11月26日 / 愛 = 0
私は銀杏の木がたくさん並ぶ公園のベンチに座っていた。
失恋して間もない私は、家にいると気分が滅入る。
だから美しいもので自分を上書きしようと思い、ここへ来た。
来てから気づいた。やたらとカップルが多い。
こんなに綺麗な景色なら、誰かと共有したくなる。
当然のことなのに。
自分の適当さが情けなくて、泣けてくる。
「はぁ」
小さくため息をつき、目を伏せた。
道端には、すり潰され追いやられた落ち葉。
綺麗だったはずの葉の色は落ち、繊維しか残っていない。
その残骸から目を離せなかった。
風が吹いて、落ち葉が流される。
それを見ていると、思わず涙がこぼれた。
堰を切ったみたいに溢れる思いを止める方法を、私は知らない。
だから、気が落ち着くまで静かに身を任せた。
「大丈夫ですか。」
目の前にハンカチが差し出される。
顔を上げると、そこには一人の男の人。
少し驚いてから受け取り、涙を拭った。
「ありがとう……ございます。」
彼は隣に腰掛け、銀杏の木を眺めていた。
何も言わず、泣き止むまでそばにいてくれる。
風が運ぶ寂しい音が和らぎ、胸が温かくなった。
「落ち着いた?」
「はい……」
少しの沈黙のあと、私は口を開いた。
「どうして、優しくしてくれるんですか。」
「なんでだろう……放っておけなさそうで。助けないと後悔しそうだったんだ」
「なによそれ」
「はは、ほんとなんだろう」
変な人だ。
だって私より悲しそうな笑顔を浮かべているのに、私に優しくする。
でも下心じゃないのは、分かった。
「それで、どうして君は泣いてたの」
「……人間関係でうまくいかなくて。家の中にいると考えちゃうから公園に来たんだけど、周りを見ると、なんだか悲しくなって。」
「そっか。辛いね。僕も経験したから分かるよ」
「なにを」
「失恋だよ。それもひどいやつ」
「そっか」
なんだかこの人には、見透かされている気がする。
「僕たちは、道端の落ち葉なんかじゃないよ」
疲れたみたいな笑顔。
その顔を見て、重荷を地面に下ろしてもいいんじゃないかと思った。
もしかしたら、本当に私と同じなのかもしれない。
「ね、君はなんていうの」
「悠太だよ」
「じゃあ、ゆうくんだね」
私は少しだけ明るく笑ってみた。
手は小さく震えていて、ハンカチの花柄の刺繍が歪む。
でも、ゆうくんといれば少し違う景色が見れる気がして、僅かな勇気を出した。
「私は永山舞っていいます。よろしくね」
***
このまま終わってしまうのは嫌だと思った。
ただ、この感情をどう表現していいのかは分からない。
だから、思考を切り替えて振り返る。
記録を見返して思うのは、ゆうくんが変わってしまったこと。
私を見て、愛してくれているゆうくんは、確かにここにいた。
でも何かが私たちの中でズレて、致命的な出来事を引き起こした。
再生を続けよう。
何が歪んでいたのかを知るために。
本当の愛を、私は知りたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます