コミック書評:『人間・松下幸之助、異世界転生したら神様になってしまう』(1000夜連続42夜目)

sue1000

『人間・松下幸之助、異世界転生したら神様になってしまう』

――これは新たな「もしドラ」か? 名経営者も異世界転生する時代に突入!


異世界転生という定番の枠をとりながら、本作が提示するのはきわめて風変わりな状況だ。「人間は神さまではない」という名言を残した"経営の神様"松下幸之助が、今度は本当に"神さま"として異世界に降り立ってしまう、それが今回紹介する『人間・松下幸之助、異世界転生したら神様になってしまう』である。


【松下幸之助(1894-1989)】

松下電器産業(現パナソニック)創業者。「経営の神様」と称され、理念経営や人材重視の姿勢で日本産業界を牽引した人物。


異世界の神(イメージ的には人間の上位種族的な立ち位置)として、人智を超えた力を授かりながら、彼が抱くのは「人間との距離をどう埋めるか」という深い戸惑いだった。神は人間を救済できても、同じ地平には立てない。その思いがこの物語の核となっている。


しかし本作を単なる転生無双モノではない。松下が神の威光を放ちながらも、しばしば人間臭くつまずいてしまう様子をシニカルに描くことも忘れていない。領地経営の最中に神託の言葉がうまく伝わらず、村人から「えらく面倒くさい神様だ」と思われたり、無双の力を見せた直後に些細な生活習慣の違いで他の神と口論になったりする。こうしたエピソードが、違った角度で「距離感」というテーマを鮮やかに際立たせている。


またもう一人主人公であるリオ(人間)は、失敗ばかりの若者でありながら、夢に挑み続けるその姿が松下を惹きつける。彼の成長譚はシリアスな冒険物語として描かれる一方で、松下との掛け合いはバディもののテンポも帯びている。神と人間という断絶の構造を抱えながらも、二人が互いに影響し合う姿は、現代社会の"分断をどう乗り越えるか"ということの暗喩であろう。このあたりには、作者の政治的・歴史的な挑戦心が見て取れる。


読後に残る印象は、深刻さとユーモアが絶妙に混ざり合った余韻だ。笑いながら考えさせられ、考え込んでいる最中にまた笑わされる。そんなリズムが作品全体を通して繰り返される。異世界無双の爽快感と、経営哲学の重み、さらにコメディの軽さを三層に積み重ねた構造こそ、このコミックのユニークさだといえるだろう。


次巻では、松下に続き、別の「名経営者」が神として転生してくるらしい。果たして彼はライバルとなるのか、共闘するのか。それとも、経営哲学をめぐって神々の議論が巻き起こるのか。第2巻への期待はいやが上にも高まっていく。


異世界転生ものの海の中で、『人間・松下幸之助、異世界転生したら神様になってしまう』は、きわめて独創的な作品であり、新たな『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』になる可能性を秘めている。

笑いと感慨を同時に届けるこの物語は、次の巻でさらに驚きを仕掛けてくれるに違いない。










というマンガが存在するテイで書評を書いてみた。

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