-3- 待っている間
夜の詰め所は、静かだ。
音がないわけじゃない。ただ、余計な音がない。
俺は椅子に腰掛けて、ゲームを起動する。
画面を見ているようで、見ていない。
ときどき顔を上げて、橋の方を見る。
霧の向こうに、灯籠の明かりが浮かんでいるのがわかる。
二つ。ちゃんと、両側に。
それだけでいい。
それ以上、確認することはない。
時計を見る。
まだ三十分も経っていない。
この仕事には、時間の決まりがある。
ぴったり一時間。
早く戻ってくることもなければ、遅れることもない。
理由は知らない。
たぶん、蝋燭にあるんだろう。
でも、それを聞いたところではぐらかされるだけだ。
一時間後、足音がする。
橋の方から、静かに近づいてくる。
客は何も言わない。
俺も、何も聞かない。
それがこの仕事を引き受けるために老婆に言われたルールだ。
そして、封筒を受け取り、軽く頭を下げる。
二万円。いつも、きっちりだ。
見送って、詰め所に戻る。
それから、蝋燭を片付けに橋へ向かう。
灯籠には、もう火は残っていない。
そして、蝋燭も、いつも通りなくなっている。
探したことはない。
なくなるものだと、最初からそう教えられている。
俺は橋の中央で立ち止まる。
上を見上げる。
月が、ちょうどいい位置にある。
それを見るのが、少しだけ好きだ。
この橋での仕事で、
俺が楽しみにしているのは、それくらいだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます