1月7日 / 枯れ葉
クリスマスの夜から、僕の調子は悪くなっていった。
常に彼女のことを考えてしまう。
朝起きるとスマホの通知欄を確認するのが習慣になった。
舞が僕を求めるたび、あの時のことを思い出す。
そのせいだろうか。
それとも、単純に惚れているのか。
舞の気持ちが、だんだん分からなくなっていく。
年末ごろから連絡の頻度が減った。
落ち葉が転がるみたいな空虚さが胸の奥でざわつく。
そのせいか、夢の中で彼女にひどく振られる夢を何度も見た。
「舞……」
スマホのメッセを開き、最近のやり取りを眺める。
画面を素早く操作して「初詣に行こう」と送った。
返事はすぐ返ってきて、午後から近くの神社へ行くことになった。
いつも以上に身支度を整えて家を出る。
駅で舞と合流し、神社へ向かった。
年始から一週間ほど経っていたが、境内は混雑している。
はぐれないように手を繋ぐ。
舞の手は、思っていたほど温かくなかった。
「すごい人だかり。全然前に進まないね。」
「さっきからずっと同じ場所にいる気がする。ちょっと苦手だな。」
「私は結構好きだよ。お願いごと考えられるし。」
「お願い事ってどんなこと」
「研究がうまくいきますようにって。」
「そっか」
僕は思わず肩を落とした。
「それで研究って、どんなことをしてるの」
「記憶に関する研究だよ。人ってよく勘違いするでしょ。正しく覚えてるのに誤って解釈したり、思い出せなかったりね。」
「都合よく作り変えるってこと?」
「どういう仕組みで記憶が解釈されるかってことを研究してて、いまは最終段階なんだ。先生が言うには、うまくいけば認知症とかにも応用できそうなんだって」
「……ふーん」
少し迷ってから、「うまくいくといいね」と本心じゃないことを言う。
参拝の順番が近づいてきた。
僕はお願い事を考える。
舞との関係が続くように――そう願うべきか。
でも舞は自分のお願いをする。
なら僕も同じようにすべきじゃないか。
順番が来た。
お辞儀をし、拍手をして、お願いをした。
再びお辞儀をすると、舞が聞いてくる。
「ゆうくんはどんなお願いをしたの?」
「舞のそばにいれますようにって」
「え、嬉しい。ありがとう。」
舞の声のトーンが、少しだけ低い。
何か間違えたのだろうか。
胸を掴まれるような気分になる。
夢のせいだろうか。
目の前の舞は、クリスマスと同じ笑顔を向けていた。
気のせいだ。
僕は安心して、手を繋いで境内を少し歩く。
「ゆうくんは体調、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「本当かな。少し顔色が悪いよ。それにクリスマスの日、様子が少し変だったから」
胸の内に冷たい風が吹く。
「ね、私のこと好き?」
「うん」
「よかった。今日はこの後、研究室に寄るんだ。だからここでお別れしよ」
「了解。頑張ってね」
舞の姿が見えなくなってから、駅へ向かって歩き出す。
帰り道、葉のない街路樹を見上げた。
細々とした枝が風に揺れ、流されていくみたいだった。
不意に、枯れ葉が潰れるクシャリという音が聞こえた。
思わず振り返り、「――」と声が漏れる。
目の前には誰もいない。
肌に刺さる風だけ。
両手をポケットに突っ込み、歩き出す。
舞と出会った日も、今日みたいに枯れ葉が転がる寒い日だった。
ふと、舞と手を繋いでいた時よりも温かいなと思い、手を握りしめた。
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