《学園内スパイの彼女はなぜか俺にだけ秘密を囁いてくる》
「ねえ、知ってる?2組の担任の
川平さんは、俺のクラスメイト。そして学園内スパイだ。生徒会長からの指示で、学園中のあらゆる秘密を調査する。それは誰にも漏らしてはいけないプライベートな内容ばかりだ。
そういった情報の数々を、なぜだか彼女は俺にだけ囁きに来る。
「ねえ、知ってる?転校生の
毎日一回。学校で俺の姿を見つけるとおもむろに近づいてきて、耳元に囁いてくる。その意図はまるで分からない。
「ねえ、知ってる?科学部の
ある日、俺は川平さんに聞いてみた。
「なあ、なんで毎日俺にそんなこと言いに来るんだ?」
川平さんはキョトンとして、何やら考えた後、人差し指を口元に当てて笑った。
「内緒」
なぜその秘密は教えてくれないんだ。
俺の疑問は解消されないまま、また同じ日々が続く。
「ねえ、知ってる?3組の金城さん、妊娠したんだって」
そう言えば、最近姿を見ていないと思った。明るい髪の派手な子だったから、いたらすぐ分かったのだが。
「ねえ、知ってる?最近、夜な夜な学校に侵入してる人達がいるんだって。監視カメラには人影が二つ映ってるだけで、誰なのかは分からないんだって」
彼女が囁く内容は、どこか不穏なものが多い。聞いてて楽しい情報は全くと言って良いほど無かった。
「ねえ、知ってる?この学校には、石垣島出身の人が四人だけいるんだよ」
たまに不穏でない話が来たとしても、このようにどうでもいい内容である。一体彼女は何の調査をしているのだろうか。
「ねえ、知ってる?最近、近所のホームセンターで肥料がめっちゃ売れてるんだって」
ついに学外の話まで来てしまった。俺は川平さんに苦言を呈する。
「なあ、マジで何が目的?最近、キミと俺が付き合ってるんじゃないかとかよからぬ噂が出回ってて困ってるんだが」
川平さんは少し目を丸くした後、ニヤッと笑ってまた囁いてきた。
「ねえ、知ってる?キミと私、付き合ってるんだって」
「デマを教えるな!!」
そんなくだらない日々が続いた、ある日。いつもとは違う深刻そうな顔立ちで、彼女は俺に囁いた。
「ねえ、知ってる?誰かがこの学校内に爆弾を仕掛けたって」
「はあ⁈」
俺は思わず声を上げた。
「おい、そんな冗談は笑えないぞ⁈」
「冗談じゃないよ。私は、いつも本当の事を言ってる」
彼女の真剣な表情から、それは嘘じゃないと理解できた。
「……そんなの、生徒会長か先生に言えよ。俺に言ってどうするんだ」
「言っても、信じてもらえないよ」
そりゃそうだろう。なぜ俺は信じているのか、自分でも分からない。
となると、これは俺が解決しなければならないのか……。
「川平さん、もっと具体的な情報は無いのか?爆弾のある場所とか、誰が犯人かとか」
川平さんは無言で首を横に振った。肝心な情報はくれない子だ。
仕方ないので俺は、推察で行動することにした。職員室の真上にある、二階の多目的室へ向かう。一番窓際にある小さな棚の陰を見ると、黒いプラスチック製の四角い物体が床にネジでとめられていた。
俺は用意していたドライバーでプラスチックの蓋を注意深く開ける。中にはいくつかの配線と、基盤と、タイマーのようなものがあって、それは残り1分を示していた。
一際目立つコードが二つ。赤と青だ。俺はこれまでの自分の推測を信じて、躊躇うことなく、ニッパーで赤のコードを切った。タイマーはそこで停止した。
後日、噂で聞いた内容。
主犯は砂川くんと下地くん。この二人と金城さんはかつて石垣島の小学校で一緒だった幼馴染らしい。しかし金城さんが村松先生に脅されて関係を持った結果妊娠。砂川くんと下地くんは村松先生への復讐を決意した。下地くんの科学知識を元に、二人は肥料を使って黒色火薬を作成、職員室の、村松先生の席の真上を爆破して彼を圧死させようとしたそうだ。
全てが解決した後、俺は改めて川平さんに聞いてみた。
「なあ、なんで川平さんは、俺にずっとヒントを与えていたんだ?」
「……キミなら、解決してくれると思ったから」
少し照れたように、彼女は言う。
「キミは忘れてると思うけど、私はかつてキミに助けられた。キミは私のヒーローなんだよ」
そう言って笑ってから、彼女はまたいつものように俺に囁く。
「ねえ、知ってる?キミは私のことをずっと『カワヒラさん』って呼ぶけど、本当は『カワダイラさん』なんだよ」
「え⁈」
俺、ずっと呼び方間違えてたのか……。焦る俺を、
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