12月18日 / 愛
彼女と会うのは、今日で二回目のはずだった。
十一月のある日に知り合ってから、彼女は運命だと言い、何度も会いたいとせがんだ。
あの日のことはよく覚えていない。
それでも日々のアプローチに押され、ついに会うことにした。
僕は待ち合わせの十分前にカフェへ入った。
ドアを開けると澄んだベルの音が鳴る。
入口へ向けられた視線の中に、待ち人「永山舞」がいた。
彼女は大きく手を振り、「ゆうくん」と声をかけてくる。
僕は手を振り返し、席に座った。
「こんにちは、舞。」
「ゆうくん、久しぶり。ずっと会いたかった。寂しかったよ。」
「いつもメッセしてるだろ。1日何十回と」
「それでもだよ! 今日のゆうくんに会えるの、楽しみにしてたの。」
「じゃあ、いつも通り楽しもうね。」
「私のことちゃんと見てね。置いていかれるの、怖いから。」
僕は笑顔で聞き、時折うなずいてリアクションを返した。
彼女が欲しそうな言葉を選んで渡すと、嬉しそうに笑う。
一時間ほど会話を続けた頃、「次は映画館だね」と舞が言った。
僕たちはカフェを出た。
外へ出ると、人の多さのせいか視界が青く曇る。
映画館に着き、券売機を操作しながら尋ねた。
「今日はどんな映画を見る予定?」
「うーん。恋愛ものがいいな! とびっきり甘いやつ。」
「これはどうかな?」
「君の名前を呼ぶだけで幸せ……すごくいいかも! これにしようよ。」
「決まりだね。」
券売機のボタンを押してチケットを二枚買う。
ポップコーンと飲み物を抱えて、三階のシアターへ向かった。
周りには誰もいない。僕たちだけだ。
真ん中のいちばんいい席に座り、彼女と手を繋ぐ。
光が落ち、「君の名前を呼ぶだけで幸せ」が始まった。
内容は、好きな相手の名前を呼べなかった主人公が、名前を呼ぶことで深く繋がっていく話。
最後に主人公が言った「愛しているよ」で、彼女は涙を流した。
「ねえ、ゆうくん。」
エンドロールの中、彼女が声をかける。
上映中に声を出すのはマナー違反だけど、幸い周りに誰もいない。
「なに」
「愛してるって言って」
「愛しているよ、舞」
彼女は両手で上がった頬を隠すように覆い、もう一度甘えてきた。
耳元で囁くと、小さな声をあげて縮こまる。
シアターが明るくなっても、僕たちはそうして時間を過ごした。
理由はわからない。けれど僕の顔は引き攣っていた。
映画館を出ると、空はオレンジ色に染まっていた。
二人でゆっくり歩き、日が落ちていくのをぼんやり眺める。
次に会う約束をして駅で別れるだけなのに、僕の脳内の処理負荷は上がっていく。
緊張しているのだろうか。
気がつけば、誰もいない公園にいた。
「ここなら二人っきりだね。」
そう言って彼女は抱きつき、肩に顎を乗せる。
彼女の頭を撫でながら、言った。
「愛してるよ」
朗らかな声を漏らしながら、彼女はニヤけた。
いつものように、もっと言ってほしいとせがまれる。
彼女のお気に入りだし、僕に拒否権なんてない。
出口のない夜の闇が僕たちを包んでも、「愛してる」を出力し続けた。
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