第5話 新たな蔑称

 助けたパーティーに道案内されながら地上を目指す。幸いそこまで大きい怪我をしていなかったのでよかった。俺回復できないし。ここで回復魔法を使うことでイメージの回復もできたかもしれなかったが出来ないものはしょうがない。笑顔は逆効果だと学んだので笑顔を辞めたらビビられた。笑顔もダメ! それ以外もダメ! どうすればいいんだよ……。ずっとチベスナ顔でもすればいいのか!? 正解がわからねえ……。


「そういえば、あなた達のこと知らなかったわ」

「わ、私たちは、幼馴染の集まりで......『なまむぎチャンネル』っていうチャンネル名で配信しているんです」


 へ~、ぱっと見中学生くらいの子なのに、配信とかするんだな。……配信?


「それってぇ~、今も撮ってるのぉ~?」

「い、今は切りました! ゴ、ゴリアテ戦まででしゅ!」


 俺は急いで『なまむぎチャンネル』を検索する。……見事に拡散されてますわ。それによってキ〇ガイ野蛮ゴリラという蔑称に進化していた。ざけんなや。何がキ〇ガイ野蛮ゴリラじゃ、せめてキ〇ガイバーサーカー位にしろや。なんでゴリラをつける必要があるんですかねえ? クソ、それもこれも『MARINA Ch』のせいだ。アイツが配信なんてしてなかったら俺はこんな不名誉極まりない蔑称をもらうことはなかったんだ。絶対、会ったら文句言ってやる……メンバーシップに登録してるし、グッズも買ってるけど、許すことは出来ねえ……さらば、俺の中学時代の青春。MARINAが悪いんだよ……

 ……いや、キモイな。うん。流石に八つ当たり過ぎる。もとはと言えば俺が笑顔だったのが悪いんだ。けどしょうがない。無敵感もあって、リズムゲーム感覚に途中からなってたからな。流石に、アレはなあ……俺はそんな戦闘民族じゃないんだから……俺はただお金を稼いで推しや趣味に使いたいだけなのに……

 Dwitterでエゴサしていると、『なまむぎチャンネル』かわいそうで埋め尽くされていた。ネット民も殴ったあと凍らせて止めを刺すのはドン引きだったみたい。うん、俺も引くな。つまり、俺はまだ理性がある! ……理性があってアレなら俺はもう終わりでは? 俺は魔法少女を始めてからおかしくなったんだ……許すまじKU


「いやぁ~、魔法少女に変身した結果理性が無くなるとかないからね? 何もかもを私のせいにしない~」

「うわ、出た」

「アレはまさしく君由来。まあ、いいじゃん、たかがネットで言われるだけなんだから」

「好奇の目でみられるんですが……てか、今回もなんか怯えられてたし......俺が悪いの?」

「さもありなんですね~」


 こいつ......。いや、俺はもうこのキャラで行くしかないのか? いや、まだ逆転の可能性はある、あるはずなんだ!


「あ、今回来た理由を忘れてましたね~。おめでとうございま~す。ゴリアテを倒したことによるボーナスをあげちゃいま~す」


 ボーナス……! どんなのだろうか。ゲームとかなら特別な装備とか称号とかだよな。称号なら効果は巨大な魔物に対するダメージ増大とか? 装備なら剣がいいな


「魔法威力アップで~す!」


 あれ以上の惨劇を作る気か!? 今の時点で結構オーバー火力なんですが……しかもこれ初級。中級とか上級とかになったらマジで俺が公安やらに狙われる歩く大量破壊兵器扱いを受けるんだが!?


「さ~ら~に~?」


 まだあるの!? なんか嫌な予感がする


「今とっているツリーの次の魔法を無料で開放しま~す!」


 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!? ざけんな、まじで俺を人間から卒業させる気か!? せめて筋力アップとか、特殊な能力とかが欲しかったんだが!?


「今ならなんと! 称号付き! 巨人を屠った少女!」


 効果は~? 魔法の威力増大、消費量増大、さらに拳で魔物を倒すと一定時間それら二つの効果に上乗せ! なお縛りとして肉弾戦か魔法でしか魔物を倒せない……嘘……だろ……!? ざけんなや、ダヴィデも石を使って倒したんだぞ!? 武器以外でしか倒せないって……俺にあの蔑称と共に過ごせっていうのか!? いや、これはあくまで魔法少女状態のみ。普通の状態なら、なんともない……なんともないはずだ……!


「因みに魔法少女状態のほうがマナの吸収効率は高いですよぉ~」


 ……神は死んだ。これからのノルマとか魔法少女状態必須じゃん。良い称号が得るまでこれかあ……これかあ……!


「てか、なんでマナ回収なんかするんだ?」


 俺はふと、今まで疑問に思っていたことを聞いた


「あ~! 言ってませんでしたね。スタンピードの発生を防ぐためです」

「スタンピードってあの?」


 スタンピード。魔物大発生と訳されるこの現象は魔物がダンジョンから出て、街を襲うというものだ。十年前にも確か大阪で大規模なスタンピードがあったはずだ。しかし、スタンピードの条件は不明だったはずだ。じゃあ、なんで目の前のこいつは知っている? 


「スタンピードっていうのはダンジョン内のマナ濃度が許容量を超えると起こるものです。ちなみに特殊魔物イレギュラーが出現するのはダンジョン内のマナ濃度を調節する動きです」


 確かにスタンピードが起こる直前特殊魔物イレギュラが連続で報告されたっていうのを本やテレビで見た気がする


「スタンピードが起こるのは貴方方が言うところのE~C級のダンジョンが多い。なぜだかわかりますか?」

「......そこに通う人が多いから?」

「ん~、少し違いますね。ただ単に通う人が多くても別に問題はないんですよ。問題なのは魔法です」

「魔法?」

「魔法が発動した時に大量のマナが放出されるんですよ。そして魔法の試し打ちや練習にはよくそのレベル帯のダンジョンが使われますよね?」

「......だからマナ濃度が高まるばかりか。だが、それじゃあ俺たちの説明がつかない」

「魔法少女の魔法はマナを消費して発動します。一方普通の魔法は人々の中にある魔力と呼ばれるものを使用して発動します。魔法少女の魔法は発動後マナを排出しません」

「マナが二酸化炭素だとしたら、普通の魔法は車の四ストローク、俺たちの魔法は酸素を排出しない光合成ってことか?」

「まあ、おおむねその通りですね」

「成程、俺は自分の寿命だけじゃなく他人の命綱も握っていると?」

「ええ」


 クソったれが。つまり、マナ濃度が濃いほど魔法の威力が上がるのかよ……。しかしいまならわかる。あの高威力な初級魔法の理由が。ここは特殊魔物イレギュラーが出現するほどマナ濃度が濃いかった。だからあんなに高威力の魔法が出たし、どんどん魔法が弱くなったのか。初めて撃った時とゴリアテ戦のときの威力の違いはそれか


「よく、ダンジョンのことを知っているんだな。......ダンジョンを創造した張本人か?」

「私はちがうよぉ~」

「私は......ねぇ......」


 そして、ある質問をしようとしたところでKUは消え、時は動き出した


「ど、どうなされました?」

「なんでも」


 口調を作るのもいい加減疲れた。もう自然体でいいや。どうせ評判はストップ安なんだから


「は、はいぃぃぃ!!」


 ……今変身を解除したらどんな反応するんだろ。やってみよ

 ……出来ない!もしかして人前では解除できない? なら上手いことやる必要があるな。……もしかして、泊まり込みでダンジョン捜索するんだったら女ものの下着とか必要なの? 俺への評判まで下がる可能性が出てきたな


「あ、あの!」

「なに」

「連絡先! 交換しませんか! 助けてくださったお礼もしたいですし......」

「お礼なんていらない。それより早く帰りたい」

「えっ、いや、でも......」

「いらないものはいらない」


 マジでいらない。早く俺を返してくれ。俺はその一心でお礼を拒否し続けたが、相手も折れなかったので岡山までの交通費を後に請求することで決着した。それでも不満気味だったが、しょうがない

 そうしているうちに地上につき、鬱陶しい野次馬をどけて素材等を精算して帰った。ダンジョン庁の役員が岡山まで連れて帰ってくれるらしいが家を特定されるのが嫌なので岡山駅で降ろしてもらうことにした。その間ずっとエゴサをしていた。しかし、何度見ても俺はキ〇ガイ野蛮ゴリラと呼ばれていた。岡山駅で降ろしてもらった俺はKUの時間停止の中変身を解除してそのまま帰宅した。Vやねん、偽装魔法なんていらんかったんや! 帰宅した俺は数日休んだゴリアテのお陰で週間ノルマと月間ノルマをクリアできたのでゆっくり休むことにした

 この時の俺はまだ知らない。これがこれから始まる面倒ごとに巻き込まれる序章であることを

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