第12話 カフェ②

 私が気持ちを落ち着けているなか、サクラが思い出したように声を上げた。


「そうだ!次の休みパンケーキ食べに行こうよ。前から気になっているお店があるの」


サクラからのお誘いに思わず私は喜びの表情をしてしまった。 


「いいね、行こうよ!でもサクラ太っちゃうんじゃない?」


「…私も今日から腹筋する」


浮かれているなか、ついサクラの可愛い反応が見たくて本当に冗談を言ってみたら、サクラはぷく顔をした。今のぷく顔は可愛すぎるでしょ。駄目駄目、落ち着こう私。私は落ち着いてサクラに話しかけた。


「冗談だよ。一緒に行こうね」


「うん!次の土曜日空いてる?」


「大丈夫だよ!」


しかもサクラから次の予定まで決めてもらった。こんなに早くまたサクラと遊びに行けるなんて夢みたい。…でもそれも次が最後かもしれない。だって私はサクラが傷ついているときに都合よく立ち回って独り占めしているだけだから。別の人たちに話が伝わったら、サクラには私と二人でいる理由はない。


 そんなことを考えていると聞き覚えのある気だるげな低い声と可愛らしい高めの声が聞こえてきた。


「あれー?サクラとアザミちゃんじゃんー」


「二人でご飯食べてたの?」


声のした方へ顔を向けるとやっぱりフウカちゃんとケイコちゃんだった。


「げ…」


サクラはわざとらしく苦い表情をした。


「げ、とはなんだー」


「サクラちゃんそんな顔しないで」


三人は楽しそうに会話をしている。そりゃそうだよ、友達だもん。


「あれ?サクラちゃん佐野さんとは一緒じゃないの?」


「倦怠期ー?」


「違いますー。カイトには振られましたー」


二人に聞かれたサクラはすんなりと二人に説明した。サクラ、二人にはあっさり話しちゃうんだ。やっぱり友達には簡単に話せちゃうのかな。だったら私って、何?


「それは残念だったね」


「私たちが慰めてあげるよー」


「ほらやっぱり茶化すー!」


「サクラちゃん茶化してないよ!」


「被害妄想だー」


三人はすごく和やかで明るい雰囲気で会話を続けていた。私の時とは大違い。私の時は全然話してくれなかったのに、私がしつこく聞いたから仕方なく話してくれただけなのに。でも内容が内容だから誰に対してもサクラは言いたくないのかなって思っていたけど、そんな事なかった。サクラにとって私は友達の中でも話すけどってくらいの存在だったんだな。逆に良かった。私が変な期待を持つ前にちゃんと自分の立ち位置が分かったから。私が会話の中に入ってこなかったからか、ケイコちゃんが私に話を振ってきた。


「アザミちゃんは知ってたの?」


「…えっ、うん。たまたま知っちゃって…」


「アザミは優しくしてくれたのに」


「私たちも優しくするよー、ねえケイ」


「うん、優しくするよ」


「絶対嘘だー。もう、アザミとは大違い」


「…私は何もしてないよ」 


サクラが私の事を褒めてくれているのに、全然嬉しくない。気を使ってもらっていることが分かるから。私はサクラに何もできてない。むしろ余計なことしかしてない。きっと最初にケイコちゃんかフウカちゃんがサクラを見つけていたほうがサクラのためになったんだろうな。


 フウカちゃんがふと視線を落とした。


「あれー、アザミちゃんとサクラお揃いのキーホルダーつけてるじゃんー」


フウカちゃんは私のリュックとサクラの鞄を見ながら言った。お揃い?何のことだろう。サクラの鞄を見るとサクラも水族館で買ったペンギンのキーホルダーをつけてくれていた。サクラも私のリュックを見て、ペンギンのキーホルダーがついていることを確認して微笑みを浮かべた。


「本当だ、嬉しい。アザミもつけてくれていたんだ」


「…当たり前だよ。サクラも大学の鞄につけてたんだ」


「うん、この鞄を一番使うから。アザミにもたくさん見てもらえると思って」


私はサクラの言葉を聞いて泣きそうになった。私がキーホルダーをつけて嬉しいって言ってくれるんだ。私はサクラがそう言ってくれるだけで嬉しい。でも、勘違いだけはしちゃ駄目。私はケイコちゃんとフウカちゃんの方を向いて話した。


「そうだ、今サクラと次の土曜日パンケーキ食べに行こうって話してたんだけど二人も一緒に行く?」


「え、アザミ?」


サクラが私の顔を勢いよく見た。フウカちゃんとケイコちゃんは私に申し訳なさそうな顔をして答えた。


「いやいやー、二人で行ってきなよー」


「ごめんねアザミちゃん。私もフウちゃんも土曜日予定があるの」


「そうなんだ」


二人が行けないなら、サクラは土曜日どうするんだろう。先に二人の予定を聞いてから返事をすればよかったな。私はサクラを見て聞いた。


「サクラは私と二人でいい?」


私の問いかけを聞いてサクラは悲しそうな表情をした。


「私は最初から二人で行くつもりだったよ。…アザミは私と二人は嫌だったの?」


私はサクラに二人が嫌か聞かれて急いで返事をした。


「そんなことないよ!絶対ない!でもサクラはみんなで行ったほうが楽しいかなって思って」


サクラは私の答えを聞いてもなお、表情は暗いままだった。私はまだサクラに気を使わせてるのかな。私もケイコちゃんやフウカちゃんみたいなサクラの友達になれたらいいのに。三人みたいな気の置けない関係になりたい。サクラは時間を確認すると急いで弁当のゴミをまとめて鞄を持って立ち上がった。


「って、やば!三限目いきなり小テストだった。ごめんアザミもう行くね。三人ともまた四限目でね」


サクラは急いで行ってしまった。私も教室に向かおうかな。私もゴミをまとめているとフウカちゃんに話しかけられた。


「アザミちゃんお揃い良かったねー」


「え、うん」


まさかまだお揃いのキーホルダーをしていることに触れられて思わず淡白な返事をしてしまった。


「アザミちゃんごめんね。私たち邪魔しちゃったよね」


ケイコちゃんが申し訳なさそうな顔をした。私は急いで否定した。


「いやいやそんなことないよ!」


話を逸らしてくれたのか、フウカちゃんがキーホルダーの話を膨らました。


「アザミちゃんそのキーホルダーどうしたのー?」


「この前サクラと水族館に行って、その時に買ったんだ」


「二人で行ったの?」


ケイコちゃんも続く。

「うん…」


「アザミちゃん良かったね、楽しかった?」


「うん、サクラも楽しんでくれた…と思う」


私の言葉を聞いて二人は笑顔になっていた。二人とも何なんだろう。今まで三人で喋ることはあんまりなかったのに。しかも、何故か喜んでくれているように見える。何で?何に対して?ケイコちゃんもフウカちゃんもサクラの友達で、私はただ三人に混ぜてもらっているだけだから二人のことはまだよくわからない。


「サクラも大事にしてくれるといいねー」


「うん…」


「お揃い嬉しいもんね。私たちもお揃いなんだ」


ケイコちゃんがそう言って服の中に隠れていたリングホルダーネックレスを服の上に出して私に見せてくれた。フウカちゃんも続けて私に見せてくれた。フウカちゃんは右手の人差し指を口元に置いて話した。


「他の人には内緒にしといてねー、もちろんサクラにもー」


「え…うん。わかった」


私の返事を聞いて二人は再びネックレスを服の中に入れた。友達同士のお揃いをわざわざ隠す必要あるかな。私とサクラのお揃いに対しては喜んでくれてるように見えたのに。 


「じゃあアザミちゃん私たちも行くね。また四限目でね」


「アザミちゃんばいばーい」


「うん、またあとでね」


二人は三限目の講義も一緒なのか、二人で行ってしまった。二人ってすごく仲良しなんだ。お揃いのネックレスまでしてるなんて。それにしても普段は隠していることをなんで私には見せてくれんだろう。そんなに深い意味はないんだろうけど。って、私も早く教室に行かなきゃ。私もゴミを捨てて急いで三限目の講義がある教室に向かった。

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