第4話完璧な隙間



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### 『完璧な隙間』


アイドルは、隙間を嫌う。


前髪の隙間。

歯の隙間。

スケジュールの隙間。

人気の隙間。


全部、埋めなきゃいけない。


彼女はデビュー3年目。

「清楚で完璧」が売りだった。


控室の鏡の前、

衣装と壁の**隙間**に立つのが、なぜか落ち着いた。


理由はわからない。

でも、そこだけ空気が静かだった。


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最初の異変は、

リハーサル中だった。


振り付けの立ち位置が、

**毎回ほんの数センチずれる**。


注意されるほどじゃない。

でも、自分だけがわかるズレ。


マネージャーは笑って言った。


「隙間、埋めていこ。

 プロなんだから」


---


その夜、

楽屋でメイクを落としていると、

鏡の端に**黒い線**が見えた。


壁と鏡の、

ごく細い隙間。


覗くと、

中に**同じ顔**があった。


笑っていない自分。


瞬きをしたら、消えた。

疲れのせい。

アイドルあるあるだ。


---


人気は上がった。


露出が増え、

自由な時間は消えた。


部屋に帰っても、

ベッドと壁の隙間が

なぜか気になる。


そこから、

**カメラのシャッター音**が聞こえる夜があった。


カシャ。


ありえないのに、

体が自然に**笑顔を作っていた**。


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ある収録の日。


衣装が少しきつかった。


「最近、痩せた?」

そう言われたけど、

体重は変わっていない。


変わったのは、

**体の厚み**だった。


鏡を見ると、

自分が少しだけ

**平たく**見えた。


---


本番直前。


ステージ横の暗い通路。

壁と壁の隙間。


マネージャーが、

背中を押した。


「そこ、入れるでしょ?」

「ぴったりだよ」


隙間の中は、

冷たくて、

懐かしかった。


中から、

無数の声がした。


「理想だね」

「完璧だね」

「余白がない」


体が、

ゆっくり**薄くなる**。


苦しくない。

むしろ、

褒められている感じがした。


最後に聞こえたのは、

自分の声。


「隙間、

 なくなりました」


---


その日のライブは大成功。


ファンは言った。


「今日の○○、

 **存在感すごかった**」


でも、

集合写真に彼女はいない。


代わりに、

ステージ袖の壁。


そこだけ、

不自然に――

**ツヤがあった。**


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