第3話
「いつも思うけど、これってやってることってたぶん抽出に近いよね。作業がしやすいように整地したりはするけど、おれたちが地面掘り起こすわけじゃないし」
呟きつつ、海流に流される前に専用の収納ケースへしまい込めば、簡易解析は良好の数値を叩き出す。言ったとおり、今回一番の結果が期待できそうだ。
おれはそのまま次の星を掴みに向かった。流れに身体を乗せれば、装置が発する細かな気泡と光が混ざって尾鰭のように流れて行く。
暗がりを魚のように進むおれの疑問には、スピーカー越しでノールが答えた。
「昔は岩を砕いたり坑道作ったり、星全体を掘り起こして本当に採掘作業もしてたからな、その名残だろ。そこまでしても鉱脈枯らすだけだから、やる必要も無いって結論が付いてからまだ百年も経ってないっていうのはどっかで読んだな」
「結構最近だ」
「うん。発見されてから千年以上も使われてるのに、星の中にある状態だとまだわかんないこと多いからな、
人類が母なる星を旅立って、太陽系を僅かに離れた頃に発見された夢の物質は、その頃人類が思い描いていた空想を全て現実にしたという。
あらゆる物理法則を僅かに歪め、光を越え、星を渡り、拓く術を与えたそれは、人類の宇宙への進出速度と発展を加速させるために必要不可欠となって久しいモノになった。
希少な物質は貴重な素材に使われるところから始まり、地球時間というヒトが唯一宇宙へ連れ出した時間の数え方で数百年という時を経て、今や生活の中にある機械と名の付くものには必ず使われていると言っても過言ではなくなっているくらいだ。
今おれが着ている特殊スーツもそれにあたる。
でも。発見されて今に至るまで、なぜか人の目にしか捉えられず、人の手でしか掴み取る事が出来ない物質っていうのは変わらない。
機械には感知されないし、もちろん触れることすら不可能だから、こうして採掘師の手を使って取り出しているというわけだ。
たとえ、鉱脈がどんな過酷な環境下にあったとしても。
渦巻く水流をやり過ごし、おれは視線をさらに海底へ向けてみる。
疑似銀河の流れが続く先には、青白く燃える星団に似た強い光があった。
「……ノール、見える? もっと深いとこ。強い反応がある」
誘われる。招かれている。危険な場所とわかっていても、手を伸ばしたくなる。
ざわつくおれの気持ちは言わずともノールに伝わったらしい。
笑うように、ノールは行けと指示を出す。
「ああ見えてる。作業時間限界まで残り二時間切ったからな、それまでに帰れよ!」
「え、もうそんな過ぎてたの。もう少し貴方の装備と向き合ってたかったんだけど。じゃあ集中して行くよ。もしホントに忘れてたら、……ちゃんと呼んでね。ノール。お願い」
「わかったよ! ――……気をつけて、ヴァル」
僅かに甘く聞こえた返答を耳に、その熱を身体全体に行き渡らせて、おれは採掘作業に集中する。
意識は身体を巡って指先へ。
採掘作業と採掘師自身の適性を補助する装置と、その中に込められた愛しい人の思いや願いと共に、おれは海の底に散らばる光の欠片を掬い上げてつかみ取る。
光り輝く星の未来に繋がるのなら、そのために。
それがおれの役目だと信じて、おれはこの仕事をずっと続けている。
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