紫暮財閥物語<シーズン1>~いってらっしゃいってえがおで~
せら
第1話 <いってらっしゃいって、えがおで>
咲夜「あーーーあっちぃ」
うだるような猛暑。
何でも屋の営業の帰り。
暑苦しいスーツ着て、暑苦しいひとごみだらけで。
信号のちょっと先すら陽炎がゆらめいていて。
あーー、駄目、これ、熱中症でぼんやりしてんのか、陽炎なのかもわっかんね。
咲夜「近いし‥せっかくなら寄ってくか」
執事喫茶SSS(トリプルエス)。
超巨大財閥、あの紫暮家につとめていた、本格執事とメイドたち数名が、紫暮家本家全焼事件で当主郡三とその唯一の子だった壱馬を喪ったのを機に、紫暮をやめて資本を出し合って建てた店。
ま、あのふたりは相当ひでぇやつらだったし、むしろ因果応報、ってな。
そして!なんたって俺はSSSの用心棒さま。
しかも支配人はガキのころから一緒にやんちゃしてた幼馴染ときたもんだ。
創設スタッフは、みーーんな俺の、・・・。
・・やめた、あほらし。
ま、水のいっぱいもたかる権利くらいあらぁな。ついでにあの店のカレーも食ってくか。
スクランブル交差点に差し掛かる。
紫暮の分家直轄のデパートにある、でっかいビジョンには、紫暮の系列がプロデュースした有名女優が、紫暮の開発した商品の説明をして・・。
本家つぶれていまや、分家のトップが実質運営していても、今も隆盛ときたもんだ。
やっぱ・・。すげぇな、紫暮って。
ま、いいや。いまの俺には関係ないさね。
カランカラン
「「おかえりなさいませ御主人様」」」
咲夜「ん、ごくろ」
東條「なんだ咲夜か、随分と汗かいてるな。待ってろ、すぐ水出す」
咲夜「さんきゅー、星矢。今日は暑くてたまったもんじゃねぇや。ん?」
柚原「ーーで、ーーーだから」
咲夜「んだ?柚原のやつ、教育係デビューか?(にやにや」
日野「しーっ、真剣なんでからかわないであげてくださいね」
咲夜「なーんも、邪魔なんかしねーよ。にしても、なんだ?教えられてるやつ。随分と雰囲気明るすぎて執事って感じミリもしねーだろ」
日野「なんか、うちの期待の若き店長、夕立くんの幼馴染らしいですよ?バイトしたくてしたくて、らしくて。でも東條さんから許可は出なくてで。で、夕立くんの管理下でならオッケってことになったらしくて」
咲夜「いや、情報の大洪水すぎんだろ、意味わかんねぇよ!?そもまずなんで星矢許可出さんかったのよ?支配人がそんなに言うってことはよっぽどやべーやつなん?」
日野「あ、違います、あのいま指導受けてる彼、夕立くんと同居することになって。その流れで法的に東條さん、彼の未成年後見人になったらしいです。夕立くんとセットで。一人も二人も変わらんって言ってました」
咲夜「いや変わるだろ。いやそれ、だいぶ変わるだろ!?あいつ何、馬鹿なの!?」
日野「まあ、かわいいかわいい弟分の夕立くんにとって守りたい人だからじゃないですか?」
咲夜「限度ってのをあいつは学べ。何が悲しくて未成年後見人にほいほいなっちゃいけませんって幼なじみに釘刺さにゃならねーの?仕事増やさないで?割増賃金もらうよ?」
日野「私の給料からでなければ好きなところからいくらでも」
咲夜「相変わらずなのな、そゆとこ・・」
日野「というわけで、支配人としてじゃなくて、未成年後見人として許可降りなかったらしいです」
咲夜「あら。そらまたなんで?」
日野「咲夜さんなら遅かれ早かれ知るとおもうんでリークしちゃうと、彼、狭心症なんですって。それで負担かかるからってコンビニバイトは東條さんの許可降りなかった、と」
咲夜「んだよ、星矢のやつ、ちゃんと保護者してんじゃねーか。ならちょっとホッとしたわ」
日野「それでもって食い下がられて、まあ社会勉強もあるからってことで自分らの目の届くとこならってやってみることにしたらしいです」
咲夜「なーるほどね。若いのに大変なことで。———ん?いや、待て。やっぱおかしくね?唯一の保護者である、母親が入院中の夕立は、星矢が代理で保護者すんのはまだわかる。じゃあアレは?」
日野「んー、流石にそこまでは私の口からペラペラ言うことじゃないんで。普通に聞いてみたらどうです?彼。思った以上にオープンですよ?危なっかしいくらいに」
咲夜「それ聞いて俺もなんか胃が痛くなってきたわ。星矢のやつ、危なっかしいくらいにオープンなやつの後見人してんのぉ‥‥?くわばらくわばらっと」
日野「あ、いま休憩入るっぼいですね。柚原くん、優真くん、こちら、用心棒の咲夜さん。ご挨拶して」
柚原「あっ、咲夜さん!こんにちはっ」
咲夜「おう」
優真「用心棒!?なんかすっげーすね!?テレビのなかの概念だと思ってた!!え、めちゃめちゃ強かったりするんですか!?」
咲夜「ふっ、ま、そこそこかな?(笑)」
柚原「いいから挨拶!」
優真「あ、はいっ!はじめまして!これからヘルプとして週一から入らせていただきます、五十嵐優真っていいます!よろしくおねがいしまーす!!」
咲夜「ん、元気なのはいいこと。とはいえ、ここは執事喫茶だ。もーちょい、トーン落とせたらいいな?俺は咲夜。SSSの用心棒だ。よろしく。まあ頑張れ若人よ」
優真「はーいっ!」
咲夜「トーン」
優真「はい(ささやくように」
咲夜「だいじょうぶなのか?こいつ????そういや、なに、星矢がいま親代わりなんだって?」
優真「え!東條さんとお知り合いなんですか?!」
咲夜「逆に支配人と用心棒の関係でなんでどこ見て見ず知らずの関係だと思った!?」
優真「っ!いわれてみたらたしかに?」
柚原「すみません、、悪いやつじゃないんです。悪いやつじゃ」
咲夜「それは伝わってる。むしろそれだけはな??で、おまえさんなんで星矢が後見人なんよ?親どうした?言いたかなきゃいいんd」
優真「あっ、俺孤児なんでっ♪♪母子家庭だったんですけど小6の時にかーちゃんは火事で、」
咲夜「明るく言うな食い気味でいうな躊躇いはねーのか躊躇いは!!??」
日野「そういう、子なんですよ」
咲夜「なんか俺の負担この先増えそうな予感してきた」
優真「気のせいじゃないっすか!?(にぱっ」
咲夜「おめーがいうな!!!」
優真「咲夜さんっ、トーン。トーン大事ですよっ!?」
咲夜「もういやこの子っ!?!?」
ゲン(夕立)「ほぼ店内には身内しかいないとは言え、ちょっと気が緩みすぎてないか?」
柚原「あっ、店長!」
日野「うんうん、店長、おおきくなったね、こんなに成長して」
ゲン「やめてください日野さん・・」
咲夜「ほんっとだぜ、夕立と初めて会ったときはまだこーんな(指開いて)くらいだったのに」
ゲン「なわけないでしょうっ!?」
優真「そうなの!?四年三組時代から知ってる俺でも、さすがにそこまでちっちゃかったころのゲン、知らねーや!すげぇ咲夜さん!!(おめめきらきら)」
ゲン「人の話聞け!?そして騒ぐな!ったく、あんまり言う事聞かないと、」
優真「え?、なに?、こわい」
ゲン「未奈おばさんの仏壇に延々とお前が残したピーマンと人参積み上げていくぞ」
優真「どシンプルにやめて!?」
なぜか。 その名前に懐かしさで一瞬止まった
未奈……………?
五十嵐未奈…………?
俺の恩師。心の師。
俺の直属の上司兼、シェアメイトだった先輩と実質両片思いで、
・・なのに突然退職、失踪した、大切な——
——仏壇、ね。まぁ、同姓同名ってやつか?別によくある名前だしな。でもまぁ、やっぱ思い出しちまうなぁ・・
優真「咲夜さん?」
咲夜「ん、ああっ。いや。なんでも。古い知人思い出して感傷的になってただけだ」
優真「えっ………こころ、あっためます?」
咲夜「いやなんだそのコンビニのレンジでチンする感覚で心温めようとしてくんな。気持ちだけ受け取っとくわ」
——いまごろ、どっかで元気してんのかな・・、未奈さん。
————ん? 未奈さんが突然退職したのは17年前。
咲夜「おい、優真。お前はいま何歳だ?」
優真「16です!」
ゾワッとした。
————こんなにも時期が一致することあるか?
顔を見上げる。お、おいおい、金髪やチャラい空気で一見わかんないけど、よく意識してみたら、郡三の面影がこんな感じること、偶然でありえるのか?
咲夜「な、なあ優真」
優真「はい?」
咲夜「おまえのカーチャン、昔なんの仕事してたとかお前に言ってたことあった?」
優真「いや、そういや聞いたことないっすね。家事はやたら得意なかーちゃんですけど」
咲夜「………ッ。お前の父親に関しては?」
優真「写真すらないんでわかんないですねー」
抑えろ。まだ、まだ確定させるには——。
優真「かーちゃんのカレーさいっこうなんすよ。もう今でも忘れられないくらい好物で!」
——あぁ・・。未奈さんのカレーは、本当に絶品だった。俺も今でも忘れられないくらい好物だ。
優真「今じゃゲンがその味引き継いでくれてます!!」
——たまたま味が似てる気がするとかってじゃなくて
優真「でも厳しいんです、学校行きたくないーまだ寝てたーいって言ったらケツをパーンと引っぱたかられて」
——懐かしいな。俺もよくやられてた
優真「そのあとはかならずきまって、」
——そのあとはかならずきまって、
優真「いってらっしゃいって、えがおで 」
——いってらっしゃいって、えがおで
そこからの話は何も聞こえてこなかった
————あの・・、郡三のくそたぬきがよ・・・!!
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