赤いMA(カニ)襲来!

第5話:赤いMA(カニ)

有明海の干拓地が、夜の闇に沈む。だがその静寂は、地響きのような金属音によって無慈悲に引き裂かれた。

「……ターゲット捕捉。遊びはここまでよ、マキ」


『GA-TAL GEAR(ガタルギア)』のコックピットの中で、**七海 和歌(ななみ わか)**が不敵に微笑む。彼女の瞳には、バイザー越しに数多のセンサーデータが滝のように流れ落ちていた。 

ガタニウム合金製の巨躯が、泥を跳ね上げて立ち上がる。**アニマ(Anima)**の三柱が溺愛するその機体は、夕闇の中で血のように赤く発光していた。 


一方、鹿島市内の高台。

「……おいおい、嘘だろ🌸 地震じゃねーぜ、この振動は🌸」

山本 マキは『ワラスボ・ポーチ』の震動検知アラートを見つめ、顔を引きつらせた。


「権利関係の防波堤を突破して、ついに本物の巨大ロボット……いや、巨大MAが出てきやがったぜ🌸 これはもう、あたいのハッキングだけでどうにかなるレベルじゃねーんだぜ🌸」 


「わぁぁ🌼 マキちゃん、見てだぉ🌼 大きな赤いカニさんが、お散歩してるぉ🌼」

隣で**鹿島 幸来(かしま ゆき)**が、天然全開で指を差した。彼女の『ムツゴロウ・ショルダー』が、機体の放つプレッシャーに反応してガタガタと音を立てている。


「とっても強そうだぉ🌼 でも、あんなに大きいと鹿島市のご飯を全部食べられちゃうぉ🌼 私たちが守らなきゃだぉ🌼」 


「守るって……あんな化け物、どうやって……って、おい幸来!🌸」

マキの制止も聞かず、幸来は坂道を駆け下りていく。その視線の先では、ガタルギアの巨大なクローが、実験場周辺の防壁を紙細工のように切り裂いていた。


その頃、ガタルギアの足元に近い観測指令室。

「う、うあああ! 止めてください! 近すぎます! 振動が直接私の胃壁をボコボコに殴っています……っ!」

仲田(なかた)事務局長は、床に這いつくばりながら胃薬の瓶を必死に掴んでいた。


『あら仲田さん、いい悲鳴ね。有人機としてのガタルギアの咆哮を、一番近くで聞けるなんて幸せでしょう?』

モニター越しに、開発責任者のマダム・フォルツァが愉悦の表情で告げる。 


「(通信音)……仲田、耐えろ。……マキ、幸来。敵は本気だ🌸」

泥の中から、**WRSB(ワラスボ)のシリアスな警告が響く。


「ガタルギアには、まだG-EXAM(ジー・イグザム)**という未知の強化モードが眠っている。……和歌がその力を引き出す前に、機体のシステムに干渉しろ🌸」 


「言われなくてもやってるぜ!🌸」

マキは走りながらワラスボ・ポーチを操作し、ガタルギアの足元にある泥のセンサーへとハッキングを仕掛ける。


「いくぜ幸来!🌸 真面目なメカアクションの裏で、あたいらがこの街の平和(と仲田の胃壁)を守ってやるんだぜ!🌸」

赤いMA——ガタルギアの眼光が、獲物を捉えたように激しく明滅した。

鹿島の空に、絶望と笑いが混じり合う咆哮が響き渡る。

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