第2話 光のパリピと呪われた血筋

———沈黙。


男たちは、目の前の、30も半ばも過ぎた【若者】の異様な気配を察し、軽口は控えめになっている。

乾杯の合図すらも阿吽の呼吸で省略され、各自ひとくち、ふたくちと染み渡らせる程度にたしなんでいく。

手の付けられてない鍋の温かみが部屋に充満するが、3人の男たちの空気はその温かさに影響されることはなく、鋭い空気圧を放っていた。



———ひとり、重い空気をやさしく切り裂くように声を発する。


「咲夜くん?キミが緊急会合というなんて、珍しいね?どうしたのでしょうか?」


「おうおう、咲夜。トリオ会合はこないだしたばっかだろうが。まぁ、てめぇからの呼び出しならカシラ同士の会合だろうが、んなもん差し置いてでも飛んできてやるがな。で、何の用だ?」


咲夜「お二方に、ご報告しなければならないことがあります」


「何でしょう?改まって」


「もったいつけやがって。なんだ?腹、くくらなきゃならねぇ話か?」


咲夜「はい。極めて重大な話です。ーー利人さん、いいえ。【紫暮財閥、分家トップ。事実上の総帥である、紫暮利人さんにとっても】、」


利人「(ぴくっとメガネの奥の瞳が鋭く光る)」


咲夜「その紫暮家とは代々の付き合いがある、【昔ながらの極道一家、裏のトップ。ーー龍崎組の龍崎幻夜さんにとっても】」


龍崎「・・・(目が険しくなる)」


咲夜「下手すれば、世界に影響を及ぼす話です」


利人「・・・聞きましょう」

龍崎「‥‥話せ」


咲夜「先日、SSSに行った時の話です。ーーー」




龍崎「……そりゃあ、そのガキは郡三の息子だろうな。間違いねぇ。だが、言う必要はねぇ。紫暮の本家は、闇も業も、深すぎる。ガキが知らねぇままでいられるなら、それが一番だ。咲夜。そいつの人生を血でねじ曲げるようなこと、俺は絶対にさせねぇ。……お前も、そう思ってるんだろ?利人坊ちゃん」


利人(静かに頷きながら) 「後継者問題で不安があるのは事実です。ですが、私の兄、本家当主郡三による、・・・あえて言葉をぼかしますが。愚行からくる、【認知されていない子】、それも、若い子の中ではかなり知名度のある人気者であるという話ではありませんか。その子をいまさら、紫暮に戻せば大きなスキャンダルです。証明された血筋なんて、何の意味もありません。」


利人「・・・その子は【五十嵐優真】として生きてきたし、それ以上でも以下でもありません。【紫暮】に引き戻す必要はない。――むしろ、引き戻してはいけない。今後、何かが動き出す前に……彼を、彼のまま、守れる環境を整えましょう。咲夜くん。君が守ってきた【SSSという居場所】こそが、今のあの子にとっての重要な防壁です。引き続き、SSSの用心棒として、彼を見守ってやってください。」


咲夜「承知いたしました。(心の声)( 未奈さん……。 あなたに受けた御恩、生涯忘れることはありません。あいつは、優真は。どんな血を引いてようが。「ただの五十嵐優真」で居続けられるように――俺が、<<絶対に守ります>>)」


利人「気になるところといえば、・・・「狭心症」、ね・・」


龍崎「紫暮本家の血ぃ引いてて、若くして狭心症、だぁ?んなわきゃねぇだろ。「アレ」に決まってる。おい、咲夜、利人坊ちゃん、直ちに適切な医療機関とこっそり連携取ってやれ」


利人「当然です。彼の命にかかわることだ。最優先事項として対応しましょう」


咲夜「実働は、俺が担います。うまいこと、「アレ」に対応できる医療機関へと、悟られずに誘導しましょう」


利人「頼みますよ」


龍崎「ちっ。厄介なもんだな・・。呪われた血筋・・、いやすまねぇ、利人坊ちゃんの前で言うもんじゃなかったな」


利人「構いません。事実ですからね。私も、この病のせいで、ずいぶんと人生振り回されてきました。--ある意味、郡三兄さんも、その正当な嫡子でありながら遺伝に恵まれなかった壱馬君も、それに振り回された人間といえるでしょうね」


咲夜「「アレ」ね・・。紫暮の正当な血筋であることの、これ以上ない証明であり、本家後継者に必須条件である…、「常態染色体遺伝病の、通称:紫暮因子由来による心臓病」、か・・。優真・・。逃げ切れよ、紫暮の呪われた血筋の業なんかからよ・・」



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