《俺が殺した人間は全員異世界転生してしまう》
「あんたか。凄腕の殺し屋っていうのは」
「自分で凄腕なんて言う気は無いが……これまで受けた仕事は全て成功させてきた。俺に狙われて生き残った者はいない」
「頼もしいね。驕りが無いところが特に良い。あんたに仕事を頼みたい。どうしても殺してほしい人物がいるんだ」
そう言って、懐から写真を出そうとした男に対し、殺し屋は確認するように尋ねた。
「……復讐か?」
「……理由を言わなきゃならないルールでもあるのか?」
「いや。そんなことは無いが……もしも動機が復讐なら、俺に依頼するのは辞めておきな」
「なぜだ?これまで様々な殺し屋に依頼してきたが、誰も奴を殺せなかった。厳重に警護されている奴を殺すには、お前のような凄腕で無ければならないんだ」
「……確かに、俺の腕ならその程度の警備、突破するのは造作もないだろうが……」
「なら良いだろう?それとも、復讐は何も生まないなどと言う道徳でも説くつもりか?殺し屋なんぞに言われる筋合いは無いがね」
「そんなことを言いたいんじゃ無い。ただ、本当にそいつを恨んでいるのなら、俺の手で殺すのはまずいってことなんだ」
「何を言ってる?どういうことだ」
殺し屋は少し躊躇しつつも、意を決したように話し始めた。
「実は……俺が殺した者は全員、異世界転生してしまうんだ」
「……なに?」
「そのうえチート能力を手に入れて、異世界で無双してしまうんだ。そのおかげで異性からめちゃくちゃモテてしまうんだ」
「……何を言って……」
「想像してみろ、お前が殺したいほど憎い相手が、異世界に転生して、チート能力で無双して、めっちゃモテるんだ。はらわたが煮え返る思いだろう」
「…………」
「分かったら、俺に依頼するのは辞めておくんだな。俺だって、せっかく大金払ってくれる顧客には幸せになってもらいたい。憎い相手を異世界転生させるのは気が重い」
「……一つ聞かせてくれ」
「なんだ?」
「殺した相手が死後異世界に行くなんて、なぜお前に分かるんだ?」
「ある日、見えるようになってしまったんだ。全く、難儀な力だぜ。俺が殺した奴らが皆、異世界でドラゴンや魔王を倒して、群衆から英雄として奉られ讃えられてる光景が頭に流れ込んでくるんだから」
殺し屋は苦悶の表情で言った。さぞ辛いことだろう。
「まあ、俺はこんな仕事をしてる故の報いだと思って諦めもつく。だがお前は大金をはたいてまでそんな苦しみを背負う必要はない」
「……依頼する」
「……ああ。それが懸命……え?なんて?」
「あんたに殺しを依頼する。奴を異世界に送ってくれ。もし必要だったら、言い値の倍は出そう」
「どういうことだ……?イカれてるのか、お前。考えてみろ、殺したいほど憎くて仕方ない相手が異世界で俺TUEEEしてしまうんだぞ⁈」
「ああ。想像してみたさ。あのクソ野郎が、異世界で魔法を駆使して魔物や魔族と戦う姿を、想像した。そしたら……なんか、案外面白そうだなって思ったんだ」
「お、お前……!」
「なあ、お願いがある。あんた、異世界での活躍を見ることができるんだろ?もし奴を殺すことに成功したら、奴の異世界での冒険を書籍化して俺に読ませてくれないか?どうしても、気になるんだ」
「お前……怒りのあまり狂ってしまったと言うのか……憎しみが強すぎて、悲しきモンスターに…………オーケー。分かった。任せておけ。必ず名作を書き上げてやるよ」
「頼んだぞ。アニメ化も、待ってるからな……」
数日後、憎い相手が殺されたと言う事実を、男は知った。それ以降、彼はいつまでも待ち続ける。
憎き男が大活躍する異世界転生ファンタジー小説が、出版されるその時を——
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