第4話
光がなくなり、目を開けた時。
いつの間にかに自分の右手に、黒塗りの拳銃が握られていることに俺は気づく。
もしかして、これって――
「い、異能……?!」
次の瞬間、頭の中にこの銃に関する説明が流れ込んできた。
『〈願滅銃(テリオス・キラー)〉
・願い主に対して、魔物の原因になった願いを具体的に念じながら発砲すれば、魔物を一瞬で消すことができる。その際に魔物の原因となった願いも消える。
・ただし、願い主、または原因となった願いが完全に違っていれば、二十四時間のリキャストタイムが発生する。
・また、願いを念じなかった場合、通常の九ミリ拳銃と同様の物理ダメージを与えることができる。ただし、魔物以外には効果がない』
「せ、説明なっが?!」
と、とにかく、武器として使えるならなんでもいい!
魔物が願滅銃に気づく前に、俺はすぐさま銃を構えた。
そして、素早く発砲した。
『ヴッ……?!』
銃弾は驚くほど正確に、魔物の顔面に命中。
魔物の顔には小さな穴が開いた。
銃なんて、初めて使うはずなのに昔から使ってきたかのように上手く扱えた。
これが異能の力なのか……?
「とにかく、これで魔物は討伐できたはず……」
頭に穴が開いたら、流石の魔物でも即死だろう。そう思って、魔物に視線を向けたのだが――
『ヴヴヴ……ッ!』
魔物は小さく呻き声を上げると、開いたはずの穴に徐々に黒いモヤが集まっていく。
そして――気づけば、穴は完全に塞がっていた。
「う、嘘……だろ?」
俺は、続けて何発も何発も魔物に発砲する。
が、結果は同じ。
どれだけ穴の数を増やしても、数秒経てば元通りになっていくのだ。
多分、この魔物特有の特殊能力なのだろう。
さっきの女の魔物は、再生している様子なんてなかったしな。
でも……最悪だ。
「銃弾は無限っぽいけど……」
なんだか、銃を撃てば撃つほど疲れる気がするのだ。
もしかしたら、この異能は銃弾の代わりに体力を使うのかもしれない。
「だとしたら……これ、ジリ貧だぞ?」
くっ……何か、何か対応策はないのか?!
その時、願滅銃の説明が脳裏をよぎった。
『魔物を一瞬で消すことができる』……確か、そう書かれていたはず。
例え、どんなにダメージを与えても再生する敵であっても、この能力を使えば、あの魔物を倒せるのでは……?
「確か、条件は……!」
条件は、願い主に対して、魔物の原因になった願いを具体的に念じながら発砲することだったはず。
「ああもう! 魔物の原因になった願いなんて、わかるかよ!」
俺は、続けて発砲し、時間を稼ぐ。
願い主は運転手さんだ。彼は、俺を轢いたことで強いショックを受け、何かの願いを抱いた。
「クソっ……願いがわからない……ッ!」
その時、さっきの運転手さんの言葉が脳裏をよぎった。
『あ、ああ……また人を轢いてしまったら……』
確か、彼はそう言っていた。
人を轢かないようにする……それが願いなのか?
……でも、そう言い切るには確証がない。
願いを間違えれば二十四時間、願滅銃が使えなくなるっぽいし、安易にこの能力は使えない。
「何だ、何かヒントがあるはずだっ!」
考えろ、考えろ俺。
そもそも、魔物とは、奇跡とは、願いが具現化したもののはずだ。
そこから逆に考えれば……願いが人を襲う魔物を生み出したのであれば、運転手さんの願いは誰かを傷つけるものだということを表しているはずだ。
これでヒントは『人を轢かないようにする』、『願いは誰かを傷つけるもの』の二つになった。
「……わかったぞ」
俺は、運転手さんに照準を定める。
多分、チャンスはこれで最後だ。俺はもう、体力の限界を迎えようとしていたのだ。
俺は、導き出した結論を胸に、引き金を引いた。
彼の願いは――
「人をもう轢かないように……この世の人間、全員が死ぬこと……ッ!」
刹那、乾いた発砲音と共に、銃弾は運転手さんの頭に吸い込まれていく。
同時に――魔物は光の粉になって消えていった。
「よっしゃあああッ!」
俺は、思わずガッツポーズをとった。
ヒントは実はもう一つあった。
それは魔物が俺だけではなく、セレスも殺そうとしたこと。
そこから、運転手さんの願いは『無差別的』に人を殺すものだと予測したのだ。
「律、お疲れ様」
声の方向を振り向くと、真横にセレスが居た。
もしかして――
「お前……俺のこと、透明化のマギアローズでずっと見ていたな?」
「……ん? なんのこと?」
セレスは、しらばっくれるように小首を傾げる。
「はあ……まあ良いけどさ」
多分だが、セレスは俺に異能を発現させるために、あえて助けなかったのだろう。
死にそうな状況が一番、強く願いを抱くのは流石の俺でもわかる。
でも……ずっと横に居てくれたということは、本当に危険な目になったら助けてくれるつもりだったのか?
「ん……お詫びに、治療はする」
すると、セレスは、どこかから桃色のマギアローズを取り出した。
「初めて見る種類だな?」
「これは……治癒のマギアローズ。死なない限り、どんな怪我でも治せる」
そう言って、セレスは俺に治癒のマギアローズを嗅がせた。
効果は、一瞬で現れた。
さっきまでの背中の痛みは嘘のように消えていき、ほとんど残ってなかった体力も、少し回復したような気がする。
すると、セレスは俺の手に握られている拳銃をまじまじと見つめてきた。
「律……この拳銃って、もしかして願滅銃?」
「ああ、そうだけど……?」
「こ、効果は?」
「ええっと……願い主に対して、魔物の原因になった願いを具体的に念じながら発砲すれば、魔物を一瞬で倒せるらしい。ついでにその願いも消えるんだってさ」
「ふぅん……」
興味深そうにセレスは呟く。
彼女の顔を覗き込むと、少し興奮したような表情をしていた。
すると――
「律……私と、協力関係を結んでほしい」
突然、セレスはそんなことを言い出した。
「実は、私にはとある使命がある。その使命は……この世界に増えすぎた魔物を討伐すること。律には、その協力をしてもらいたい」
そうだったのか。
だから俺を助け、異能を発現させて、魔物討伐を手伝わせようとしたわけだな。
「律は完全な命を得るために、私は、使命のために……理由は違っても、目的は一致してる」
でしょ? とセレスは小首を傾げる。
確かに、目的は同じだ……どう考えても協力すべきだろう。
でも――
「俺は、お前が信じられない」
「ッ……?! ど、どうして?」
「俺はそういう人間なんだよ……天使だろうが人だろうが、信じない、信じられない」
もう裏切られるのは嫌だから、俺は信じないことを決断した。
そうして三年以上、一人で生きてきたのだ。
「だから、俺は一人で魔物討伐をさせてもらうからな」
「……でも、律、私がいないとSP、溜められないよ?」
「へ?」
「魔物から出るエネルギーを、人間は感知できないし、収集することができない……だから、律には、私が必要」
「なっ……」
じゃあ……俺がこれから生きていくためには、セレスとの協力が必要不可欠……。
つまり、人を信じないと……生きていけないのか?
すると、セレスがため息をつき、口を開いた。
「考え方を変えてみればいい……これは、目的の一致から生まれただけの、ただの一時的な協力関係。それ以上でもそれ以下でもない。信頼なんてする必要ない」
だが……裏切られる可能性があるのは変わりない。
とはいえ、ここで信じなければ俺に与えられる結末は死だ。
俺は、爪が食い込むほど強く拳を握ると、首を縦に振った。
「……わかった、協力するよ。いくらでも魔物なんて倒してやるよっ!」
「ん……!」
すると、セレスは握手を求めるように手を伸ばした。
俺は、荒々しくその手を取るのであった。
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