第2話「羞恥」
俺は今日学校である。
毎日毎日朝の6時に起きて7時には電車に乗らないと間に合わない。
「会社員じゃないんだからー」
こんな不満を部屋で一人呟く。
『じゃあお前もう学校辞めろ』
「ん!?」
また唐突として聞こえたあの声。
俺は咄嗟に後ろを振り向くがやはり何もいない。
もしかして俺の耳にはやばいやつでもやどってしまったんじゃないか。
俺は学校に行くまで時間がなかったのでそのことはできるだけ考えないようにして朝食をかきこんだ。
「いってきまーす」
「気をつけてねー」
母からの見送りが毎日あるのは意外とありがたいのかもしれないな。
俺は駅まで自転車で15分かかる。
電車の時間は7時7分。
現在時刻は6時45分。
「ちょっとあぶないな」
俺は足をすごい勢いでぶん回して駅まで向かった。
「はぁはぁ」
俺はやっとの思いで駅に着いた。
「えーと今の時刻は..6時52分!?」
どうやら早く着きすぎたようだ。
「こっから15分ぐらい待たないとだめなのかよー」
高校生にとっての15分は貴重だ。
15分もあれば仮眠が取れるし、15分もあれば動画一本見ることだってできる。
「よし。スマホ、スマホっと」
俺はこの貴重な時間を無駄にしないためにも動画で時間を潰そうとした。
リュックの中からスマホを取り出し、早速動画サイトを開いた。
「うわ。この人面白そうな動画あげてるじゃん」
さっそくおすすめに載った人の動画を開いた。
「これこれ」
その人は主にゲーム実況をする人なのだが、普段出している動画にはあまり興味はない。
だがたまたま俺が好きなゲームの動画をあげていたのだ。
『おい。今すぐスマホを捨てろ』
またあの声だ。
「なんだよ。俺の楽しみを奪おうってのか」
俺はもう恐怖心なんてものはなかった。
動画を見るという娯楽を誰にも邪魔をされたくはなかったので得体の知れないものでも容赦なく反論する。
『お前が今やっていることは娯楽ではない。お前はスマホに依存し、動画に依存し、朝のこの景色だって楽しめないでいいのか?』
「いーや違う。俺はスマホに依存などしていない。俺はスマホを有意義に使い娯楽として使っている。だからお前のいっていることは間違っている」
『本当にそうか?電車が通る前でもスマホを使って時間を潰すことが本当に有意義な時間の使い方なのか?私はそうは思わない。電車の見た目を楽しみ、ここからの景色を楽しみ、ここの空気を楽しみ、五感を最大限使って体で感じる。それが本来の娯楽というものではないのか?』
「この今の空気を楽しめだって?現代の排ガスまみれのこの空気を楽しめるなんて無理に決まっているだろう」
俺はこれは決まっただろうとおもった。
相手に反論の余地はないとみた。
10秒ぐらい経っても返事は返ってこなかった。
俺の意見に反論できずに屈したか。ばかめ。
俺は心の中で勝ちを喜んだ。
「電車でもみてみるかー」
俺は少しだけ気が変わり、スマホから電車の通る線路の方へと視線を向けようとした。
だが俺の視界に映るのは残酷なものだった。
駅のホームにいる人全員が俺の方をじーっとみている。
よくよく考えれば俺が話していたのは実体がないものと会話していたわけでそれは周りから見ればイマジナリーフレンドと会話しているのと同義であった。
いま体温計を脇に挟んだら間違いなく再検査を求められるか、体温計が壊れるだろうな。
俺は恥ずかしさを隠すことはできなかった。
電車の中でもさっき駅のホームにいた人とはできるだけ同じ車両にならないように頑張って移動したがどこの車両にも誰かしらさっきあの場にいた人はいる。
(逃げ場をくれよ)
そう心の中で思いながら学校の駅まで着くのを頑張って耐えるしかなかったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます