第6話— 歩美の失踪

放課後、学校の廊下はいつもより静かだった。

夢原ひかりは、いつものようにロッカールームへ向かう。

しかし、心の中には昨日の夜の影が残っていた。

りんの存在、そしてあの不可解な力――自分はもう、以前のひかりではない。


黒金あゆみが現れる。

「また、退屈な時間を潰すの?」

冷たい声に、ひかりの胸は小さく跳ねる。

しかし、恐怖はもはや感じない。

何も感じない自分に、ひかり自身が驚く。

あゆみはゆっくりと近づく。

「ひかり、どうして最近変なの? 昨日も、また……」

言葉は挑発的だが、ひかりの内側では影が静かに動き出す。

りんの視線が、胸の奥で光るように感じられる。


その夜、ひかりは涙で眠る。

目覚めると、服には泥がつき、ノートにはこう書かれていた。

「もう、彼女はあなたを傷つけない」

ひかりは目を見開く。

文字の意味は理解できる。

そして、胸の奥にわずかな恐怖と安堵が混ざり合う。


翌日、学校で黒金あゆみが現れなかった。

授業も欠席、廊下も静か。

青井と白崎美香は心配そうにひかりに近づく。

「ひかり……あゆみ、どこに行ったんだろう?」

ひかりは黙ったまま、手に握ったノートを見る。

「……わからない」

しかし、心の奥で何かが警告している。

――あゆみの失踪と、影の力には関係がある。


黒川は、学校に現れ、全員を尋問し始める。

「昨日、誰がどこにいたか、全て記録する必要がある」

彼の視線は冷たく、しかし公正だ。

青井と白崎美香は、ひかりのそばにいて彼女を守ろうとする。

黒川は近づき、観察する。

「興味深い……昨夜、家にいたんだね?」

しかし、街頭カメラには映っていない。

ひかりは胸が締め付けられるような感覚を覚える。


ひかりは暗い予感に導かれ、森の近くの廃屋に足を踏み入れる。

湿った空気と埃の匂い、かすかな風に木の枝が揺れる音。

その奥に、縛られた黒金あゆみがいた。

泣き、混乱し、恐怖に震えている。

「な、なぜ……ひかり……どうしてこんなことを……?」

あゆみの声は、恐怖と絶望に満ちている。

ひかりは膝をつき、叫ぶ。

「私じゃない!覚えてない!」

鏡の破片に、りんの影が映る。

「一緒にやったのよ」

低く囁く声。

ひかりの心は混乱し、恐怖に引き裂かれる。

自分の意思ではない行動――それを影が導いていたことを、今、初めて理解する。


影と自分の境界が曖昧になる。

ひかりの体は動き、りんと一体化する感覚。

あゆみを守るか、影の正義に従うか。

葛藤と混乱、恐怖と決意が一瞬の中で交錯する。

青井と白崎美香の存在は、ひかりに現実の軌道を思い出させる。

しかし、森の暗がりで、彼女はもはや完全には自分ではない――

りんが主導権を握っている。


ひかりはあゆみを安全に解放し、森から連れ出す。

しかし、心の奥では罪悪感と混乱が消えない。

りんは静かに微笑む――満足げな微笑み。

「これで終わりじゃない。次はもっと大きな試練が来る」

ひかりは小さく息をつく。

夜の闇の中、森の影が揺れる。

そして、影の正義が次の瞬間を待っていることを、ひかりはまだ知らない。


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