第5話 通りすがりのチャンピオン(主人公視点外)
「ねぇねぇ刑武君楽しい?」
「楽しいよ!!カードショップってこんなカードがあるんだね!!」
「そうだよ!!いっぱいあるんだよ!!」
小学生が楽しそうに会話している。
「おい。ミツル。見ろ。あいつは、バケモンだ」
「何を言ってるんだ?ファボック」
俺のカード精霊がいつもより真剣に先程の少年を見ている。
「あいつ、やばいぞ。今まで戦った奴との次元が違う」
「そんなにか?到底俺にはそうは見えないが」
「あぁ。今の俺たち──いや、覚醒状態でも勝てる気がしない…」
「はぁ!!嘘だろ」
「あぁ、お前はデッキオーラが見えないだっけな。見えなくて正解だよ」
「そんなになのか」
気づいたら俺は先程の少年を目で追っている。一緒に来ていた女の子と楽しそうにストレージを漁っている。
「ねぇ刑武君。私のデッキの相談に乗ってよ」
「えぇ〜楠木さんの?楠木さんクラスで2位だから良いじゃん」
「1位とは圧倒的に差は開いてるけどね」
「そんな目で見ないでよ〜」
「ねぇ、折角だしファイトしようよ。一回で良いから刑武君の本気みたい!」
「えぇ、つまんないよ?」
「うん!良いの私見たいの!もし、刑武君が勝ったら私が今日のお昼ご飯代出すよ!で、もし私が勝ったらデッキのアドバイスいっぱいしてね!」
「うぇぇ!良いよお昼ご飯代は自分で出すから。勝ってもアドバイスするよ」
少年は少女のジトーっとした視線に押されたのか、観念したようにファイトスペースへ向かった。
「ミツル。見た方が良いぜ。俺らのファイトとは次元の違うデッキだ」
黙って頷いたが、正直当てにしていない。
「「レディ・ファイト!!」」
「私の先行!ファイア・カーバンクルを召喚して、山札から5枚を墓地に送る。墓地からの復活の効果を発動!このカードが墓地に送られたターンに送られたカードを手札に加える!これで私はターンエンド」
「俺のターンだね!ドロー!…楠木さん。怒らないでね。僕の勝ちになっちゃったよ」
は?後行ワンターンキルだと…?そんなバカな。昔は、いや、戦国時代はあったようだが今この時代ではほぼ不可能だと言われているのに…。
理論上は成立する。だが、それは完璧な手札・完璧な引き・完璧な構築そのすべてが揃った時だけの机上の幻想だ。
少なくとも、現代環境では実戦で成立した例は片手で足りる。100年経っても例は片手で数えられる。
「いや。ミツル。後行ワンターンキルとかの次元じゃないから見ておけ」
なっ!!
「もう!!刑武君。私がただで負けるわけじゃないじゃない!それで、負けたって怒ったりしないよ!!もう!!」
「わかったよ。全知全能の神ミヒャルデを召喚!」
「私の手札から天地逆転を発動!全知全能の神ミヒャルデの召喚を阻止する!」
「全知全能の神ミヒャルデが阻止された時に山札から悪虐神ミヒャルデを召喚。デッキから10枚を墓地に送る!墓地に送られた、ミヒャルデの神話、ミヒャルデの羽、ミヒャルデの花束の効果を発動!まずは、羽の効果で手札の天使の護衛1と2と3を場に出す。花束の効果でファイア・カーバンクルを破壊!神話の効果で墓地のミヒャルデを手札に戻す!そして最後だ!手札の全知全能のミヒャルデの効果を発動!墓地から手札に戻った際に、自分の場にいるミヒャルデと名のつくモンスターはポイントを全て破壊できるオールブレイカーになる」
なっ!!本当に後行ワンターンキルするのか!!
「悪虐神ミヒャルデでアタック!そして、天使の護衛1でダイレクトアタック!これで俺の勝ちだー!」
あり得ない…。なんだ、あの展開力からのキルスピードは…。
これは勝負とは言えない…。勝負と呼んではいけない…。ほぼ蹂躙だ…。
俺は最年少、18歳でワールドチャンピオンになった。
今まで戦ってきた強敵との試合はいくつも思い出せる。だが、この少年の戦いを見ると今までの試合は全てお遊戯に見えてしまう。
そう見えてしまう。相手の少女の手札事故があってあまり展開出来ていなかったのかもしれない。だが、だからと言ってあの展開力…。
俺はこの子に勝てるだろうか…。
---悪虐神ミヒャルデ---
私は世界を恨む。例え周りが許したとしても。
---作者から---
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