響界線の風

みぃ

愛しい風







あの頃の君は知っていただろうか


僕らを取り巻くこのメロディが


どれほど奇跡に近い心地よさだったかを


​そよ風に手引かれるように


僕と君は巡り会った


風の背に乗って 君は僕の孤独へ


ふわりと舞い降りた


​ざわめく木の葉の囁きを


子守唄代わりに


ただ 自然の呼吸を分かち合う


​何もない ことが こんなにも満ち足りている


幸福の正体を 僕は初めて知ったんだ


​折り重なる木の葉のベッド


意外な心地よさに 僕らは顔を見合わせて笑う


森の光に抱かれ 静かに季節が巡る


このまま時が止まればいいと 本気で信じていた


​けれど 気づいてしまった


君の瞳の奥に揺れるひどく透明な終わりを


この日々が 永遠ではないという残酷な予感


​君は刹那を生きる者


風に乗り 僕を救いに来た「風の妖精」


君には 僕の知らない帰るべき場所があって


果たすべき使命があった


​響き渡る木の葉のサヤサヤという歌


僕らを包んだ黄金色のベッド


君が教えてくれたのは


形のない 時間 の愛おしいほどの輝き


​短い夢のような つかの間


​気づいたときには もう


言葉にできないほど 君を愛していた


​二度とは聴けない あの日の風の音


今日も世界には風が吹くけれど


ひとつだけ 確かなことがある


​君はもう、僕のところへは帰らない


​いまも空を探してしまう


せめて君の香りを孕んだ あの風を聴かせてほしい


響き合う境界線の向こう側


哀しいほど鮮やかな


愛の記憶と共に


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

響界線の風 みぃ @miwa-masa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ