第5話 適性検査
翌日、俺は会場に向かうべく、朝早くに家を出て、何度か鉄道を乗り継いで、検査会場の最寄り駅までやってきた。
姉ちゃんは心配して何度も一緒に行きたそうにしていたけれども、俺が何度も大丈夫と伝えたのと、仕事が待っているということもあり、最終的には折れてくれた。
そうそう、姉ちゃんの仕事だけど、“横須賀海軍病院”という場所で、元の世界と同じく看護師として働いているらしい。
例え世界が変わったとしても、姉ちゃんは本当にブレないな――
より一層、姉ちゃんが好きになった瞬間だった。
ここに来るまで約3時間くらいかかったこともあり、ちょっとした旅行のような気分になっていた。
駅を降りると矢印付きの立て看板が立っていて、その方向に歩いていくと有刺鉄線のある
おそらく、ここが目的地である。
あるのだが――
「あまりにも、デカすぎるだろ……」
右を向いても左を向いても、ずーっと塀が続いていて、どこが入り口かわからない。
仕方ないので、近くで農作業をしていた人に話しかけ、道を教えてもらう。
祈動適性検査を受けに来たと伝えると、やけに丁寧に教えてくれた。
教えてもらったとおりに歩いていくと、やがて塀が途切れて、門のような場所が見えてきた。
あそこが入口だろう。
近くに行くと、門の柱に取り付けられている
門のすぐ近くの
門番だろうか――小銃を持った兵士が近くで仁王立ちしており、俺は初めて見る本物の銃に緊張を隠せないでいた。
ただ、今日が祈動適性検査の日であることは兵士も分かっているのか、特に何も話しかけてはこなかった。
詰所の人から許可が出たので、許可証を首から下げて、そのまま敷地内に入ると――
「すげえ……」
外から塀を見た時に想像はしていたが、飛行場はとてつもなく広大だった。
元の世界において、修学旅行で羽田空港を利用したことがあるが、目の前の飛行場はそれに勝るとも劣らない広さだ。
これ、もし会場の祈動演習場なる場所が反対側にあったら、検査までに間に合わないんじゃないか――
そう思って立ち尽くしていると、親切にも近くを通りかかった事務員らしき人が場所を教えてくれた。
先ほどの敷地の外で農作業をしていた人といい、おそらく適性検査を受けに来た人が迷子になるのはよくあることで、対応に慣れているんだろうな。
そう思う。
幸いなことに、祈動演習場はそれほど離れていなかった。
祈動演習場に行くと受付のような場所があり、そこで送られてきた祈動検査通知書を渡して手続きを済ませた。
「祈動適性検査は10人ごとに実施しますので、時間が来るまであちらの控室でお待ちください」
そう言われて、26番という札を渡された。
倉庫みたいな控室に入ると、俺と同じくらいの年代の男女が40名ほど待っていた。
明らかに緊張している人もいれば、余裕そうに誰かと会話している人もいる。
俺はと言うと、誰かに話しかけたい気持ちはあるものの、あまり長く話すとこの世界の常識がないことがバレるので、積極的に話しかけられずにいた。
――しかたない。残念だけど、じっと座って待っていますか。
そう判断して椅子に腰かける。
スマホもないので、検査通知書と一緒に入っていた“祈動検査受験の
しばらくすると、係の人から「21番から30番までの人、私についてきなさい!」と指示があったため、控室を出てついていく。
すると、体育館のような建物に案内された。
そのまま中に入る。
建物の中も外観と同じく体育館のような雰囲気だが、明らかに体育館とは異なる点が2つあった。
1つは、天井からロープのようなものが吊り下げられていて、ところどころ金具のような部品が取り付けられていること。
そして、もう1つは――
――中央に、洗濯機くらいのサイズの、巨大な赤い水晶のような物体が置かれていた。
その物体は水槽のような透明の容器に入れられていて、たくさんのコードがその物体から伸びて、あちこちの機械につながっている。
悪の組織のアジトにありそうな、怪しさ満点の見た目である。
敵のボスがこの装置の前で、「ふははは……。これが完成すれば、世界は全て我が
あるいは、なんかワープとかできそう。
え、もしかして、俺たちの受ける検査って、あの得体のしれない物体にコードでつながれるとか、そんな人体実験まがいのイベントじゃないよな……
嫌な予感に、思わず不安になりかけたそのとき――
「祈動適性検査を受験する皆さん!こちらに集まってください!」
そう言って、試験官らしき人物に呼ばれた。
俺を含めて10名が集合する。
そして、その試験官らしき人から、本日の検査の詳細を聞かされた。
内容は思っていたよりはるかにシンプルだった。というより、ほとんどやることがないと言ってもよい。
先ほどの天井から吊り下げられているロープに身体を固定し、中央の怪しげな物体を起動させる。
すると、祈動に適性のある人間には、ある変化が訪れるらしい。
その変化とは――聞いて驚け。なんと、身体が空中に浮くという。
やべえ、何から何まで怪しすぎる……。
だが、説明してくれた試験官らしき人は終始真顔だったし、俺以外の受験生も何も疑問に思っていないようだ。
つまり、この世界の常識ということだろう。
なるほど、その前提で考えると、天井から吊り下げられているロープは、空中に浮いた際の落下防止用の命綱という訳だ。
とはいえ、ここまで来て「怪しいのでやっぱり帰ります!」とは言えないだろう。
俺は覚悟を決めて、適性検査を受けることにした。
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