第3話「気が散る」

(はぁーやっと学校の駅に着いた)

 恥ずかしい思いをしながらもかぬいはなんとか学校の駅にたどり着くことができた。


 電車を降りて周りを確認しても俺のことを見ている人はいないようだ。

 これで一安心と思い学校へと歩き始めた。


 それにしてもあの声は俺の脳内に住んでるのか?それとももしかしたら俺だけに聞こえてる声とか..


 考えても答えを教えてくれる人はいない。


(あいつのせいで散々な思いをしたからな)


 心の中で少し恨みを持ったまま教室に着いた。


 俺の席は一番右の一番後ろ。よくある主人公席ってやつだと思う。

 だがそんな主人公のような展開もなくあるのは冷たい風だけ。


 気軽に話せるような友達もいないし、休み時間は教室で本を読んで日々を過ごしている。


(あーなんかいいことないかなー)


『何かを願うだけじゃなにも叶わない』


 またあの声が聞こえてきた。


 生憎今は教室の中。俺が声を出せばみんなの注目が集まるからお前と会話なんてできないさ。


『私はお前の脳内に直接話しかけることができる。だからみんなには一切私の声は聞こえていないのだ』


 そうはいっても俺の思考が読めなきゃ話しかけることしかできないだろう。


 俺は本を手に取り文字を目で追い始めた。


『いやお前の思考は全て読んでいる』


(なんだと?)


 つまり俺のこの思考も全て読んでいるということか?


『そういうことだ』


 思考が全て読まれているとわかった瞬間俺は体全身にびりびりっとしたものが走った。


 俺は朝の読書が始まるまでに不審者が教室に入ってきてボコボコにする妄想をしていたのだ。


 いーやだめだ。こんなことを考えていてはまたさらに読まれてしまう。いやこんなことを考えるのもダメだ。


(あーどうすればいいんだ)


 俺は頭の中がぐちゃぐちゃになった。


 これから得体の知れない何かに永遠に心を読まれながら生活していくことや、普通の人なら恥ずかしいという妄想なども全て読まれてしまう。


 こいつと一生を過ごしていくことを考えただけで全身が震えてくる。


 俺はこの焦りや恥ずかしさや怒りを抑えることはできずに椅子から立ち上がってしまった。


 ドン!


 椅子から勢いよく立ち上がる音は教室中に響き渡った。

 朝の読書中だったみんなの視線は一気に俺の方に集まった。


「どうした?かぬい」

 突然のことに驚いた担任の教師が俺のことを心配して声をかけてくる。


「いやなんでもないです」


 俺は恥ずかしさを必死に隠しながらもう一度座り、本の世界ににげようとした。


 教室中は静かな雰囲気から一変。みんなコソコソ話している。

 多分俺のことについて話しているのだろう。


 そこからは本の世界に入ることはできず、ひたすら頭の中にいるものを消そうとした。

 どうやったら消せるのかひたすらに考えたがそれも全て読まれ逆に煽られる始末だ。


『私を消すことはできない』


 少しの笑いを含めた口調で俺の脳内に話しかけてくる。


 俺は頭をグーでぽこぽこと殴ってみたが全然効いている様子はない。


(あーうぜえ)


 心の中は怒りでいっぱいだったがこの問題をすぐ解決するのは難しいと思い一旦冷静になって考えてみた。


 なぜこんな化け物みたいなやつが俺の頭の中に住み着いているのか。こいつに意思はあるのか。


 俺は少しのヒントを得るために質問をしてみることにした。


(お前は誰だ?)


『私は私だ』


(なんで俺の頭の中に住み着いている?)


『私は住み着いているのではない。ここに存在しているのだ。』


 あーダメだ。

 こいつに答える気は一切ないようだ。


(お前のせいで俺は恥ずかしい思いをいっぱいしているんだぞ)


『そうか。それも経験のうちだろう』


 いくつかの質問をしてわかったことといえばこいつに人の心はないということだろう。


 俺のことは一切考えてくれてないし、俺を気遣う様子もない。

 こいつは俺にとって有害な存在ということだけがわかった。


 授業が始まってもこいつに思考が読まれていると思うと全くといっていいほど集中できなかった。

 こいつが答えを教えてくれるわけでもないのに気を紛らわされるなんて馬鹿馬鹿しいことだ。


 いち早く家に帰ってこいつをどうにかして消去する必要があるな。

 俺は学校が終わったらどうにかしてこいつを消去しようと決断した。











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