第11話
それから、俺たちは魔物を討伐しては、ゲームなどをして心身を休めるという生活を続けた。
俺は高校生だが……自分の命がかかっている状況で学校になんて行っている場合ではないので、ずっと休んでいる。
そうして二週間が経ち、今日は魔物討伐の日。
――パァン
そんな発砲音と共に、銃弾はネズミの魔物の頭部に命中。
頭部を撃たれた魔物は、絶命し、光の粉になって消えていった。
「ふぅ……また雑魚敵か」
魔物を討伐したというのに俺の気分は暗いままだった。
「はあ……これで二十連続だぞ?」
理由は、さっき倒した魔物にあった。
あれは、願滅銃で直接攻撃しても倒せる程度の弱い魔物。それだけあって――得られるSPは非常に少なかった。
「なあ……セレス、これで今日の合計のSPは幾つなんだ?」
「ん……二十」
魔物を四体倒してこれなのだから、やっぱり少ない。
毎日魔物討伐をしたとして、一日の最低ノルマは三十弱。
「もう少し、魔物を探してみるか」
「でも、律……もう近くに魔物はいないみたい」
「じゃあ、今日はこれで終わりか……」
これで今までに集めたSPは約千二百。運転手の魔物と雫さんの魔物を倒して得られたSPが殆どだった。
で、でも……魔物討伐を始めてから二週間ほどで目標の十パーセント強が手に入っているのだから、まだ焦らなくていいはずだ。
俺はこの時、まだそう思っていた。
「魔物が……居ない?」
翌日、セレスはそう言い出した。
「マギアローズで確認してみたけど……最近、魔物の出現数が減ってるみたい」
「そんな……」
「多分、しばらくの間、討伐できる魔物は、良くても弱い魔物が一体……最悪、何も見つからない」
「くっ……じゃ、じゃあ、場所を変えればいいんじゃないか?」
「……土地勘がない場所で戦うのは凄く危険。命の方が大事」
「そうだけど……」
その命が一年後に一万SP貯められなかったら、無くなるんだよ……。
「律、焦りすぎ……しばらくの間、家で大人しくしておくのがベスト」
「そ、そんなこと言ったって……」
その時、俺はある事実に気づいてしまった。
――魔物討伐に命がかかってるのは俺だけなのだ。
セレスは魔物討伐の使命があるとはいえ、別に失敗したところで死ぬわけではないのだろう?
そもそも、魔物討伐にかける思いが違うのだ。
……こうなったら、俺一人で魔物討伐を進めるしかない。
最近は雑魚ばかりで、セレスの手を殆ど借りていないし、なんとかなるだろう。
俺は、セレスに隠れて、こっそりスマホのニュースアプリを開く。
そして、魔物が原因で起こった事件がないか、探してみたのだが――
「っ……?!」
一つのニュースが見つかってしまった。
ニュースのタイトルは女性の不審死。
ここから十分ほど歩いた場所の路地裏で女性が裸で、不審死していたらしい。
死体に外傷は全くなく、病気らしきものも無かったため、警察はお手上げなんだとか。
魔物が原因なのだとしたら、外傷がないのはおかしいが……もしかしたら、人の精神に干渉する攻撃をする魔物なのかも知れないな……。
どっちにしても、調べないという手はない。
「セレス。じゃあ、ちょっと俺、買い物に行ってくる」
「ん……いってらっしゃい」
セレスは興味なさげに小さく返事をする。
対して俺は、カバンの中に最低限の装備を入れ、買い物ついでに魔物を探しに行くのであった。
【???視点】
「きゃはは! まさか、あのクソアマ、ターゲットと一緒に同棲してるの?!」
床も壁も天井も、ことどとく真っ白に塗りつぶされた部屋の中で。
ポツンと置かれた漆黒の神座に腰掛ける黒髪の少女が一人。
彼女は、口元を大きく歪ませながら、手元の水晶玉を見つめていた。
「それにしても、天使が人間と馴れ合うってマジ?! 超絶面白いんだけど! ……やっぱり、直接殺さずに、あの呪いをかけてあげたのは正解だったなぁ」
無音の空間に、少女の汚い笑い声だけが響き渡る。
ふと、少女は顔を曇らせた。
「あーでも……折角、私が直々に呪ってあげたのに、幸せそうに生きてやがるの、超ムカつく」
カリカリと、爪を噛む少女。
すると、何か思いついたように顔を明るくした。
「そうだ! 今、あのクソアマが大切にしてるターゲット君を、殺してあげればいいんだ!」
狂気に染まった少女は口を歪ませると――
「でも、ただ殺すのは面白くないし、まずはちょっと、試してみよーっと!」
清々しいほど、晴れやかな笑みを浮かべた。
そして、彼女は水晶玉を操作していく。
「じゃあ、現世にレッツゴーっ!」
次の瞬間、少女の姿が消え、神が降臨した反動で、現世では小さな地鳴りが起こった。
当然ながら、一人の天使はそれに気がつくのであった。
【律視点】
「うーん……やっぱり、探してもいないな」
俺は路地裏から出てくると、伸びをしながら呟く。
あれから一時間程、魔物を探した。
しかし……魔物はいつまで経っても見つからなかった。
仕方がない。あまりにも帰りが遅いとセレスに怪しまれそうだし、買い物をして帰るか。
俺は、近くのスーパーへ向かい、歩き出した。
――そんな時だった。
『ヴヴヴ……』
――呻き声のようなものが聞こえたのだ。
間違いない、近くに魔物がいる。
俺はその声に思わず足を止め、目を閉じて耳を澄ましてみると――
『ヴヴヴッ!』
「――きゃぁぁぁ!」
魔物の呻き声と同時に、少女の悲鳴が聞こえてきた。
「魔物に……襲われてる!?」
俺は急いで悲鳴の方向へ駆け出した。
すると、小さなコンビニの駐車場で俺は見つけてしまった。
漆黒に塗りつぶされた巨躯をしたカマキリのような魔物を。
「たす……けて……」
魔物の目の前では、パーカーを着た少女が尻餅をついていた。
次の瞬間――魔物は少女を切り裂こうと前脚を振り上げる。
「ッ?!」
俺はいつの間にかに少女に向かって走っていた。
「とりゃぁぁぁ!」
魔物の前脚が少女の体を切り裂く寸前、俺は魔物の顔面目掛けてドロップキックした。
『ゔぅ……』
魔物はよろめく。
それによって少女に振り下ろした前脚の狙いがズレて少女の真横の地面に前足が突き刺さった。
「大丈夫ですかっ!」
「は、はいぃ……」
少女は震えた声で答える。
って、あれ……? この声、この見た目、どこかで見たことがあるような……。
「も、もしかして、柚?!」
「り、律さん!?」
そこにいたのは、柚だった。
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