-5- 常連の森下さん

風呂から上がって、水気を拭いていた。

体は軽くなった気がするが、頭はまだぼんやりしている。気がするだけで、実際は何も変わってない。


番台の前を通ると、

「コーヒー牛乳?」

とおばちゃんが声をかけてきた。


「お願いします」


そう言うと、冷蔵庫から一本取り出して、

カウンターに置いてくれる。


瓶を持つと、冷たい。ここのコーヒー牛乳は破格の値段だ。1瓶50円!!金が限られてる俺からしたら、ありがたい。

蓋を開けて、一口飲む。甘い。

こういう時間だけは、仕事のことを考えなくて済む。


……いや、考えていないつもりなだけか。


社務所に戻る前に、予約帳のことを思い出す。

今日は一件だけだったはずだ。


常連の、森下さん。


この人は、観光では来ない。

昼の無料の時間帯にも来ない。

必ず、朝だ。


そして、毎回きっちり二万円を払う。


理由は、わからない。

聞いたこともないし、聞きたい欲を抑えて仕事をしてきた。


風呂屋で250円を払って出て、夜道を歩く。

流石に寒い。湯冷めとはこのことだ。

10月後半で半袖を持ってきたのは、バカだったかもしれない。そんな、他愛もないこと考えて帰った。


社務所に戻ったら、いつも通りだ。

蝋燭とマッチを用意して、時間を待つ。


それだけの仕事だ。


——それだけ、のはずだ。

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