第13話 カフェ③

 土曜日、今日行くカフェの最寄りの駅で私とサクラは待ち合わせをしていた。私はまた待ち合わせ時間の一時間前に着いていた。こんなところ、サクラには絶対にバレたくない。相変わらず浮かれすぎだよ。でも私は水族館の時と違い気分は落ち着いている方だった。だって、今日で二人きりも最後。もうサクラには私と二人でいる理由はないもんね。今日は最初に私を誘って気を使ってくれただけだし。これでいいんだ。多分このまま二人の時間を過ごしていたら自分を抑えきれてなかった。それでサクラに嫌われるのだけは嫌だ。今のままならサクラの近くにはいられる。それで私は満足だよ。


 しばらく待っているとサクラが走ってきた。


「アザミ!待たせちゃった?」


今日のサクラはいつも大学で見ているサクラだった。もちろんいつものサクラも美人で可愛い。でも少しだけ、水族館の時みたいな格好をするサクラを期待している自分がいたのも事実だった。そんな訳ないのに。私は首を振って答えた。


「ううん、全然待ってないよ」


私の答えに安心したサクラは安堵の表情を浮かべた。


「よかった。じゃあ行こ」


「うん!」


 駅から十分程歩くと目的のカフェに到着した。そのカフェは私がいつも行っているチェーン店のカフェとは違い、私には不相応なおしゃれな外装をしていた。女子力が高いカフェってこういう場所の事を言うのかな。サクラにとっても似合ってる。サクラが店のドアを開けると店員さんが声をかけてきた。


「いらっしゃいませ。何名様ですか?」


サクラは慣れた様子で一人で対応する。


「二人です」


「こちらの席にどうぞ」


私たちは店員さんに案内された席に座った。改めて周りを見渡すと店内もおしゃれだった。コンクリート造でむき出しのコンクリート以外は白を基調とした内装もおしゃれだ。私、場違いすぎない?座っているだけで緊張する。


「アザミは何頼む?」


サクラはいつもの感じで私に聞いてくれた。サクラはさすがだな。こういう場所にはいつも行っているんだろうな。私ときたら、メニューを見てもおしゃれすぎて何を頼めばいいかわからない。私はサクラに委ねることにした。


「サクラは何を頼むか決まってるの?」


「実は迷ってるんだよねー。どっちにしようかなー」


「じゃあ私がサクラの迷ってる片方を頼むよ。二人でシェアしよ」


「いいの?じゃあそうする!すいませーん」 


サクラは余程迷っていたのだろう、迷っていた二つを食べれることに喜んでいた。サクラが呼んでからすぐに店員さんは注文を取りに来た。


「はい、ご注文どうぞ」


「トリプル抹茶ブリュレパンケーキを一つとクリームチーズブリュレパンケーキを一つ、それとスモアラテのモカを一つと…アザミは飲み物何にする?」


サクラの呪文の様な注文に圧倒されていたなかで話を振られ、私は思わず肩をビクッとさせてしまった。


「え!えーっと…サクラと同じやつ」


「すいません、やっぱりスモアラテのモカを二つください」


「かしこまりました。少々お待ちください」 


店員さんは注文を聞いて厨房の方へオーダーを伝えに行った。


 私は未だに緊張していた。女子力の高い注文だったな。なんて言ってたの?多分パンケーキなんだよね。あとスモアラテ?何それ?


「ふふっ」


サクラが急に笑い出したから、私は思わずサクラに聞いた。


「サクラどうしたの?」


するとサクラが笑いを堪えながら私に説明した。


「いやだって…アザミが借りてきた猫みたいになってるんだもん」


サクラに指摘され思わず恥ずかしくなり私は赤面した。


「だって!こんなおしゃれなお店初めてなんだもん!」


恥ずかしい…サクラは私の様子を見ながら微笑んだ。


「楽しみだね、アザミ」 


「そうだね」


まあ、サクラが楽しそうだからいいか。


 しばらくすると店員さんがパンケーキと飲み物を持って来た。


「お待たせしました」


そのまま注文した品が机に置かれた。


「うわぁ、すごい!」


サクラは商品が置かれると、写真を撮り始めた。


「すごい映えてるね」


「そうだね、サクラ私のも撮りなよ」


「そうするー!」


サクラは夢中でパンケーキを撮っている。いや、確かにこれは映えてるんだと思う。でも、ボリューム凄くない?見ただけでふわふわなのが分かる分厚いパンケーキが三段もある。しかも分厚いだけじゃなくて普通に一枚が大きいよね。ソースもたっぷりかかってるし。アイスまでついてるじゃん。これ、二人で一つでもよかったんじゃない?そしてこの飲み物はなんだ?まずラテアートが可愛い。そして縁には何がついているの?クッキー?これどうやって飲むのが正解なの?私がただただ圧倒されている内にサクラは写真を撮り終えていた。

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