第3話 フレンド申請が来ました



“クエストを受けましょう”


 ウィンドウに従い、私とタマキちゃんはお城に来た。ここでクエストを受けられるらしい。

 王座の間には黒いローブを着たプレーヤーで溢れかえっていた。



「クエストを受けるのに時間がかかりそうね。ここは前から改善点であげられてるけど、直らないわ」



 タマキちゃんが、手を顎に当てる。その仕草はお兄ちゃんがよくやるものだった。



「ねえ、なんでみんな黒いローブきてるの?プレーヤーもNPCも」



 私はふと疑問に思った事を聞いてみた。



「このヒカリの王国はね、住民はみんな魔法が使える設定なのよ。だからローブ来てるのよ。ココちゃんも物をちょっと浮かしたり出来るわよ」


「え?!そうなの。そんな世界観だったとは」



 私この世界の事何もわかっていないんだなぁ……。ゲームを進めて行くのなら、もうちょっと知識をつけないと。ずっとタマキちゃんがいるわけでもないし。



「それにしても、遅いわ」


「タマキちゃん、ここで佐伯さん達と合流なんだよね?」


「そうよ。もうちょっとしたらクエストが終わるってメッセージが届いたのよ」


「メッセージ?」


「あ、フレンドになるとお互いやり取りができるのよ」



 ――ピコン


 “タマキさんからフレンド申請が来ました。申請しますか?Yes / No”


 ウィンドウが現れて私はYesを選択する。



「これで、ココちゃんともメッセージのやり取りが出来るわね!何かあったら、これで連絡するのよ?」


「うん。タマキちゃん、ありがとう」



 王座の間にたくさんのプレーヤーがいる中、急にざわめきが起きた。


 ……なんだろう?誰か来たのかな?


 振り向くとそこには、シルバーの珍しいハイトーンカラーの髪にも負けることのない整った顔の、顔面国宝級の男の子が輪の中心にいた。



「わあ……リアル王子様みたい」


「あー……、ココちゃんそういえば面食いだったわね」



 隣でタマキちゃんが苦笑いした。

 お兄ちゃんは私が推し活をしてるのを知っているのだ。



「あ!タマキちゃんみっけたー」



 え?嘘!?


 スタスタとリアル王子様は私たちの方へ歩いてくる。



「タマキちゃん、あの王子様と知り合いだったの?!」


「この世界の上位プレーヤーよ。ギルドが一緒なのよ」



 タマキちゃんは、こそっと私に教えてくれた。



「タマキちゃん、いつになったら俺と組んでくれるの?パーティ」


「んー。そのうちかしら」



 リアル王子のところにミオと表示された。年齢は私と同じくらい、かな。



「またそうやってはぐらかす。いつもハリーさんとばっか組んでるじゃん」



 わぁ……タマキちゃんに嫉妬してるミオさん。可愛らしい。ハリーさんってきっと原田先輩なんだろうな。いつも二人でゲームしてるし。


 やり取りをみてると、ふとミオさんと視線が合う。



「……あれ?タマキちゃん……もしかして妹?すごい似てるけど」


「そうよ。ココちゃんっていうの」


「あれ?君その目の色……」



 ミオさんが一歩私に近づいて、顔を覗き込んでくる。


 ……瞳の色って、この琥珀色の事?



「あ、私の推しと同じ色にしたんです。他は全滅しちゃったんですけどね」


「あ、ココちゃん!こういう世界で簡単に個人的な事言わない方がいいわよ」



 タマキちゃんに言われて、ハッと気付く。そんな私たちをみてミオさんは笑った。



「あはは。アバターを一分でイメージすんの、結構むずいよねー。大丈夫、誰にも言わないから」


 人差し指を口に当ててウインクする姿は、ミオさんだから成り立っている。

 そしてもう一度私を見て、ミオさんは続ける。



「ねえ、ココちゃんの推しって誰なの?」


「ナチュのレイ君です!すごいカッコいいんです」



 湖來乃の笑顔をみたミオの動きが一瞬止まり、そして彼の口角が上がる。



「へー……。レイ君、そんなに好きなんだ」


「ミオさんも知ってるんですか?」



 まさか、こんなところで推しを共有出来ると思っていなかったからテンションが上がってしまう。



「うん、知ってるよ。よーく。……ねえ、どういう所が好きなの?」


「そうですね……たくさんあるから絞るのが難しいんですけど……元気が貰えるんです。レイ君みてると、私もまだまだ頑張らないとなって!」



 レイ君はアイドル活動に対して向上心が高い。今はもうトップアイドル座についたにも関わらず、まだまだ自分を磨いて更なる上を目指す人。そんなレイ君の姿を見てると、私もまだまだ頑張らなくっちゃって思えるのだ。


 湖來乃の綻ぶ絵がをミオは目を細めて優しく笑うが、



「……そっか。そんな風に思ってるんだ。ねぇ、ココちゃん、さん付けは辞めない?あと敬語もやだなぁ」



 さっきまでより、少しだけ静かだった。



――ピコン


“ミオさんからフレンド申請が来ました。申請しますか?Yes / No”


 わっ!!まさか、ミオさんからフレンド申請が来るとは思っていなくて、更にビックリして思考が止まりかける。



「えっと、じゃあ……ミオ、君で」


「うん。よろしくね、ココちゃん」



――ピコン


“リヒトさんからフレンド申請が来ました。申請しますか?Yes / No”


 私はYesを選択した。



 「っ!?あ、待って!!」


 ミオ君の申請を受けるつもりだったのに、今すごいタイミングでヒリトさんの申請をYesにしちゃったよ。



 「ココちゃん、どうしたの?大丈夫?」


 「あ、ううん。なんでもない、大丈夫」



 私はミオ君の申請を許可した。


 ……NPCなのにフレンドになれるんだ。サポート的なやつ、かな?

 これもチュートリアルだったり?



「ミオ君、アタシのココちゃん初心者だから勝手にクエストに誘わないでよ?」



 タマキちゃんは妹想いだ。それは現実世界でも変わらない。



「それならタマキちゃんが来てよ。ずっと誘ってるのに〜。俺の誘い断るのタマキちゃんだけだよ?」


 

 嫌味のない王子様スマイル。

 ミオ君はなんでタマキちゃんをそんなに誘うんだろう?


 私の表情に気付いたミオ君が笑った。



「ココちゃん、もしかして知らないの?タマキちゃん、ガーディアンの中でもトップクラスなんだよ?」


「えっ?!」



 お兄ちゃんが筋金入りのゲーム好きなのは知っていたけど、プレーヤーとして技術もそんなに上の人だったの?知らなかった。あ、だから、HPもこんなにすごいわけね。私はタマキちゃんのHPゲージを見上げた。



「ミオ君、ごめんね。今日はもう、ハリーとサエキングと先約があるから」


「またハリーだ。まぁ、そういう一途がタマキちゃんが俺はいいと思うんだけどね。――あまりにひつこい男は嫌われちゃうから、俺そろそろ行くよ。ココちゃん、メッセージ送るから、また推しの話しよーな!」



 ポンっとミオ君の手が私を撫でる。


 そして、ミオ君がニカっと笑った。この太陽みたいな笑い方……あれ?似ている。レイ君に。何度も救われた笑顔に……。



「う、うん!またね」



 きっとミオ君も大のレイ君ファンなんだろう。だから仕草とか似てるのかもしれない。



「ココちゃんも、ミオ君のクエストについて行っちゃダメよ?彼の行くクエストは難易度がかなり高いと思うから」


「確かに難易度高そう……。でも、私タマキちゃんとしかクエスト行かないと思うから安心してよ?」



 タマキちゃんがいないと、そもそもインしないと思うし。



「ふふふ。よかったわ。あ、ハリーとサエキング来たわよ」



 視線を移すと、原田先輩と佐伯さんの面影を残したアバターがこちらに向かってきていた。

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ゲームの世界に入ったら、NPCに執着されている件について。〜NPCの君には、惚れてはいけない〜 よりた 蕾 @knospe

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