幸来の干潟グルメ探訪だぉ🌼

「……ふふ、無駄よマキ。あなたの電子防壁、まるでもろくなった干潟の土手みたいだわ」

七海和歌の冷徹な声が、山本マキの『ワラスボ・ポーチ』のスピーカーから、ノイズ混じりに響き渡った。和歌は今、暗黒観光協会(K.T.A.)の秘密ドックに鎮座するガタルギアのコックピットから、超高速のハッキングを仕掛けているのだ。 


「ちっ……! 相変わらず、可愛げのない完璧なパケット攻撃だぜ🌸 あたいの『ワラスボ・ハッキングツール』の冷却ファンが、某超大型怪獣の熱線みたいに唸ってやがるんだぜ🌸」

マキは指先を火花が出るほどの速さで動かし、和歌が放つ電子の槍を弾き返す。だが、和歌の圧倒的なゲーミング・スキルとガタルギアの演算能力の前では、防戦一方だった。 


「(通信音)……マキ、幸来。状況はどうだ。アニマの追っ手を感知した🌸」

泥の中から、**WRSB(ワラスボ)**の野太くシリアスな声が響く。彼は今、タクティカル・アイピースを光らせながら、干潟の泥の中に首まで浸かって潜伏しているはずだ。 


「悪いが、あたいは今、この姫カットのサイバー・ゲーマーと遊んでて手が離せねーんだぜ🌸 おーい幸来、あんたも何か手伝いな……って、おい!」

マキが隣を振り返ると、そこには緊迫感など微塵も感じさせない、ほわほわとしたオーラを纏った鹿島幸来がいた。 


「……モグモグ……わぁぁ🌼 マキちゃん、見てだぉ🌼 さっき、ムツゴロウ・ショルダーから『ワラスボの干物』が出てきたぉ🌼 潮の香りがとっても濃厚だぉ🌼」

幸来は、恐怖の象徴であるエイリアンのようなワラスボの干物を、幸せそうに頬張っていた。 


「……な、幸来! あんた、今この状況で飯テロかぜ!?🌸 権利関係に厳しいマダムたちの刺客がすぐそこまで来てるんだぜ!🌸」

「(通信音)……幸来、今は作戦行動中だ。食べるのをやめろ。……いや、待て。その香ばしい匂いは、鹿島市名産の……くっ、私のアイピースが食欲のノイズを検知して……🌸」

泥の中のWRSBさえも、幸来の「鹿島愛」に溢れたグルメ攻撃には抗えない。 


「和歌さんにも、お裾分けしてあげたいぉ🌼 はい、あーん、だぉ🌼」

幸来が干物をカメラのレンズ(という名の、和歌へのハッキングの入り口)に差し出した瞬間。


「なっ……!? 何よ、この非論理的な高周波振動は……!? 私のバイザーに、ワラスボのグロテスクな断面図がフルHDで転送されてくるわ……っ!」

和歌の完璧なハッキング・シークエンスが、幸来が発する「幸福な咀嚼音(ASMR)」と「干物の高周波データ」によって激しく撹乱された。


「……チャンスだぜ🌸 幸来の天然グルメが、和歌のプロテクトを物理的に、いや、生理的にぶち抜いたんだぜ🌸」

マキはその隙を逃さず、カウンターのウイルスを叩き込む。


「(通信音)……よし、アニマの監視カメラをジャックした。……仲田(なかた)、今だ。胃薬を飲むふりをして、予備の回線を遮断しろ🌸」

その頃、協会の事務室では、仲田事務局長がマダムたちの視線を避けながら、震える手でプラグを引き抜こうとしていた。 


「ううっ……胃が……。私の胃壁が、ワラスボの牙で噛まれるより痛い……。ですが、アニマの御心のままに(裏切り中)……!」 

バチンッ、という音と共に、和歌の通信が途絶した。


「……っ、マキ、幸来。今日はここまでにしてあげるわ。でも覚えておきなさい。ガタルギアの真の力……G-EXAMが目覚めた時、その程度の干物では私の執念(アニマ)は止められないわ……!」 

和歌の捨て台詞と共に、電子の嵐は去った。


「……ふぅ。なんとか助かったぜ🌸 だが、幸来……あんた、それ一袋全部食っちまったのかぜ?🌸」


「おいしかったぉ🌼 次は、竹崎カニさんも食べてみたいぉ🌼」

幸来ののんびりした声に、マキは深い溜息をついた。これはまだ物語の、まだほんの入り口。鹿島の平和と仲田の胃壁を守る戦いは、始まったばかりなのだ。

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