あたいのポーチが火を噴くぜ

「……よし、セーフだぉ🌼 饅頭さん、無事にお家に連れて帰れたぉ🌼」

鹿島市内の幸来(ゆき)の自宅。幸来は『ムツゴロウ・ショルダー』から、先ほど着ぐるみのムツゴロウさん(中身は瀕死の仲田事務局長)からもらった『ガタニウム饅頭』を取り出し、ほわほわとした笑みを浮かべていた。 


「幸来、あんたそれ食う前に中身をよく確認した方がいいぜ🌸 あの着ぐるみの執念が煮詰まって、呪いの毒電波でも発信してたら目も当てられないんだぜ🌸」

傍らで、山本マキが愛用の『ワラスボ・ポーチ』から小型のホログラムディスプレイを展開させながら毒づいた。彼女の指先は、ゲーマー特有の超高速タイピングで空中を舞っている。 


「わぁぁ🌼 マキちゃん、画面がチカチカしててかっこいいぉ🌼 呪いなんてないぉ、これは鹿島市の愛だぉ🌼」


「愛で済めば警察はいらねーんだぜ🌸……っておっと、なんだこれ?🌸」

マキのポーチが、幸来のショルダーバッグに反応して警告音を鳴らした。


「ショルダーの底に、明らかに『饅頭の原材料』じゃねー高エネルギー反応があるぜ🌸 幸来、ちょっとそのバッグを貸しな🌸」


「はーいだぉ🌼 泥んこ遊びの道具しか入ってないはずだぉ🌼」

マキが幸来のバッグをひっくり返すと、中から転がり出たのは饅頭ではなく、鈍い銀色に輝く一枚のマイクロチップだった。そこには小さく、そして禍々しく『K.T.A. / G-EXAM PROJECT』という文字が刻印されている。 


「……これ、観光協会が極秘で開発してるっていうMA(機動兵器)の基幹データチップじゃねーか🌸」

マキの目が、プロゲーマーがレアアイテムを見つけた時のように鋭く光った。


「ちょっと解析してみるぜ🌸……ふん、プロテクトがガタガタだぜ。あたいの『ワラスボ・ハッキングツール・試作零号機』にかかれば、こんなの某有名配管工のジャンプくらい単純なロジックなんだぜ🌸」

マキがポーチとチップを接続すると、空中に膨大なコードの羅列が投影された。


「……『プロジェクト:G-EXAM』。機体のリミッターを解除し、有明海の泥のエネルギーを精神波に変換するシステム……。おいおい、これなんていう某宇宙世紀のニュー〇イプ専用機だぜ?🌸 権利関係の壁を全速力で突き破りにいってる設定に、あたいの胃まで仲田事務局長並みに痛くなってくるぜ🌸」


「わぁぁ🌼 難しそうな言葉がいっぱいだぉ🌼 マキちゃん、これでおいしいムツゴロウの煮付けの作り方がわかるぉ?🌼」


「わかるわけねーだぉ……じゃなくて、ねーだぜ🌸 幸来、あんたの語尾がうつりそうだぜ🌸」

マキは頭を抱えながらも、さらに解析を深く潜らせていく。


「……ん? 起動コードのセクションが暗号化されてやがる。えーっと、コードネームは……『CICO(チコ)』?🌸 なんだか懐かしい響きだぜ🌸 この名前、どっかの伝説的なユニットの……って、これ以上はあたいの口からは言えねーぜ🌸 大人の事情っていう見えない力が働いて、この物語自体が打ち切られちまうんだぜ🌸」 

その時、マキのポーチが激しい警告音を上げた。


「……ちっ、バックトレースだぜ!🌸 協会のセキュリティチーム——いや、あのゲーマー女子・和歌(わか)が嗅ぎつけてきやがったぜ🌸」 

ディスプレイに、赤いカニのような機体——ガタルギアのシルエットと、七海和歌のハンドルネーム『@WAKA_7th』がポップアップした。 


「『見つけたわ、マキ。人の大切な宝物に無断でアクセスするなんて、マナー違反よ』……だそうだぜ🌸 どの口が言ってやがるんだぜ🌸」

マキは不敵に笑い、ポーチの出力を最大に上げた。


「幸来、のんびり饅頭食ってる場合じゃねーぜ🌸 敵のパケットが物理的な衝撃(物理)を持ってここに押し寄せてくるぜ🌸 これはもう、ゲームの対戦ロビーじゃねー。現実(ガタ)の戦場だぜ🌸」


「わぁぁ🌼 戦うぉ!🌼 私のムツゴロウ・ショルダーが、なんだかガタガタ震えてやる気満々だぉ🌼」


「それは単に和歌の機体からの振動だぜ🌸……来るぜ、鹿島市の平和をぶち壊す、アニマの飼い犬共が!🌸」 

窓の外、夕闇に包まれ始めた鹿島市の空を、一筋の赤い光が切り裂いていった。

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