第4話 婚約者と私の過去

 谷本とは父の取引先からの紹介で知り合った。俗に言うお見合いだ。

 地域社会に於ける名士や名だたる家では現代社会においてもお見合いという仕組みを利用して結婚をしている夫婦が少なくない。それぞれの家の格に見合った相手を地域社会というムラの中で紹介し、融通し合うシステムができている。

 私はたまたま父親が地域の金融機関に就職し、これまたたまたま出世してしまいムラに片足を突っ込んでしまったお陰でムラ社会のシステムに引きずり込まれてしまった。

 当然のことながら嫁に迎えようとする女の過去はムラの女であっても徹底的に調べあげられる。地域社会の名士でも名だたる家の娘でもないたまたまムラに片足を突っ込んでしまっただけの私であれば尚更のことである。

 つまり私の過去は徹底的に調べ上げられてからお見合い話がきている。


 もっとも調べたところで調べようもない過去もある。私は過去に付き合った相手は一人もいない。但し、それは誰とも性的関係をもっていないこととイコールではない。

 私の相手はすべて一度切り、一夜限りの相手だった。相手を一夜限りとしていたのは後腐れがないように。本気になられて付き纏われても困るし。


 性的関係を持った相手は男も女もいた。割合でいうと女の方が圧倒的に多かったけど初めての相手は男だった。それも二人組。

 夏のビーチに一人で出掛けて何も知らない無垢な女の子を装い、ナンパに引っ掛かった振りをした。

 二人組だからもう一人、誰かをナンパしてくるのかと思っていたらそのまま彼らが宿泊しているホテルの部屋に連れて行かれ二人を相手にさせられた。初めてが3Pだった。

 身体は正真正銘の処女だったので男の子は喜んでいた。けど、頭の中はベテランレベルの知識で一杯の耳年増だったので、この機会にアレもしてみたいしコレも経験してみたいと余計なことまでしてしまい男の子たちは引いていた。

 私でさえ何処の誰だったか名前も知らないこんな相手との一度切りの情事を後から調べようとしてもできっこない。

 

 別に誰かを本気で愛したこともないし本当の愛も知らない。知りたいとも思わない。むしろ最初から愛のない割り切った結婚でもそれはそれで気が楽でいいかもね、と思ったので谷本の考えも受け入れることができたのだと思う。

 私が創業三十五周年記念という臨時の特別プロジェクトに呼ばれたのはちょうどそんな頃だった。

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