第二巡 生きている霊

第7話 ナースコール 神谷冬季

 甥っ子が病院に入院した時の話です。

 気になることがあったと、落ち着いたころに話してくれたことです。

 甥は一人部屋に入院していました。

 単に個室ってだけで特別室とかってわけではなかったし、通路側の扉は開けっ放しだし、周りの部屋の様子がよくわかる部屋だったんだそうです。

 で、隣の部屋に、決まって夜中の二時頃に看護師さんが駆けつける。入院してから三日、連続です。

 二人部屋のうち窓際の人のコールだったようなんですが、本人は押していない。続くものだから自分が押していないことを証明するために、同室の人に頼んでカーテンを開けたまま寝て、押していないことを証言してもらったりもしていたそうです。二人とも起きていて互いに押していないのを見ていたのに、看護師さんが飛んで来た。

 看護師さんはきちんと話をしているんだそうです、機械ごしに本人と。甥っ子も話している声は聞いていなかったし、故障で鳴るだけならまだわかるけど、会話をしているし。看護師さんも毎度のこととはいえ、駆けつけざるをえない。

 一晩に一度だけのことですし、看護師さんもあまり気にしてはいなかったようです。まあ職業柄、多少の現象は気にしないらしいですね。同室の二人がつるんでのいたずらだと思う人もいたようですけど、相方が退院して別の人になっても続いていたんだそうです。

 そして、甥っ子より一日早くそのナースコールが鳴る人は退院して、すぐに次の人がそのベッドに入院してきたけれど、その晩はもう、ナースコールは鳴らなかったんだそうです。

 甥っ子が退院の日にその同室だった人に聞いた話では、なんでも、そのナースコールが鳴る人は小規模な建設現場で働く人だったそうで、立っていちゃいけないところで作業しようとしていて、転落してケガをしたんだそうです。たいしたことはないと思って、労災の手続きも面倒だし怒られるのも確実だし、ちょうど入ったばかりの新人しか見ていなかったので脅し透かして黙らせて、自身も黙っていたんだそうなんですね。それが、帰宅して真夜中に急変して運ばれてくることになった。急変した時間が、ナースコールが鳴る二時頃だったそうなんです。

 新婚さんで、臨月のお嫁さんが毎日見舞いにやってくる。それはもう、独身にはあてられてきつかったよ、と言うほど仲が良かったそうです。怪我した本人も、ナースコールは多分、嫁さんが心配して鳴らしてやがんだ、と言っていたそうです。

 看護師さんが聞いたセリフは、自分が夜中に具合が悪くなったときに、嫁さんに苦しみながら言ったセリフだと、ね。


 語り終えると、語り部は一本の蝋燭の火を消した。 


『百物語が終わるまで』

https://kakuyomu.jp/works/822139841307342761

の作中話は800字程度に縮小させました。よろしければ本作もお読みいただけますと幸いです。

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