のフウカちゃんが言うなら間違いないとは思うけど。私がサクラに手作り…流石に今すぐは無理!


「…練習しとこうかな」


「私が練習台になるよー」


「え、フウカちゃんありがとう」


しかし、私とフウカちゃんの会話を聞いていたケイコちゃんはフウカちゃんの袖を摘んで、フウカちゃんに話しかけた。


「フウちゃん自分が食べたいだけでしょ。フウちゃんには私が作ってあげるから」


「マジー?やったー」


ケイコちゃんのプリンは余程美味しいのか、フウカちゃんは本当に嬉しそうにしていた。初めて三人でお昼ご飯を食べたけど、和やかな雰囲気になって安心した。それにしても私の手作り、サクラが食べてくれたら嬉しいな。本当に練習しよう。

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