第4話 「俺のヒーロー(前編)」

カランカラン 咲夜「邪魔すんぞ〜」


日野「邪魔するなら、【行ってらっしゃいませ旦那様】(意味:お帰りください)」


咲夜「待って??!仮にも俺、ここの用心棒だぜ!?塩過ぎね!?!」


日野「そう言えばそうでしたね…」


咲夜「日野ちゃんは俺のこと、なんだと思ってたん???」


日野「【カレー大好き常連の、狂犬病にかかったドーベルマン】」


咲夜「後半解せねぇんだが!?!?」


日野「今日もカレー目当てですか?」


咲夜「いや、野暮用で夕立に用があってよ。アイツ、いまどこにいる?」


日野「店長ならいまスタッフルームで着替え中ですね」


咲夜「おっけー、ちと急ぎだから邪魔すんぞ」


日野「っえ!♡入るんですか!?夕立くんの着替え生シーンに!?咲夜さんが!?」


咲夜「なにをかんがえてるんだなにを!男同士なんだから別にいいだろ」


日野「はい、だからこそ、イイと思います♡(じゅるっ♡)」


咲夜「お前はその勝手なBL妄想癖直せっ!」


日野「咲夜×夕立。うん、新しいジャンルに目覚めた」


咲夜「目覚めんな目覚めんな!!ったく、いいや構ってらんね、入んぞ、夕立ー、」


夕立「えっ、あ、はい、ちょま、」


そこで目にしたものは。 心臓がドクンと強く跳ねることを避けることは出来なかった。


咲夜「おい、夕立………、なんだ。その、………【腕に広範囲についてる火傷の跡は】」


夕立「っ………」


頭が沸騰しかける。 あの日、あのとき、あの夜。


【星矢から聞いた、群三と壱馬の、使用人に対する悪行の数々ーーー。まさか、まさか!!!あいつら、夕立にまで!?】


夕立「ーーおおかた、群三さまや壱馬さまにされたものと誤解されてるとおもいますが、ちがいますよ。もっと子どもの頃のものです」


咲夜「そ、そうか」


安心したような、なんというか。


安心するのは不謹慎なのはわかっていても、とりあえず、【俺らトリオが守れなかったものの象徴】がさらにカウントされたわけではない、ということにはつい安心してしまう。


咲夜「つか、ガキの頃にそんな大火傷って、それもそれで普通じゃねーぞ?お前んとこ、母子家庭で母親入院中とはいえ、良心的な母さんだろ。虐待の線もなさそうだし、なにがあっ、ーーいや、すまん。入り込みすぎた」


夕立「構いませんよ、どうせそのうち、【ヒーローの武勇伝】として、いつかは優真が語り出すんでしょうし」


咲夜「優真?アイツになんか関係あるのか?」


夕立「この火傷は……俺らが12歳のときについたものです」


咲夜「っ!!?未奈さんを喪ったときの火災か、まさか!!」


夕立「はい。あの日、優真はたまたま学校で友達と盛り上がりすぎてて下校時刻を大幅に過ぎてしまってました。俺も一緒にいたので、ともに帰ってたとき、のことでした。」


咲夜「すまねぇ、もし可能なら、辛くならない程度に話してくれないか」


夕立「承知しました。」



ーーー ーーあれは、12歳の年の、5月半ばのことでした。



(以下、夕立、優真、ともに子供時代)


優真「そんでよ、そのときー、」


ユカリ「うっけるー!」


ショウジ「お前天才なのなやっぱり!」


カズヤ「明日給食のとき班のみんなにも話してよ!」


夕立「お、おい優真。そろそろ帰ろうぜ?下校時刻どれだけ過ぎてると思ってるんだ?」


優真「えっ!もうこんな時間!?やーーっべ!!かーちゃんに怒られちゃう!」


夕立「俺だって母さんに怒られちゃうよ。ほら、もう帰るぞ、優真」


優真「おう!じゃあな、ユカリ、カズヤ、ショウジ!また明日なー!」


「うん、またねー!」


(下校中)


優真「そういえばよ、ゲン、かーちゃんが近々またカレー作ってくれるらしいぜ!なんならお裾分けしてやろーか!?」


夕立「ええっ、悪いよ。いいよ、それにうちのお母さんも、未奈おばさんからレシピ習ったって言ってたし」


優真「本場のかーちゃんカレー、たまには食え食え!」


夕立「ん、じゃあ、お言葉に甘えて、母さんに貰ってもいいか相談してみるね」


優真「おう!かーちゃん、きっと張り切って作ってくれんぜー!ゲンの一番好きなとの、かーちゃんのカレーだって聞いたしな!」


夕立「ははっ、バレてんのかよー(笑)」


(ーー優真。 俺が一番好きなもの。


それは、



ーーーお前のことだ、って言ったら。 きっと引いちゃうよな?



あの2年前の誘拐のとき、いや、きっと初めて、孤立してた俺に優しく声かけてくれたとき。 もう、そのときから俺はずっと。


ーーーお前のことしか。好きになれる気がしないんだ。 でも、この想いは封印するよ。


一生。出すつもりはない。


でも、一生。捨てるつもりもない。)





優真「そろそろ、帰り道デートもおしまいかー。あそこの角曲がったら、あと俺んちまで一直線だもんな」


夕立「っっ!!?デ、デート!?お、おまっ、そ、そういうとこだぞ!?」


優真「んぁ?」


夕立「ーーーー!!!/////」


(わかってる。優真にその気は微塵もないこと。三カ月前もバレンタインいくつもらえるかワクワクしてた。


あいつの恋愛対象は、女の子。


そんなのこと、わかってる。わかってるけど、こうやって無自覚爆弾を冗談ノリで出されると心臓に、)


優真「………なあ、なんだ?あれ?」


夕立「……え?」


見えてくるのは。

優真の家のあたりから。


ーーー立ち上る黒い煙。



「「っっっ!?!?」」


刹那、優真が飛び出して駆け出していった。


優真「かーちゃん!?かーちゃん!なあ、無事なんだろ!?」


夕立「まて落ち着け!優真!きっと消防にも連絡は、いってるはずだ!それに、まだ優真んちとは限らない!」


優真「かーちゃん!かーちゃん!!」


優真んちとは限らない。 その願いは、祈りは。



人だかりが集まっていて、その視線の先には、燃えている「五十嵐」の表札がついた一室を目の前に簡単に砕かれた。


優真「かーちゃん!なあ、かーちゃんは!どこ!?」


消防隊員「火の勢いが強すぎて、中に入ることはすぐには難しい、キミはここの息子さんなのかね?お母さんがまだなかにいるかもしれないってことか!?」


夕立「未奈おばさん!未奈おばさん!!無事避難できて観衆のなかにいるなら返事してください!未奈おばさん!!!」


ーー返事は、ない。


優真「かーーちゃぁぁぁん!!!」


ランドセルを置いて優真は部屋の中へと飛び込む。


夕立「ばっ、ばか!!優真ぁ!!」


消防隊員「まずい!!緊急連絡!子どもが1人、火の中に入っていったぞ!!とにかく、お友達はおじさんたちが必ず助けるから、キミのほうは落ち着いて、


ーーいない?


くそ!続報です!その子を追いかけてさらに子どもがひとり突入!中に子どもがふたり飛び込みました!!!」


夕立「優真ーー!!!」


(5話、「俺のヒーロー」(後編)につづく!)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る