第3話 土器をつくろう。

「思ったんだけどさ。」


家に戻る道中でミュエットが言った。


「メロアって結構、味に敏感だからさ。」

「あれだと、捕まらないんじゃない?」


「え?」


成海は、ミュエットから告げられた新情報に硬直してしまった。


「えっと…」


「今日は、もう一つやりたいことがあるんだ。」


今までの苦労が水の泡。

そんな言葉が浮かんだ成海は、現実逃避をすることにした。


「なに?」


ミュエットが尋ねると、成海が答える。


「器を作りたい。」


「器?」


「うん。土の器。今使ってる骨の器だと、丁度いい奴が少ないじゃん。」


「まあ、確かに。でも、土だとドロドロにならない?」


ミュエットがそう尋ねると、成海が少し笑って言った。


「まあ、やってみようか。」


成海はそう言うと、家の方へと歩を速める。

ミュエットがその後を追いかけ、二人は家と向かった。


─数時間後。


「これが…いい感じの器…。」


ミュエットの視線の先にあったもの、それは、辛うじて器と呼べる様な、酷い有様のものだった。


「……。」


「えっと…うん。まあ…いいと思う。」


そう言うミュエットの方は、成海とは対照的にきっちりとした器が出来ていた。水瓶から徳利まで極めて精巧に作られており、その表面には装飾すら施されていた。


「…そういう反応が一番辛い…。ってかミュエットのそれ凄くない?」


「え、そう?」

「…まあ一応、粘土細工はやってたから。昔は…。」


そう言って、誇らしげにしていたミュエットだったが、昔のことを思い出し、顔を曇らせた。

それを見た成海は、話題を変える。


「え、えっと…実はまだ完成じゃなくて、もうちょっと工程があるんだよ。」


「…何するの?」


「まず、この作ったやつを乾燥させる。それが終わったら焼く。」


「焼く?」


「うん。」


「ふーん。なんか、不思議。あの粘土が焼くだけで普通の器になるなんて。」


「まあ実際、これで合ってるのかは分からないんだけどね。」


成海がそう言ったのも、これは飽くまでも元の世界でのやり方であり、この世界で通用するかどうかは未知数だからだ。


─グウウウ。


「…ご飯にしよっか。」




──アドミア盗賊団アジト。


「んで、ここに囚われてるやつが、今回のお姫様と。」


「うん。聞き込みと探索の結果からして、ここにあの子たちが捕まっているのは確定。」


現在、彼らは逸れたクラスメートの救出に来ている。

満希の調べた情報によると、クラスメートたちはどうやら、世にも珍しい転移者ということで人攫いに遭ったようだ。

そして、その犯人たちが根城としているのが、この廃墟ということらしい。


「特徴からして、多分、亜衣あいちゃんと真菕まろんくん。」


「分かった。」


「それで?作戦は?」


那妻のその問いかけに対して、直人はニヤッと笑って言った。


「正面突破だ。」


「…無いってことね。」


「あはは。」


そんな感じで、雑談に興じていた那妻たちだったが、直人が真剣な顔で告げる。


「んじゃ、満希は後援。那妻は俺と前衛。」


「「了解。」」


互いの役割を確認した一同は、各々武器を構える。そして─。


「行くぞ。」


彼らはアジトの門へと突っ走る。

見張りの人間たちは、彼らに気付くと烏のように鳴き出した。


「襲撃!襲撃だぁー!」


満希が見張りに向かって杖を向ける。すると、


「敵、しゅ…う…。」


─ドサッ。


先程までがぁがぁ喚いていた見張りが、倒れ込んでしまった。


「ナイス!」


那妻が興奮気味に叫んだ。


「正面玄k─ブファ!」


もう一人の見張りが声を張り上げるが、直人がそれを鞘付きの剣で殴り付ける。そして、直人が満希に指示を出す。


「満希!扉開けろ!那妻!行くぞ!」


「OK!」「了解!」


満希がドアを魔法で破壊すると、那妻と直人が飛び込む。


玄関には、5人程おり直人たちを迎え撃つ。


が。


こちらは戦闘のプロである。それも世界屈指の。

那妻が背後に周り3人、直人が正面から2人を倒し玄関を完全に制圧した。


「那妻は二階を。俺と満希は地下を探す。」


「分かった。」「うん。」


そうして、二手に分かれて探索をすることにした。


─二階。


「さーてと。あいまろは何処かなぁ〜?」


那妻が二階への階段を上がっていく。

丁度真ん中あたり。踏み板に足をかけた瞬間。

踏み板を貫いて、幾重もの光線が照射される。


─キキキューン。


「…やったか?!」


階段の終わりで待機していたであろう、男たちが顔をのぞかせた。


「ハ!アレを食らって生きてられるヤツがいるか!跡形も残ってねえよ。」


男の言葉に他の者たちも賛同する。

あれ程の出力の魔法を食らったのだ。生きていられる方がおかしい。

そう思っていた。


段々とトラップ周りの煙が晴れてくる。そして、完全に晴れきった時。

そこに那妻の姿は無かった。


「ハ!ほら見──。」


その光景を見た男が、得意げな表情をするが振り返った瞬間に、その表情は凍りつく。


「わー、すごーい、なんにもなーい。」


なんせ、そこにあったのは先程仕留めた筈の那妻の姿だったからだ。


「な、は?」


男が理解するよりも先に、那妻が男を気絶させる。

男が完全に意識を失ったのを確認すると、那妻は二階の探索を進める。


「さ〜て、お!この部屋とか怪しいじゃん!」


那妻は一つの部屋の前に立って、中の様子を探る。


「クリア。」


そう言うと、扉を開ける。


「ヒッ…!」


中には、那妻と同じくらいの酷く顔色の悪い少女が、ベッドに括り付けられていた。

どうやら、先程の悲鳴はこの少女のもののようだ。


「…大…丈夫では無いよね…。」

「良く頑張ったね。亜衣ち。」


このやつれ切った少女こそ。探していたクラスメート。粟野 亜衣あわの あいだ。


─地下。


「あ、ありがとう。」


「良いってことよ。」


こちらも、真菕。萬田 真菕まんだ まろんが見つかり、救出された。


「おっし、取り敢えず、那妻と合流すっか。」


かくして、クラスメート救出作戦は成功に終わった。

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