第2話
とある銀河のとある星系。その中にあるのがここ、惑星ムーサ。
星全体を水が覆う海の星。
人の手が入るより前に強い風と高波によって地表はみんな削られてしまっていて、大気に触れている地面と言えるのは点々と海面から飛び出た島程度だ。
外から見ればこの星は人が地表で暮らすことの出来ない星。なんだけど、けれどそこには街があり、人が居て、二百年近く重ねた歴史もある。
拓かれたのにはもちろん理由がある。それが無ければこの星は、大きな星と星を繋ぐ航路の中継地、水の補給基地程度で使われる辺鄙なところ扱いで終わっていたはずだ。
人を寄せ、栄えさせ、広い宇宙に名を知られるまでに至ったその理由っていうのが。
「鉱脈に到達。これから
おれの目には、夜空に散らばる星の群れのように見えるモノ。
『
「了解。――酸素の限界は三時間。忘れるまで没頭するなよ!」
「わかってる。でも、もしおれが忘れそうになったら引き戻してね。貴方が呼んでくれたら、おれはすぐ貴方の所へ戻るから」
「はん。どうだか。お前、前に一度ギリギリまで潜って怒られてただろ」
「何年前のハナシしてるのさ」
「何年前だかは忘れたけど。あの日のことはよーく覚えてるよ」
「ホントかよ」
「……そこ疑うなら帰ってこなくて良い」
「ちょっと! おれだってしっかり覚えてるから言ってるんだよ? だって、あの日はおれが初めて貴方を抱いた日で……」
「そこまで言わなくていい! バカ!」
怒りと焦りと照れ混ざりの怒鳴り声に背中を押されて声を上げて笑った後、程よく溶けた緊張は背中に、それ以上の高揚感は胸に従え、おれは視界の中の星へと手を伸ばす。
空に輝く星なんて、実際近づいて見れば燃えたぎる恒星か大きな岩かガスの塊で、大きければ大きいほど容易に近づくことができなくなるものだ。でも目の前にあるそれは、夜空を眺めて思い描く星の欠片のまま指に絡んでくる。
視覚の中に宇宙をつくる光の群れに指先を滑らせて、手繰り寄せ、引き寄せ、まとめ上げて大きな結晶にする。その行為をおれたちは『採掘』と呼んでいた。
触れたときにはかたちのないものが掌の中で確かな質量を生み出す不思議な感覚は、その言葉が持つイメージとはかなり違いがあるけれど。
その採掘を行えるだけの適性を強く持ち、生業にしている人を『採掘師』という。
おれもその採掘師。
熟練と言うにはまだ遠く、かと言って新人というにはちょっと古びた方のうちの一人だ。
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