第6話 師匠を超える日


朝の光がストーンヘイブンの石畳に反射する。

ティオは深呼吸し、剣を握りしめた。

今日は、師匠であるレオとの模擬戦――

自分の成長を証明する日でもある。


「準備はいいか?」

レオの声は、冷静でありながらもわずかに挑戦的だ。

ティオはうなずき、緊張と期待が入り混じる胸を押さえた。


「昨日までの俺とは違う。今日こそ、全力で」

心の中でつぶやき、剣の構えを確認する。

体の動き、呼吸、視線――すべてが今までの訓練の積み重ねだ。


広場に立つと、周囲にはギルドの仲間たちが集まる。

ナリッサも笑顔で見守り、ザレクが静かに評価の目を向ける。

「始めろ」

レオの声で、模擬戦が静かに幕を開けた。


最初の数秒で、ティオは圧倒される。

レオの剣さばきは風のように滑らかで正確、

間合いも攻防のテンポも完璧だった。

「くっ…速い!」

ティオは必死に防御を続ける。


だが、諦めることはしない。

「基本、基本…!」

昨日までの訓練と、森での実戦経験を思い出す。

体を一体化させ、剣先の動きに集中する。


レオの剣が迫る。ティオはとっさに回避し、

隙を突いて反撃。初めて、自分の剣が師匠に触れた。

「やった…!」

小さな衝撃が、胸に大きな歓喜をもたらす。


戦いは続く。剣と剣がぶつかり、火花が散る。

レオは容赦なく攻め、ティオも必死に応戦する。

しかし、体の連動、動きの正確さ、判断力――

すべてでレオが上回る。


ティオは何度も倒され、立ち上がる。

汗と血で体は重く、呼吸は荒くなる。

それでも、心は折れない。

「僕は…強くなった!」

その思いだけが、剣を支える力となる。


模擬戦の中盤、ティオはふと気づく。

「ただ力を合わせるだけじゃ、勝てない…」

魔物との戦いで学んだ戦術と観察力を応用する。

相手の癖を読み、間合いを計り、反撃のタイミングを見極める。


レオが斬りかかる瞬間、ティオは体を回転させて受け流し、

一閃。剣先が、師匠の剣にわずかに触れた。

周囲から驚きの声が漏れる。

「成長したな…」

レオが短くつぶやき、笑みを見せる。


互いに剣を構え、呼吸を整える。

「まだだ…ここからだ」

ティオの目には、迷いはない。

すべての経験と努力が、今の一瞬に凝縮される。


戦いのクライマックス。

レオが重心を変え、斬り込む。

ティオは一瞬の隙を見逃さず、体をひねってかわし、

反撃の斬撃を放つ。


その刹那、レオが受け流す。

だが、互いの剣が交差する感触に、観客は息を飲む。

ティオの成長は、明らかだった。

昨日までの少年では、とうていなしえない動きだ。


模擬戦が終わり、剣を下ろす二人。

ティオは息を切らしながらも、心地よい疲労感に満たされる。

「やった…僕、成長できた!」

小さな声に、自信と誇りがにじむ。


レオはゆっくりとティオに近づき、肩に手を置く。

「お前…かなり成長したな」

その目には、師匠としての誇りと弟子への信頼が宿る。

ティオの胸は熱くなる。


「まだ完璧じゃない。だが、剣士としての道を歩み始めた」

レオの言葉が、ティオの心に深く響く。

「はい、師匠…これからもっと強くなります!」

笑顔で答え、胸を張る。


その夜、ギルドの宿でティオは一人、天井を見つめる。

小さな勝利、大きな挑戦、師匠との戦い――

すべてが心に刻まれ、剣士としての自信を育てた。


「僕は…剣聖になる」

小さな少年の夢は、確実に形を取り始めた。

そして、次の冒険でさらなる成長を遂げることを、

ティオは静かに誓った。

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