2 夜の詰め所

夜の橋は、昼間とは別の顔をしている。

観光客はいない。照明も、最低限しか点いていない。


俺は詰め所で待っている。

机の上には、蝋燭とマッチ。触れなくてもいいように、いつも同じ位置に置いてある。


夜にも、予約者は来る。

朝より少ないが、必ず来る。


顔は見ない。

名前を聞いて、予約帳と照らし合わせるだけだ。


俺はただ、

「この蝋燭を、橋の両側の灯籠に火をつけておいてください」

と言うだけだ。


それ以上は、何も説明しない。そもそもそれしか、老婆から聞かされなかった。

だが、質問されることも、ほとんどない。


霧が出ると、橋の向こうが見えなくなる。

それでも、俺は社務所で予約者が来るのを待つ。


戻ってくるまでが、仕事だ。


その夜、

俺の後ろで、足音がした。


「ちゃんと、待ってかい?」


振り返ると、老婆が立っていた。

いつからそこにいたのかは分からない。


「戻ってこない人はいないから」


それだけ言って、老婆は闇に戻っていった。


俺は橋を見る。

霧の中で、何かが揺れている気がした。

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