第2話 『隙間は、覚えている』


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### 『隙間は、覚えている』


最初に異変に気づいたのは、

中学2年の俺だった。


ベッドと壁の隙間。

幅は、こぶし一つ分くらい。


夜になると、そこから

**息を吸うみたいな音**がした。


スー……

スー……


自分の呼吸と、

**ほんの少しだけズレてる**。


最初は気のせいだと思った。

中学生男子あるあるだ。

夜ふかし、ゲーム、寝不足。

全部「気のせい」で片づける。


でも、ある夜。

スマホを落とした。


隙間に、吸い込まれるみたいに。


ライトで照らすと、

スマホは奥にあった。


**ありえないくらい、奥に。**


腕を伸ばした瞬間、

画面が勝手に点いた。


真っ黒な画面に、

白い文字。


> 「ここは

> 大人も

> 子どもも

> 同じ」


その瞬間、

隙間の奥で**何かが笑った**。


---


場面は変わる。


40歳の女性、真理子(まりこ)。

一人暮らし。

築30年のマンション。


最近、

台所の冷蔵庫と壁の**隙間**が気になっていた。


夜中、

コトン、と音がする。


見ても、何もない。

でも翌朝、

床に**爪のあと**みたいな線が増えている。


ある日、

隣の部屋に住んでいたはずの

中学生の男の子が、忽然といなくなった。


警察は言った。


「事件性はありません。

 ……部屋も、異常なしです」


ただ一つだけ、

おかしな点があった。


男の子の部屋の壁。

**不自然に削れて、隙間が広がっていた。**


---


その夜。


真理子は夢を見た。


暗い隙間の中。

体育座りの男の子が、震えている。


男の子は、言った。


「大人になると、

 広がるんだ」


「なにが?」


「隙間が。

 だから……

 **次は、あなた**」


目が覚めると、

寝室の壁が、**ミシ…ミシ…**と鳴っていた。


ベッドと壁の隙間が、

昨日より、確実に広い。


スマホが鳴る。

通知。


**見覚えのないアカウント**から。


> 「成長、完了」

> 「収納、可能」


振り向いた瞬間、

壁とベッドの隙間から、

**無数の手**が伸びてきた。


子どもの手。

大人の手。

年齢のわからない手。


最後に聞こえた声は、

あの中学生の声だった。


「ほら。

 大人の方が、

 ぴったりだ」


---


翌朝。


真理子の部屋は空室になった。


ただ、

壁と床の隙間が

**少しだけ、狭くなっていた。**


まるで、

**満足したみたいに。

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