第5話 イケメン君からの告白

 プロジェクトは生産から販売へとフェーズが変わった。営業部の若きエース、中野さんの本領発揮で新商品の売り込みは順調だ。

 ある日の夜のことだった。

「課長、一緒に帰りませんか?」

「ええ、そうね」

 中野さんと一緒に帰ろうとした時だった。

「私、立川課長とホテルに行きたいです」

 ハッキリと物言うのは普段通りの中野さん。だから私も駆け引きも遠慮も一切抜きで応える。

「行きましょう」

 その晩、私たちは二度目となる性欲の交歓を済ませた。


 中野さんの良いところは性的関係となっても普段は何も変わらないところ。仕事は淡々と進めて新商品の契約をバリバリ取ってくる。

 その後、中野さんとは何度か終業後に待ち合わせをしてお手合わせ願っている。


 三鷹製菓創業三十五周年記念という臨時の特別プロジェクトは新商品の発売にこぎつけたので区切りとして来月、解散することになった。プロジェクト解散時には参加メンバーは元所属していた部署に戻ることになる。

 中野さんと私は別々の部署。つまり、プロジェクト解散と同時に日常的に一緒に過ごすことは出来ない。


 そんなことを考えながら出先近くの繁華街にあるバーに入る。もちろん初めて入る店。

 お酒を飲んでいたら『立川さん?』と後ろから声を掛けられる。振り返るとそこには谷本が立っていた。若い女の子と一緒に。

「君もこういう店に来るのか。いや、結構なことだ。もう相手は決まっているの?」

「こういう店って? 何も決まってないけど」

 何を言われているのかさっぱり理解出来ない。

「ここは有名なハッテンバだよ」

 その瞬間、モヤモヤっとしていた点と点が線で繋がった。

 谷本の後ろにいる女の子は男のだ。つまりは男性。もしかしたら元男性かもしれないけど私の推測が正しければまだ男性のままだ。

「知らなかったわ。私はたまたま入っただけ」

「そうか。僕を待ち伏せていたわけでも尾行してたわけでもなくて安心したよ」

「そんなことしないわ。好きにしたら良いじゃない。愛人たちと」

 『愛人たち』と聞いたその瞬間、男のがビクッとしたのが分かった。

 谷本は他の愛人たちのことを隠してこの男のをナンパしてたみたい。相手が女であろうが男だろうが嘘をついて近付くのはルール違反。

「安心したよ。君が理解してくれる人間で」

「あなたのことは理解したわ。但し、理解するのと許容するのは別。あなたはあなたで楽しんで。私は私の考えで行動するから」

「分かったよ」

 そう言って谷本は男のと去っていった。

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