第3話
馬車に揺られている私ですが、だんだんと道が悪くなってきたようです。
「ディーン兄、ところでどこに向かってるの?」
「あれ? 言わなかったか? この間俺たちのパーティーが街の水源調査に向かっただろ? だが街の水事情が改善していないから、もう一度調査依頼が出たんだよ」
「それならディーン兄のパーティーが行けばいいじゃん。私を巻き込まなくても罰は当たらないよ」
「だから、そのパーティーメンバーが流行り病で倒れているんだよ」
確かにご飯の味も良くなった感じはしないですし、街の活気もいつもよりないのは気になっていましたが……もしかしてこれを解決したら、ランクが上がって仕事が増えるなんてことにはならないですよね?
「ノノア、ここからは歩きだぞ」
山道の途中で馬車が止まりましたが、ここから先には馬車で進めないみたいです。
山歩きですか……
ディーン兄の後を追うように山道を登っていくのですが、水源がある場所まで道が整備されていないそうです。仕方なく獣道を歩かなくてはいけないのですが、大事な水源なら管理しやすいように道の整備位してほしいものです。
「ノノア、大丈夫か?」
「足腰が痛くて、もうここから先には進めそうもありません。私のことは気にせずディーン兄は先に進んでください」
「そうか、わかった。俺の目的は調査だけだからな。すぐに戻ってくるから、おとなしくここで待っているんだぞ。ちなみにこの間キノコがたくさんあったが、取ってくるつもりはないからな」
なんですって!
「ディーン兄、急ぎますよ。金貨、じゃなかったキノコが私を待っています」
「……お前、足腰が痛いんじゃなかったか?」
「そんなこと誰が言ったんですか?」
「もういいから、とっとと行って終わらせようよ」
ディーン兄と山道をかき分け上ること1時間、ようやく目的地の泉が見えてきました。
「なるほど、ここが街の水源なんですね」
「ああ、ここの泉から湧き出た水が川になり、街の近くまで流れていくんだ」
泉と言うから小さいものを想像していましたが、意外と大きいです。
まあ街の水事情を賄うだけの水源ですから、ある程度の水量は必要ですよね。
「ノノア、ちなみに勘違いしていると思うけど、他にも地下水が川の流れに合流しているからね。この泉だけが水源じゃないよ」
「え、それじゃあ他の地下水も調べなきゃダメなんじゃない?」
「ノノアにしては良い視点だが、地下水は雪解け水が地層でろ過されて流れ込んでいるだろうから直接何かが入ることはないだろう。まあ地下水がダメなら街はおしまいだな」
豪快に笑うディーン兄ですが、それって街ごとお引越しですよ。
私の野望が遠のいてしまいます。
「よし、それじゃあ俺はこっちから見てくから、ノノアは反対周りで異常がないか確認するんだ」
「隊長、キノコ探しは?」
「……全部終わってからにしろ」
「了解、それじゃあベアくんお願いね」
ディーン兄はベアくんのすごさが分かっていないからね。ここでベアくんの実力を見てもらいましょう。
「ノノアも魔法の練習しろよな。アナリシス!」
泉の水を少し汲み取りベアくんの魔法で分析してもらいます。
これで何か毒があればすぐにわかるので、調査は終了。
キノコ狩りタイムの始まりです。
「ノノア、大変だ。この水飲んでみろ」
「え~、お腹壊すのは嫌だよ」
と言いつつ、一口水を飲んでみます。
「おいノノア、何いきなり水を飲んでいるんだ」
「え、ベアくんが飲んでみろって言ったから。さすがに私の相棒が、ご主人様を危険にさらすことはしないと思うからね」
「僕は相棒で、下僕じゃないからね。それでどう?」
「うん、すごく冷たくておいしい」
「ディーンさん、ここの水はきれいだよ。毒は入っていないし、ノノアががぶ飲みしているのを見ればわかる通り、非常に美味しいみたいだ」
山登りでのどが渇いていたんです。
冷たくて美味しい水があればとりあえずがぶ飲みするしかないじゃないですか。
それにタダだし。
「あ~、つまりそのクマくんが魔法を使って状態確認したところ水源に問題はないってことだな」
「そういうこと。それじゃあ金策タイムの開始だよ~」
このあとベアくんに高そうなキノコや薬草を見つけてもらい、ディーン兄と薬草さんやキノコさんの討伐部位回収を始めたことは言うまでもありません。
「遅くなっちまったな」
「私は野営してもう少し採取、じゃなかった討伐を続けたかったんですけどね」
「あ、ノノア。もう一仕事あるよ。水源から流れる下流部分の調査もした方がいい。ここがダメなら途中に何かがあったことになるからね」
「お、飼い主より賢いじゃないか」
「ちょっと酷くない? まあ帰り道だしね。チャチャっと片付けて今日もスペシャルプレートでご飯だよ」
あ、おばちゃんも倒れているんだった。
酒場はうるさいし、臭いから嫌なんだよね。屋台もやってないだろうし……
街の近くの川まで移動した私たちは、ベアくんの魔法で水の状態を確認しましたが特に問題は見つかりませんでした。
そのあと街の貯水池を確認すると、なんと毒素の反応が。
「これってどういうことだ? 街の誰かが貯水池の毒でも投げ込んだのか?」
「なんてことを。美味しいご飯を期待する私の邪魔をするとは許せません」
「それは違うかな。貯水池だけじゃなくて井戸水からも毒素が出ているよ。さすがに全部の井戸に毒を入れるのは難しいだろうから、別の原因を考えた方がいいね」
つまりその原因が分からなければ、美味しいご飯はいつまでたっても食べられないってことじゃないですか。
ベアくん、何とかしてください。
「僕が浄化してもいいけど、多分間に合わないと思うよ」
「こういったことを考えるのはギルドの仕事だな。よし、まずは報告しに行くぞ」
夜も遅くなったのにギルドの明かりが煌々とついています。
きっと街の生命線である水の調査をしに行った私たちを出迎えるために、職員総出で待っていてくれたに違いありません。
ギルドの扉を勢いよく開け放ち、帰還を報告に向かうつもりだったのですが……
「フィオ姉、ただいま……ってこれどうしたの?」
「おい大丈夫か?」
「ノノアちゃん、ちょっと手伝って」
ギルドの中は、ボロボロになった冒険者であふれかえっていました。みんなが横になって苦しそうにしています。
あれ? この人たちって……薬草採取組じゃないですか?
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